第156話 アメリアとダニエルの馴れ初め

 さて次は、アメリア様にダニエル様との馴れ初めを聞きに行かなくちゃいけないわよね。


 カイル様とイチャイチャした後、昼食を取りながら、次はアメリア様を訪問する事をカイル様に伝える。


 えっ? 式の準備はどうなっているのかって?

 だから、かなり順調に進んでるから良いのよ! 今日はダニエル様とアメリア様に話を聞いて、残りの時間はカイル様とイチャイチャするだけの1日なのよっ!


 それに、アメリア様がどんな感じでダニエル様を好きになったのか、すんごーく気になるじゃない? アメリア様が領地へ帰る前は、全然脈ナシ状態だったのよ?


「アメリア嬢との話は2人きりのほうが良いですか?」


「えっ? あっ、そうですね」


「わかりました。では私はここで待っています」


 私の返事に、少し寂しそうな様子のカイル様。


 ぐぬぬ、強面美形の頭に犬耳が生えているように見えるわ!

 くぅ〜んと寂しそうな声も聞こえてきそうな雰囲気ね。カイル様が可愛いっ!


「もっ、戻ってきたら筋肉を存分に触らせてくださいねっ!」


 あら? 『すぐ戻るので待っててください』と伝えるつもりが、ギャップ萌えのせいで、私の欲望を伝えただけになってしまったわ。


「ぷっ、勿論良いですよ」


 笑われてしまったわ!

 

 だっ、だって、毎日の鍛錬で、カイル様の理想的な筋肉は、垂涎すいぜんものになっているから、我慢出来ないのよーっ!!


 えっ? 『垂涎もの』って普通は食べ物や物に対する表現ですって? 良いのよっ! 私にとって筋肉は全てだものっ!(意味不明)


 カイル様の腕橈骨筋や上腕二頭筋は、力を込めると太ましい筋が浮かぶから、思わずその筋をなぞりたくなるし、大胸筋は柔らかさの中に、硬くぎっしりと筋肉が詰まっていて触り心地最高だし、腹筋は板チョコのように割れていて…………


 あぁっ駄目だわっ、カイル様の筋肉の事を考えていたら、触りたくなってしまったわっ!


「ソフィア? 手が止まってますが、もう満腹になったのですか?」


 はっ! カイル様の筋肉を妄想しすぎて、食べるのを忘れていたわ。


「いっ、いえ、ちょっと(筋肉の)考え事を……」


 おほほほと笑って誤魔化す。


 もうっ、けしからん筋肉はアメリア様とお話した後に、ゆっくりじっくり触るわよっ!




――――――――――




「ソフィア様っ! 会いに来ていただいて嬉しいですわっ!」


 数日ぶりに会ったアメリア様が、頬を上気させて嬉しそうにそう言った。


 アメリア様ってば相変わらず可愛いわね。

 ダニエル様が惚れたのも頷ける……と言うか、ダニエル様は見た目ではなく、スキルが効かないので、自分を自分として見てくれたから惚れた感じだったわよね。


 まぁでも、見た目もそれなりに好みの範疇じゃないと惚れないわよね?

 後でまた、ダニエル様からも話を聞こうかしら……って、今はアメリア様から早く話を聞くのよ!


「いきなりですがアメリア様、ダニエル様との馴れ初めを聞いても良いですか?」


「勿論ですわ。ソフィア様と恋バナですわ!」


 テンションが高いわね。そういえばアメリア様も私と同様、領地では同年代の同性のお友達が居ないとの事だったから、恋バナをする事に憧れていたのかしら? って、まぁそんな話は置いといて、アメリア様から馴れ初めを聞くわよ!


 初め、アメリア様は、ダニエル様の事は何とも思っておらず、ノア様に頼まれたので自領へ招いただけだったけれど、自領へ着くなりダニエル様から猛アタックをされたらしいわ。


 ダニエル様の事はよく知らないけれど、好意を軽々しく伝えてくると感じたアメリア様は、当初は冷たくあしらっていたそうよ。


 アメリア様は、一途に自分だけを想ってくれる方が好みだから、そうではなさそうなダニエル様と距離を取ろうとしていたみたい。


 ところが、ダニエル様は何日経っても変わらず好意を伝えてくるうえに、いつの間にかアメリア様の家族や、家の使用人達まで丸め込み、外堀を埋めてきたそうよ。


 それで、さすがのアメリア様も、ダニエル様の本気さが分かり、とりあえずお付き合いをする事にしたそうよ。


「ダニエル様、本当に頑張ったんですね」


「えっ?」


 おっといけない、心の声が漏れてしまったわ。ダニエル様の苦労を思うと、つい……。


「いえ、何でもありません。それで、お付き合いしてから婚約までの期間は短かったみたいですが、すぐにダニエル様の事を好きになったのですか?」


 と問いかけたら、ポッと頬を染めたアメリア様。


 いや、ホント可愛いわね。思わずぎゅーってしたくなる、庇護欲を掻き立てる可愛さね!


「いえ、あの、その……」


 ?? もじもじして、どうしたのかしら?


「恥ずかし気もなく、毎日愛を囁いて来たので、どうすれば良いのか分からなくなっていたら……」


 えっ? 何? なになに??

 まっ、まさか、そのまま抵抗できずに、あれよあれよと食べられちゃったの?!


「私は随時好意を伝えますが、アメリア嬢はゆっくりで大丈夫ですよ。と言って下さって、愛を囁いてくださるけれど、とても紳士的に接してくれたのですわ」


 あらやだ、私の予想はけがれ……外れだったわっ!!


「という事は、紳士的なのが良かったのですか?」


「えぇと、初めはそうだったのですが……何て言えばいいのかしら……付き合って数日で、紳士的なのが物足りないというか、えっと……もう少し触れ合っても……大丈夫だと思ったのですわ」


 ポポッと頬を染めそう言うアメリア様。


 うぉーい、きゃわわかっ!! きゃわわすぎかっ!

 ダニエル様がここに居たら、間違いなく私はこの部屋から退場させられてるわね!


 って、いけない、話が脱線しそうになったわ。ていうか、『もう少し触れ合っても大丈夫』って思ったってことは、そういう事よね!


「という事は、それでアメリア様もダニエル様の事が好きだと自覚したという事ですか?」


「そっ、そうなりますわね」


 やっぱりそうよね!


「ふむふむ……そして婚約したという事は、ちゃんと好きだという事をダニエル様に伝えたんですよね?」


「勿論ですわ。まぁ、自発的ではなかったのですが」


「自発的ではなかった?」


 えっ? 何なに? 何か面白そうな予感がするのだけど!


「えぇと、私と歳の近い従姉妹が遊びに来ていた日に、ダニエル様と従姉妹が仲良くしている姿を見て、ちょっと、いえ、かなり嫉妬してしまったのですわ」


「嫉妬……ですか」


 えー、何それ、アメリア様の嫉妬とか、可愛い予感しかしないのだけれど。


「そうなのです。私のことを好きだ好きだとおっしゃっていたのに、従姉妹と楽しそうにお話をしているうえに、従姉妹もダニエル様を見ながらうっとりしてる姿を見て、こう、胸がムカムカしてしまって……」


「あー、それはねぇ……」


 アメリア様の従姉妹さん、ダニエル様のスキルにやられたのね。


「ダニエル様と目が合った瞬間、すぐにこちらへ来てくれたのですが、胸のムカムカが収まらず、ついつい、『従姉妹ととても仲良くお話してましたが、私の事を愛してるとおっしゃっておりませんでしたか?』 と言ってしまったのですわ」


「あらあら」


 あらまぁ、それはとても分かりやすい嫉妬ね。


「それを言った瞬間、呆然とした表情のダニエル様を見て我に返り、恥ずかしくなって立ち去ろうとしたら、腕を掴まれたのですわ」


 ほうほう、ドラマみたいですなぁ。


「それでそれで?」


「ダニエル様から『それはもしかして嫉妬ですか?』 と問われ、隠す必要も無いですし、自分の気持ちにも気付いたので頷いたら……」


「頷いたら?」


 なになに? キス? 初キスとかされちゃったの?!


「抱き締められてから抱き上げられて、とっても嬉しそうにくるくる回されましたの」


 またもや私の想像は穢れ……外れたわね。

 それにしても、抱き上げてからくるくる回るとか、青春か!!

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