第13話 催し会場で
アメリア様の屋敷から、馬車で15分程の所に催し会場はあった。
「うわぁ! 思ったより人が多くて、すごい賑わいねー」
魔道具の展示品の他にも、お祭りのように出店が並び、あちらこちらに人混みができていた。
西の領地の人が、ほぼ来てるんじゃないかしら? ってぐらい賑わってるわ。
「お嬢様、はぐれないようにしてくださいね」
「そうね、人が多いし気をつけるわ」
会場までついてきてくれた護衛2人と、ミアと私の4人が横一列だと動きづらいので、私とミアが前で、後ろに護衛の2人がついてくる陣形で、展示会場を回ることにした。
「ミア! 見てあれ! とっても可愛いわ!」
「お嬢様、あまり先に行ってはだめですよ」
「あっ! あっちには便利そうな魔道具!!!」
「お嬢様! 走って行かないでください!!」
珍しい物や、前世にあったような物が多くて、ついついはしゃいでしまったわ。
あっちこっち見回ったけれど、まだ半分くらいしか見れていないらしいわ。
そして、もうお昼の時間ね。
「ミア! あの出店のご飯が食べてみたいわ!」
「わかりました。今日は、護衛の方々も一緒に食べましょうね」
すごく美味しそうな串焼きの出店を見つけてしまって、思わずミアに言ってしまったわ。
護衛の方たちも、生暖かい眼差しでこちらを見ていた。あらやだ私ったら……はしゃぎすぎたわ……。
腹ごしらえも終わって、午後からまた見学! と思ったら更に人が増えていた。
「うわぁ……また人が増えたわ。でもまだ半分くらいしか見れてないから行くわよ!」
「あ、お嬢様! まっ…………」
あれ? ミアの声が遠くへ……って、ぎゃー! 私人混みに流されてるー!!
あまりの人の多さに、私は人混みにもまれ流され、ミアたちとはぐれてしまった…。
「……迷子だわ…………」
迷子って私は子どもか!! と1人ノリツッコミしてる場合ではないわ、とりあえずミア達を探すか、もしくは主催者のアメリア様達を探さないと……。
そして、体感にして10分程彷徨ったけれど、本当に人が多すぎて全然見つからない。
ちょっと泣きそうになりながら、周りを見渡す……こともできずに、また人混みにもまれる。
「ソフィア嬢?」
いきなり名前を呼ばれて、振り向こうとしたけど振り向けずに居たら、腕を掴まれ引き寄せられた。
「大丈夫ですか? ……まさかお一人でここへ? いや、領地が違うから一人はありえないか……」
「!? カ……カイル様?!!」
うひゃぁ! 今、私、カイル様の腕の中に引き寄せられてるの!? えっ? これ夢かしら? って夢じゃないわよね! ちょっと心細かったから、余計に嬉しい!!
「えっ、あっあのアメリア様に催しに誘われて、ミアと護衛達と来たのですが、はぐれてしまったうえに流されてました……カイル様はどうしてここに?」
「流された……。はぁ、護衛は何をやっているんだ……」
あ、ちょっと今のカイル様のつぶやきにキュンとしちゃったわ。
いつも丁寧な話し方だから、砕けた話し方が素敵♡
「この催しは人が多いので、毎年王城の騎士団からも警備の手伝いに人手を出しているんです。そして今年は第一騎士団が担当しているんです」
「そうなんですね……」
あーカイル様の腕の中……幸せ〜このまま抱きしめられたいなぁ、と思いながらカイル様を見上げる。あら、淡い緑の瞳が太陽に反射して綺麗だわ。思わず見つめてしまう。
「っ……」
カイル様がちょっと困ったような表情をした。どうしたのかしら?
「……とりあえず人混みがマシなところへ移動してから、ミア殿や護衛を探しましょう」
「すみません、ありがとうございます」
カイル様に手をひかれて人混みを歩く。
きゃー! カイル様と手を繋いでるわ! 大きくて力強い手だわ! きゃー!! きゃー!!!
やばいっ何だか凄く嬉しくてニヤけそうだわ!! ルンルンだわ!!
心の中で叫んでいたら、突然ぐっと引き寄せられた。
「えっ?」
「……ソフィア嬢、あまり離れないでください。またはぐれてしまいます。手では心もとないな……腕を掴んでください」
あらやだ、おーてーてー♪ つーないでー♪ の気分で手を繋いでたら、ちょっと離れてしまってたみたいね。
それにしても腕を掴んでくれって………きゃーやだーっ! とっても近いわ♪ ドキドキが止まらない!!
このまま、もう少し近づいたら大胸筋に……。
「もうすぐ人混みがマシになるので、もう少しだけ我慢してください」
おっといけない、筋肉の誘惑に負けそうになるところだったわ。
ところで何を我慢するのかしら? 何ならずっとこのままでも良いのだけれど?? むしろこのまま、どこまででも行きたいわ!!
あぁ……手の平に感じる
………うっとり♡………
でもやっぱり大胸筋に興味があります! レオ様よりも立派な大胸筋! 感触を知りたいわ。
でも、今日のカイル様は鎧を着ているので抱きしめられてもわからないわね……って、カイル様に抱きしめてもらえるわけはないけれど。
「あっっ!」
ぼんやりとカイル様の筋肉のことを考えていたせいで、足元を見ておらず躓いてしまった。
「おっと!」
腕を掴んでいたので躓いた時に、カイル様の前につんのめる感じになってしまったら、カイル様はまるで子猫を持ち上げるかのように軽々と私を抱き上げた……。
そう、抱き上げたのだ……。
きゃーーーっっ!!! だっ、だだだだ抱かれてるーっ!!
カイル様に抱かれてるーーーーー!!!! やばいわ! 心臓が破裂しそうだわ!!
「……突然抱き上げてすみません。歩けますか?」
「あわわ、なっ何から何まで、ごっご迷惑をおかけして、もっ申し訳ございません……」
多分、今すんっっっごく赤面してるわよね……嬉し恥ずかしだわ! そして嬉しすぎて心臓が痛いわ!!
やっぱりレオ様のときと違って、カイル様だとこんなにドキドキするのね……。
ドキドキの強さが違いすぎるわ!!
「あー………―――」
んっ? カイル様が何か呟いたけれど、周りがうるさすぎて聞こえなかったわ。
そして、カイル様はそのまま私を連れて無言でズンズンと進んでいく。
けれど、人混みがマシになってるというかなんというか……ええと、どこへ行くのかしら? そして人気のない場所までやってきて止まった。
「すみませんソフィア嬢。貴女を連れて歩いていると危ないので、ちょっとここで待っていてください。ここは騎士団が休憩する場所なので、誰かが来たとしても第一騎士団の奴らです。お茶会の時の訓練場で皆ソフィア嬢のことは知っているので安全です」
「えっ?」
「……この人混みでは一人の方が動きやすいので、ここで待っていてください。ミア殿を探すのは難しいですが、領主達の居る場所は決まっているので伝えてきます」
えーっ! カイル様もう行っちゃうの? せっかく奇跡的に逢えたのに……。そしてさっきの迷子の時の心細さが蘇ってきて……すごく心細くなってきたわ。
「あっ、あの、もう少しだけ……そばにいてもらってもいいですか? 心細くて……」
「―――っ」
カイル様が顔に手をあてて天を仰いだ……。
えっ、どうしたのかしら?
「ソフィア嬢、エドガー王子の時もそうでしたが、貴女はちょっと自分の魅力を考えて行動したほうがいい」
「えっ? 魅力??」
えーと、突然何の話かしら??
「男は簡単に勘違いをしてしまうので、気を付けた方が良いということです」
あぁ、カイル様のそれは勘違いではないです……好意ありまくりです、はい。
でもここで、素直にそれを言ってしまったらどうなるのかしら? わざわざそういう事を教えてくれるってことは、カイル様は私に好意がないのかも??
んっ? あれ? でもちょっと待って、さっきの発言、よく考えたらなんだか私に魅力があるって言ってるみたいだわ。
「え、ええと……」
「お疲れ様です!!」
答え悩んでいたら若い騎士が1人休憩に来た。良いタイミングなのか悪いタイミングなのか……。
「あっ、あれ? 団長……と、女の人!?」
「あぁ、ちょうど良かった。ジャン、こちらはソフィア嬢だ」
「えっ? あっ!!! ほんとだ!あのソフィア嬢だ!」
あのって何よ、あのって。
「領主の娘のアメリア嬢に誘われて来たが、人混みで護衛達とはぐれてしまったそうだ。だから領主に報告へ行こうと思っていた」
おお〜! 丁寧語じゃないカイル様だわ! 騎士団ではこんな感じで話すのね。
……あれ? でもオリバー様とレオ様と話すときは丁寧語だったわよね。騎士団長達は歳上だからかしら??
「えっ? あっ!! じゃあ俺が行ってきます!! どうぞごゆっくり!!!」
そういうなり、ジャン様は、マッハで去っていった。
「「えっ?」」
私とカイル様の声が重なった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます