第11話 お兄ちゃんは心配です!

「まずはお礼を言わせてください。助けてくれて、本当にありがとう。」


タクマは心の底から感謝を述べた。ありがとうがしっかり言える子は偉い。


「構わん構わん。それにしても間に合って良かったなぁ、ローエン。」

「全くだ。」


2人に連れられて、エルフの街、正確には森の中に出来た砦のような地に足を運んだのは、昨日のことだ。

疲労も癒えたタクマは、挨拶も兼ねて、改めて2人を訪ねたのである。


「んで、女の様子はどうだ?」

「アリスはまだショックで寝ているみたいだ。それに怪我もしている。回復魔法が使える人を紹介してくれるとありがたいんだが…。」


「確か、数日前に逃げ込んできた駆け出し冒険者が回復魔法を使えたような…。まあ、あとで族長に伝えとくよ。」


フリートは明るく笑みを浮かべて、こう答えると、族長を呼んでくると言って席を外した。


「勇者殿…。」


このローエンという男、鎧を外すと、予想したより細身ではあるが、中々に鍛え上げられた肉体である。

何もかも負けている。タクマは改めて、イケメンに嫉妬心を抱いていた。


「勇者殿…。」


2度目でようやく気が付いたタクマは、慌てて返事をする。


「アリス殿のことですが、事情が事情だけに少し心配です。気が滅入ると良いことがない。旅に差し支える可能性もある。気晴らしと言っては何ですが、この街の下層には、美しい花畑があります。目が覚めたら、連れて行くと良いでしょう。」


このイケメン、そんな良いスポットまで知っているのか。心までイケメンなんて、ズルいぞイケメン。


そうこうしているうちに、フリートが駆け出し冒険者を連れて戻ってきた。


「おう、連れて来たぞ!あとで族長も来るからな。」

「は、はじめまして…。ドロシーと申します。患者さんはどちらですか…?」


なんだか気弱そうな女の子だ。いかにも駆け出しと言った雰囲気で、ローブと杖とハットに、眼鏡をかけていた。だが、それがいい。マニア心をくすぐる出で立ちである。


「こっちです。治せますか?」

「ええ、楽勝です。ヒール。はい、これでどうでしょうか。」


その瞬間、アリスは目を覚ます。これにはローエンとフリートも驚いたようで、目を丸くする。


「駆け出しって言ってたよね?」

「ええ、ランクは駆け出しですが、駆け出してから10年は経ってます。その間に、一通りのことは経験しましたから…。」

「じゃあ、どうしてランクアップしないの?」

「10年前、ギルドが魔王に壊滅させられたので、ランクアップできないんですよ。」


なるほど、そういうことか。それにしてもすごい医力の回復魔法だ。これなら、戦闘時に負傷してもすぐに治すことが出来る。


「仲間にならないか?」


タクマは不意に発したが、フリートも同様に欲していたようで。


「おっと勇者殿、連れて来たのはアタシですぜ?リクルートならこっちが先だ!」


それもそうだ。納得しかけた時に、先程言っていた族長の準備が整ったようで、その訪問を受けた。

族長は部屋に入るなり、開口一番で衝撃的な提案をする。


「ローエン、フリート、そしてドロシー。お主らは勇者殿と行動を共にし、魔王を倒すのじゃ。」


「はぁっ!?」


真っ先に反応したフリートの声が、部屋に響き渡った。


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