第160話 突然の登場

 複数プレイとかいう、ノア様からのとんでも話を何とかかわして、やっとこさ就寝できたわ。


 そして、話は戻るけれど、ノア様も寂しいと思っていたのね。


 余裕に見せていたのは全部お芝居だったのかしら? いや、でも全部が全部そうではないだろうし、寂しいと思う事もあるって伝えたかっただけだったのかしら?


 それとも単に皆でHしたかったから、そういう話へ持っていくように、あんな話をしたのかしら?


 いや、実は本当に寂しかったけれど、照れ隠しで複数プレイな話に変えたとかかしら?


 ウトウトしながらそんな事を考えていたら、質問する前にいつの間にか眠ってしまい、真相は分からずじまいだったわ。


 そして、次の日の早朝、ダニエル様がやってきたわ。そう、またもや早朝よ。


「ソフィア嬢へ、女神アルティアの返事をお知らせに参りました」


「いや、ちょっと、朝早すぎて驚いたわよ。ソフィアはまだ寝起きだから、ちょっと待ってくれるかしら?」


 ノア様が、私の支度を待つようにダニエル様へ伝えてくれたわ。

 今朝も早すぎるのよ! 早くアメリア様に逢いたいのは分かるけれど、早朝すぎる訪問はやめて! 普通に寝てるわよ! ていうか、朝早すぎたらアメリア様も迷惑よ?!


 という事で、マッハで支度をしてノア様とダニエル様の元へ向かう。


「ダニエル様おはようございます。えぇと、女神はもやしの対処をしてくれそうでしたか?」


「昨日のことを伝えたら、ソフィア嬢にとって不利益な事が起こりそうになったら、何かしらの対処はしてくれると言っていたのだよ。どうするのかは、話してくれなかったからわからないのだが……」


 何そのフワッとした解答?!


「何なのそれ、不利益の基準も女神次第だったら、結局何にもしてくれないのと同じじゃないの」


 ノア様が私の心を代弁してくれたわ。


 本当にそうよね、私にとって不利益な事でも、女神が不利益って思わないと何もしてくれないなら、そんなの意味無いわ。


「まぁ、あまり期待してなかったですし、女神に頼るなって事ですよね」


 でも、カイル様とも話していたけれど、女神にはそこまで期待はしていなかったからショックではないわ。自分達で何とかするしかないわね。


『いやいや、そこまで悲観しなくてもよいのじゃぞ』


 何の前触れもなく、突然頭の中に女性の声が響いた。


「えっ?? なっ何っ? 誰?」


 驚いた私は周りを見渡すが、ノア様達以外には誰も居ない。


「ソフィアどうしたの?」


 ノア様には聞こえていなかったのか、心配そうにそう言って私の肩を抱き寄せた。


「アルティアが、ソフィア嬢に話しかけたみたいですね」


「えっ? 女神ですって??」


 ダニエル様が説明してくれたわ。

 それにしても、何故女神が私に話しかけたって分かったのかしら? ていうか、これが女神アルティアの声なのね。


『ダニエルが外界へ降りてから、ちょこちょこ様子は観ていたし、報告も受けていたのじゃが、最近なかなか面白い事になっておったので、ここへやって来たのじゃ』


「いや、全然面白くないし!」


 思わずタメ語で返事をしてしまったわ。

 そして、この声私だけにしか聞こえてないなら大きな独り言みたいじゃない。恥ずかしー。


「女神が何を言ったのかしら?」


 気になるのか、ノア様がそう聞いてきた。


 そりゃでっかい独り言を言われたら、内容が気になるわよね。


「あぁ、すまぬすまぬ、他にも2人おるんじゃった。こちらの声の方が良さそうじゃな。ダニエルから経緯は聞いたのじゃが、おぬしはジュリアンと結婚したくはないのかえ?」


 突然肉声ボイスになったわ! でも、何処から聞こえてるのかわからないわ。とっても謎ね。


「あんなもやしと結婚なんて、ぜーーーーーーっっったいに嫌です!」


「そうなのじゃな。まぁ、お主が心底嫌ならば、そうはならないから安心せい」


「えっ? どうしてですか?」


「お主の身体には、極小だがわらわの力が入っておるからのぅ。この世界では、お主にとって心の底から嫌なことは、大体だいたい回避されるのじゃ」


「は? 女神の力が入ってる??」


 そして嫌なことは大体回避するって、カイル様の記憶が無くなったのは、回避されてないじゃないの!


 私の中では、心の底から嫌な事だったのに、回避されなかったのは何故なのかしら? それも結局は女神基準なの?!


「あぁ、そうか、妾と話した記憶が無いのじゃったな。お主の魂の一部だけでは転生はできなかったのじゃ。だから、少しだが妾の力を混ぜて転生させたのじゃ。妾にそっくりな容姿もそのせいなのじゃ」


「え? 確かダニエル様から聞いた話では、容姿を考えるのが面倒でこうなったと……」


「お主の魂に妾の力を入れたら、容姿が妾にそっくりになってしもうてな、変更はできたのじゃがそれをするのが面倒だったのじゃ。それでダニエルには面倒だと答えたのじゃな。その説明をするのも面倒くさかったのじゃよ」


 4人いた中で、たった1人残った女神なのに、面倒くさがり屋さんだったの?!


 それにしても、そんな神様がよく最後まで残っていたわね。抜けるのが面倒くさくて残っていたら、気づけば1人になってた的な感じかしら?


「基本的に、ダニエルと話すのが面倒くさいのじゃ。話が長くなる上に、話し方がおかしいじゃろ」


 あら? 心の声が聞こえたのかしら?

 そして、あなたの話し方も大概なのだけれど……『のじゃ』口調とか老人か!!

 今はまだ姿が見えていないから良いけれど、私と同じ容姿でその話し方はやめて欲しいわね。


「アルティア、私と話すのが面倒くさいとは失礼な事を言うのだね。それよりも、突然登場したのは何の気まぐれなのか、説明が欲しいのだよ」


「うむ、ダニエルよ、良くぞ聞いてくれた。お主から話を聞いた後考えたのじゃが、とりあえずソフィアに早く子供を生んでもらいたいから、妾の使徒を妾の役に立つようにどうにかしてやろうと思って来たのじゃ!」


 どうにかしてもらえるのは良いけれど、理由が酷くない?!

 それから、女神アルティアの発言が、前世では結婚もしてないのに『孫の顔が早く見たいわ〜』って言った親を思い出してイラッとするわ。


「子供を授かれるかも分からないのに、何なんですかその理由は」


「お主の身体は、授かりやすく創ったから、心配せずともすぐできるのじゃよ。それに、やはり極小でも妾の力が作用するのか知りたいのじゃ。極小じゃからそこまで期待はしておらぬが、もし、こちらの世界の人間との子供でも神の力が現れたら、妾の力が作用したとわかるじゃろ。それが分かれば、お主らの世界から人間を転移や転生させなくとも何とかなりそうじゃろ?」


 授かりやすく創ったですって?!

 そんな事ができるなんて、おどろ木ももの木さんしょの木だわ。

 腐ってもこの世界を作った神の1柱ってことね……っていうか、授かりやすいって、避妊魔道具を使うのをやめたら、すぐできちゃうって事!?


 子供は欲しいから、すぐ授かれるのは嬉しいのだけれど……。

 そして、私達みたいな転移者や転生者が減るのは良いと思うけれど……。

 何だか釈然しゃくぜんとしないわね。


「むぅ、私がアルティアの力を少しもらっているから、神の力と関係ないカイル様や神の力が少ないノア様との子供にも、神の力が宿るかもしれないと言う事ですか? そうなれば、今後は転移や転生で神の力を調整しなくても大丈夫と……? でも、それだとこれからもアルティアの力を与える人が必要ってことですよね?」


 以前、私とノア様は2人共転生者で、神の力が少ないから、期待して無いとか言ってたのに……容姿の事もそうだけれど、ダニエル様へ伝言する時、話すのが面倒くさくて色々端折っててこんな事になったのかしら?


「ということは、そこら辺の人に、アルティアの力を植え付けまくれば神の力不足は解消ってことかしら?」


 ノア様が何かすごい発言をしてきたわ。


「そこら辺の人に、少しとはいえ女神の力を植え付けまくるって……なんか……それ大丈夫なんですか?」


 思わず突っ込んでしまったわ。


「そんな事はしないのじゃ。もし子供らの神の力が多ければ、今後は数十年に1人、厳選して妾の力を与え、子供を産んでもらうつもりじゃが、神の力が少なければその方法はやめるのじゃよ。そして、また神の力が足りなくなりそうになった時には、今まで通り新たな人間を召喚するだけなのじゃ。妾の力も有限じゃからな」


 あら、そうなのね。

 ていうか、本当『実験してます』って感じよね。まぁ、実際実験しているわけだけど……。

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