第161話 ダニエルが原因でした

 神の力が不足してて、あらゆる方法で効率良く増やしたい気持ちは分かるけれど、人の人生に関わってくるんだから、もう少し慎重にするとか……女神だから、そんな事はこれっぽっちも思わないのかしらね。


「そういえば、人間を召喚する時には神の力は消費しないのかしら?」


 考え込んでいたら、ノア様がアルティアへ質問をしたわ。


「神の力で召喚をするのじゃから、当たり前に消費するのじゃ。じゃが消費よりも回収できる量が半端なく多いのじゃよ」


「あら、それなら、別に他の方法を探さなくても良いんじゃないかしら?」


「そうなのじゃが、身体ごと召喚すると、本来こちらの世界の者では無いせいか、ダニエルはバグって神もどきになってしまうわ、空良は魂を分けてこちらで転生したいと言い出すわと、色々問題が起こったのじゃよ。だから人間そのものではなく、魂だけを召喚してみたり、今回のように神の力を持った人間が子供を生んだらどうなるのか調べているのじゃよ」


 そうそう、前にも説明したやつね。ノア様達にも話したような気がするのだけれど。


「そういえば、前にソフィアから説明されたわね。まぁ、この世界の為なら仕方ないと思うけど、あんまり人間で試しすぎるのもどうかと思うわよ」


 ノア様が良い事を言ったわ!

 ていうか、一応女神なんだけどノア様ってばずっと上から発言よね。大丈夫なの?


「なぜじゃ? 効率良く神の力が増えれば、この世界も安定するのじゃから、それに貢献できた人間は名誉ある事だと思うのじゃが」


「自分から名乗り出たらそうかもしれないけど、勝手に召喚されたり、魂を使われたりするのはどうかと思うのよね」


「そうなのかえ? ダニエルは何も言ってなかったから問題は無いと思っておったのじゃが、そう考える人間もおるのか」


 何だかあれね……アルティアってみたいな発言なんだけれど、ダニエル様からの話の印象と違いすぎるわよね。人間味が無く冷たいだとか言っていたけれど、全然そんな感じではないわよ。


 …………はっ!

 ていうか、これってダニエル様が原因なのでは!?


「ダニエル様、もしかしてアルティアって箱入り娘なんですか?!」


「「「箱入り娘?」」」


 3人がハモったわ。箱入り娘って日本特有の言葉だったかしら?


「えっと、世間知らずで、常識外れで、天然な感じの……」


 あぁっ! 何か凄く失礼な発言になってるわ!


「あぁ、そうなのだよ。まぁ人間ではないから、世間なんてものは知らないし、人間の常識からは外れているし、天然というか斜め上の発想が多いのだよ」


 やっぱりそうだったのね!


「何の話をしておるのじゃ??」


「話がややこしくなるのでアルティアは黙ってて下さい!」


「むむっ? よく分からんがそれなら黙っておくのじゃ」


 素直かっ!!


「こほん、とりあえず、今までアルティアへの質問の答えがちょっとアレだったのは、アルティアが斜め上の発想をしても止めなかったダニエル様が悪いのです」


「どういう事かしら?」


 すかさずノア様が質問してくる。


「常識外れで天然な発言だと分かっていながら、それをそのままこちらへ話すとか、普通に駄目でしょ? それは人間的にはアウトですよって教えてあげないと分からないでしょう?」


「確かに言われてみればそうよね。でも、神様を相手に何かを教えるとかいう発想が無かったとかじゃない?」


 あぁ、そうか、仮にも神様だからうやまって……ってダニエル様はそんなタマじゃないわよね。さらに、今は自分も神様と同等だし。


 ていうか、聞いてるなら答えてくれれば良いのに……と思ったら、ダニエル様は何かを考えていて反応が無かったみたいだわ。


「ええと、そこで何かを考えているダニエル様、聞こえてますか?」


「ああ、聞いていたよ。常識外れで天然でも、それが女神だから仕方が無いと思っていたのだよ。なるほど、正解を教えれば良かったのだね。私も、神に近しい者となってから色々忙しくてね、女神の相手をする暇があまり無かったから、そういう発想にならなかったのだよ」


 まぁ、忙しい時って思考が鈍くなったりするものね。


「基本的に、ダニエルと話すのは面倒くさくて嫌じゃったからのぅ。神の力の実験に関しては決定事項だけ伝えたり、お主らの状況報告も端的に聞くだけだったからのぅ」


 さっき黙っててと言ったけれど、アルティアが話しだしたわ。

 ていうか、ダニエル様だけのせいではなく、アルティアの面倒くさがり屋さんなところも問題だったのかしらね。


「とりあえず、これからはしっかりと報告・連絡・相談ホウレンソウをする事と、ダニエル様がアルティアに、人間の感性を教えてあげれば、神の力を効率よく回収する為の良い案が浮かんだりするのではないですか?」


「そういうものなのだろうか?」


「アルティアはこれだけ素直なんですし、そういうものですよ! きっと!」


 アルティアは反抗期になる前の子供か? ってぐらい素直だものね。


「ん-、ていうか、そもそもダニエルが普通の人間の感性なんて教えられるのかしら?」


「っ!!」


 ノア様の発言に固まってしまったわ。

 そういえばそうよね……ダニエル様って普通ではないものね。(失礼)


「ノア殿下、それはどういう事でしょうか? そしてソフィア嬢は何故固まったのだね?」


 ダニエル様がノア様に問いかけてから私にも質問した。


「あらやだ、自覚が無いのかしら? ダニエルは普通ではないわよね? 人間だった頃は知らないけど、神様もどきになってから結構長いんでしょ? そのせいなのかは知らないけど、人としての感性も絶対にズレてるわよ」


 ノア様……ちょっとストレートに言い過ぎな気が……。


「これでも元人間の勇者ですし、そんな事は無いと思うのですが、何をもってそう思われるのでしょうか?」


 ダニエル様が不思議そうにノア様に問いかけたわ。


「そうね……何ていうか、日頃の発言かしら? あと、強すぎてもはや変人の域だし、ナルシストだから他人の事なんてどうでも良さそうなところとかかしら?」


 そういえば前に、ナルシストは役作りとか言っていたけれど……まぁそれを省いても感性はズレてそうなのは同感……げふんげふん。


「ふむ、そうなのですね。そのような印象だったのですか。前にも言いましたが、ナルシストは勇者の頃の演技のせいで癖になってしまっているだけで本気では無いですし、今は神様に近い存在なので強すぎるのは仕方ないですよね。そして、他人なんてどうでもいいとは思っていませんが……まぁ仰る通り、神としてそれなりの期間を過ごしたので、人の感性からはズレてしまってるかもしれませんね」


 おお、認めた! でも言われたことはほぼ反論したわね。


「でしょ、多分ダニエルの感性はズレてると思うわよ。で、どうするの?」


 ノア様がこちらを向いて聞いてきた。

 どうするって何を??


「女神へ人間の感性を教えるのはどうするのかってことよ」


 私が質問の意味がわからない顔をしていたのか、ノア様がすぐ言い直してくれたわ。


「あー。そうですね……」


 アルティアへ人間の感性を教えるにはどうすれば良いのか……と悩みだしたところで気付いたわ。


 ていうか、今そんな事を考えている場合ではないじゃないの!

 もやしよっ! もやしっ! もやしの話はどこへいったの?!

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