第30話 またもや危機!

 そんなこんなで日が流れ、段々エッチな悪戯や筋肉の誘惑に対して、拒絶出来るようになってきた14日目の朝。


「あら、カイルが国境に着いたそうよ、夜には王城に来るんじゃないかしら」


「カイル様が………」


 会えるのが凄く嬉しいけれど、迷惑だと思われてるかもしれないという不安な気持ちもあって複雑だわ。


「そんな不安そうな顔しないで、カイルが来たら素直に喜びなさい! 男なんてものは単純なんだから!」


「そうなんですか? わかりました」


「あ、そうだったわ。カイルが居ても悪戯はやめないつもりだから、気を抜かないように!」


「えっ?!」


 ええー?! カイル様が来たら終了だと思ってたのにまだやるの?! てか、カイル様の前であんなことやこんなことされるの?! 恥ずかしすぎるんですけど?!

 あっ! でもカイル様は護衛で来てくれるから、助けてくれたりするかしら?


「あぁ、カイルの助けは無いと思っておきなさい、私これでもこの国の第2王子だから私に対する無礼は許されないわよ」


「ソウデスカ」


 一気に気持ちがしぼんだわ……悪戯されないように気をつけないと! 例え悪戯されてもすぐ拒絶よ!!


 そして昼食の後、少し経ってからノア様が王様に呼ばれた。


「あら珍しい、カイルを迎えるための最終チェックかしらね? ちょっと行って来るわね。そんなに時間はかからないと思うから大人しくここで待っててちょうだい」


「わかりました」


 そういえば、ルーク様との夕食以外でノア様と離れるのって初めて? この部屋内では離れることはあったけれど……。

 14日経ったとはいえ、ちょっと寂しいわね。


「お茶でも飲まれますか?」


 ノア様が行ってしまってから本を読んでいた私に、残っていた使用人の1人がそう声をかけてくれた。


「そうね、ありがとう。お願いするわ」


 丁度喉が乾いていたのでお願いした。

 甘くて美味しいお茶を飲みながら本の続きを読む…………あれ? ……突然……眠く…………。

 そこで私の記憶は途切れた。



――――――――――――――



 ………ん? えっ? 私寝てたの??


 ふと目が覚めて、今の状況に混乱しながらも起き上がる。


「あぁ、やっと目が覚めたか」


「……えっ? ルーク殿下?」


 声をかけられた方を見ると、何故かルーク王子が、こちらを冷めた目で見ていた。


「やっとノアが離れてくれて、お前を連れ出せた」


「……ええと、これは一体……」


 嫌な予感しかしないこの状況、でも一応ルーク王子に聞いてみる。


「いや、我が弟を誘惑している女に、罰でも与えようかと思ってな」


 いやーっ!! やっぱりそんな感じだったーっっ! てゆーか私誘惑してないし!! まじ濡れ衣だし!! ほんと何なのこのブラコン兄貴!!!


「誘惑なんてっしてま、せ……ん…………?」


 勢いよく反論しようと思ったのに、途中から何故か身体の力が抜けてしまった。

 起き上がった身体から力が抜けてしまい、慌てて手をつく……何これ? 力が入らないうえに何か身体が熱い……。


「やっと効いてきたか。遅効性だとは聞いていたが、寝ている間に効かなかったのかと心配した」


 睡眠薬だけじゃなくて、他の何かも盛られていたの? まさか……毒……かしら……。

 えっ、まさか私このまま殺されちゃうの? カイル様にやっと会えると思ってたのに、こんなくだらない嫉妬で殺されるの??


 殺されるかもしれない恐怖と、カイル様に会えなかった悲しみで涙が浮かんでくる。

 でも泣くのは何だかくやしいから、必死に涙をこらえていたら、ルーク王子に顎を掴まれ上を向かされた。


「なっ、何を?」


「ふーん、いつもそんな表情をしてノアを誘っているのか?」


 ……は?? 今何て言ったの?


「その媚薬はいかない限り効果は抜けない。簡単にいかせてやるつもりはないからな、いきたければこちらの質問に正直に答えるしかないと思え」


 ええっ?? はぁ? 媚薬?? まさかの命の危機ではなく貞操の危機?!


「な、なにをっ、言ってるんですか? ……わたしは、ノア様を、誘惑なんて、してないっ」


 何だか息が上がって話しづらいし、身体がウズウズしてきた。

 やばいわ! いかないと効果が抜けないとかマジ何なの? いったこともないのにどうすりゃいいのよ?!


「女に興味の無いノアが、自分から女を側に置くなんてありえない。お前が誘惑してるんだろ? 変な魔道具とか使ったんじゃないのか?」


 と、ふざけたことを言いながら、ルーク王子は私の身体に手を伸ばしてくる……。

 やだ、触れられたらダメな予感しかしない。


「やっ、やだっ! さわらないでっ!」


 震える声を必死で落ち着かせて叫ぶ。


「ふん、そんな簡単には白状しないか」


 そう言って私の胸を掴んだ。


「っ!! ひゃんっ!」


 掴まれただけなのに、快感が身体を突き抜けた。なっ何なのこれ!?

 さっきとは違う恐怖に襲われ思わず叫んだ。


「や、やだっ! たすけて! のあさまっ!」


 そして、こらえていた涙がボロボロと溢れる。


「ふん、叫んだところで誰も――――」


 ドカッ! ドカッ! ガッ! バンッ!!!


「ソフィア! ここなの?!?!」


 ルーク王子が言い終わる前に、ノア様がドアを蹴破って現れた。

 ルーク王子の護衛と使用人達がノア様を止めようとしているが、皆ふっ飛ばされている……ノア様強っ!


「のあ……さま?」


 私の声に反応してノア様がこちらを見る。


「っ!! このっ! バカ兄!!!」


 こちらを見た瞬間、ノア様は激怒してルーク王子をぶん殴った。


「っっ!! ノアっ?! なっ何をっ」


 殴られた意味がわからない様子で、ルーク王子がノア様に言った。


「ソフィアはそんなんじゃないって、何度も言っただろうが!!」


 めっちゃキレて、男言葉で怒鳴ってるノア様を見て、助かったという安心と共に、身体がどんどん熱くなっていくのを感じて焦る……。

 これどうやって収めたらいいの?? 何か息が苦しくなってきた……。


「ノ、ノアっ、そっその女に何か魔法でもかけられてるんじゃないのか?!」


 ルーク王子はノア様に殴られた頬を抑えながら、まだ何か言ってくる。


「違うってば! ほんとしつこいなっ!!」


 そう言ってノア様は、殴られた勢いで座り込んでいるルーク王子を横切って私を抱き上げる。


「っ! あんっ……やぁ……」


 抱き上げられただけなのに、快感が体内に溢れる。もうヤダ何なのよ………。

 安心した気持ちはあるけど、どうして良いかわからない不安でポロポロと流れる涙が止まらない。


「兄様、今回はギリギリ間に合ったし殴っただけで許す……。でも次またこんなことしたら本当に許さないからな……ソフィアは親友で、兄様が思ってるような事はありえない」


 私の様子を見てから、ノア様は静かに、とっても怖い声でルーク王子へ言い放った。


「ノ……ノア……」


「ああ、そうだった、もう少ししてからカイルが来るから、どうせソフィアに手は出せなくなると思うけど」


「え? 本当にカイルが来るのか? あいつは第一騎士団長のはずなのに?」


 驚いた様子でルーク王子が言った。


「嘘だと思ってたのか……はぁ、もういい、とりあえずソフィアに何を盛った? 解毒薬は?」


「解毒薬はない。ただいかせればいいだけの媚薬を飲ませた」


「はぁ? えっ? 何盛っちゃってんの??」


 ノア様の言葉遣いがおかしいわ。


「?? 何だ?? 安全で効果を抜くのも楽な媚薬なのだが??」


 媚薬に安全とかあるの? 全部危険だわ! と突っ込みたいけれど、苦しくて話せないわ。


「……ソフィアは処女で、無垢な少女なんだけど」


「は??」


「は?? じゃないわー!! バカじゃないの? バカじゃないの!! まじで何飲ませてんの?!」


 キレすぎて言葉遣いが乱れてるノア様、って解説してる余裕ないんだけど……ノア様が話す度に揺れて、その振動だけでもビクビクと身体が反応してる……くるしいわ…………。


「のあ……さま……くるし……っ」


「あー!! もう! とりあえず戻るから! 兄さんはもうソフィアと私には構わないでくれ!!」


 そう言って、ノア様は慌てて私を連れて部屋へ戻った。

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