第12話 西の領地で
※ソフィア視点に戻ります。
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
レオ様が去った後、混乱しまくって読書どころではなくなってしまったわ。
少し雨に濡れていたレオ様に抱きしめられたから、ドレスが若干湿ってる………抱きしめられたうえにおでこにキスされた……。
うわぁぁっ! 思い出したら恥ずかしいわっ! 大胸筋と上腕二頭筋に挟まれた感触が………うっとり……じゃないってばっもう!!
レオ様が真剣にぐいぐい来ちゃってもう大混乱よ! 何なのモテ期なの? モテ期かしら!? カイル様からぐいぐい来られたいのに、なんで違う人達がぐいぐい来るの?!
いや、でもレオ様も素敵な筋肉でなんか強引な俺様っぽいし、エドガー王子もお顔は100%好みでこれから筋肉育んでくれるみたいだから……。
ん? って、あれ? あの2人って私にとって結構良い感じなのかしら??
いけない、そんなことよりも、とりあえずミアが戻るまでには落ち着かなきゃ……読書をしていただけなのに、こんな取り乱したままだと変に思われちゃうし、最悪レオ様の不法侵入がバレて騎士団長降ろされちゃったり? 私のせいでそうなるのは嫌だわ。
ええと、さっき読んでた本、本は……と。
読書どころではなくなってしまった心を落ち着かせる為に、とりあえず椅子に座って本を開く。
あっこれ恋愛小説だったわ! ちょうど主人公が好きな人に抱きしめられてるとこじゃないの! 駄目だわまた思い出してしまうじゃない!
あーっ、もう体調が悪いと言って、寝る真似でもしようかしら……。そうだわそうしましょう!
どうやっても落ち着かないのでベッドに横になる。ミアが来たら、ちょっと体調が悪いと言えばいいわよね。
………まだレオ様の体温や筋肉の感触が残ってる……あーっ心臓がうるさいわ!
――――――朝――――――
そして気づけば朝に…………爆睡してたわ。
「お嬢様お目覚めになられましたか! 昨日夕方に部屋へ戻ったら寝ていらしたので、体調でも悪いのかと思い起こしませんでしたが、大丈夫ですか?」
「ちょっと頭痛がしたので、横になっていたら寝てしまってたのね。心配かけてごめんなさい。とりあえず夕食も食べずに寝てしまっていたからお腹が空いたわ。何か食べるものをお願い」
「かしこまりました。今日は晴れているので、朝食と一緒に通信魔道具もお持ちしますか?」
ミアの言葉から、通信魔道具でカイル様へ連絡しなきゃ……と考えたら、昨日のレオ様を思い出してしまったわ。
ひと晩寝たのにまだ駄目ね……。
「……そうね、お願いするわ」
そして朝食を食べながら、通信魔道具でカイル様に連絡を入れた。
返ってきた返事は、昨日の大雨で城下町が結構荒れてしまったのと、これから色々忙しいので、集まりは1ヶ月ほど先になるとのことだった。
今、レオ様に会ったらすごく顔に出そうだし……良かったのか悪かったのか。
ちょうどエドガー王子とも月イチで会う約束なので、何回も来るのは大変だから、また同じ日にしてくれるということだった。
1ヶ月後か、先は長いわね――――。
あっ! そういえば、この間のお茶会の時に庭園で出会った、可愛い令嬢のアメリア様から手紙が届いて、来週西の領地でやる大規模な催しに誘われたんだっけ。
何だったかしら、魔道具の研究のお披露目会みたいな、ちょっと面白そうだし行きたいわ。
あと、アメリア様も可愛くて優しそうだったし、他の領地の同年代の令嬢と仲良くできることはめったに無いものね。
お父様とお母様に、西の領地へ行ってもいいか聞いてみましょう。
―――――――西の領地―――――――
速攻で両親の許可がとれたので、西の領地へ来たわ。
催しは明日で、今日はアメリア様のお屋敷にお泊りさせてもらう事になったわ。
因みにメンバーは、ミアといつもの護衛さん達。
「ソフィア様! 本当に来てくれて感激ですわ!」
ついた途端、アメリア様が感激しながらお出迎えしてくれた。
私と同じく、他の領地の令嬢と仲良くすることがないので、とても楽しみにしていたみたい。
「明日の催しは、主催者のお仕事があるので一緒に行動はできないけれど、その分今日は沢山お話ししますわよ!!」
ちっちゃくて可愛いのに圧がすごいわね……ええと、アメリア様ってこんな感じだったかしら?
まぁいいわ、この国では同年代の令嬢とお話する機会が少ないから私も楽しみだわ。
……恋バナとかもするのかしら??
――――――アメリア邸お庭――――――
「と言うことで、早速お茶会もどきですわ!」
「もどき?」
「お茶会というと何だか堅苦しいので“もどき”ですわ! それはそうと、ソフィア様はお茶会の時、エドガー王子をどう思いまして?」
「えぇと、お顔はとても美形でした」
「そうですわね、とても綺麗なお顔でしたわ。それに博識でいらしたし優しそうでしたわ」
あれ? 言葉では褒めてるのに表情が死んでるわ? 何故かしら?
「アメリア様は、エドガー王子のことは好きではないのですか?」
「えっ! なぜそう思うのかしら?」
表情が死んでいるのに、そのことに自覚が無いのかしら?
「いえ、とても好意のある表情ではないように思えましたので……」
「えぇと…………はぁ……バレてしまっては仕方がありませんわ。そうなのです、私はエドガー王子の事を好きという気持ちはないのですわ。でも、お父様が王城で仕事をしているのですが、とても王子を気に入っていて是非私と結婚をさせたい! と息巻いておりまして…」
あー、よくある親の暴走ね……うちでは皆無のあれかぁ。
「それは……大変ですね」
「そうなのです。エドガー王子の側近と話をつけて、今回のお茶会で絶対王子の婚約者にさせてやるとおっしゃったのです」
「あらまぁ……」
「でも、お茶会の後呼ばれることも無かったので、胸を撫で下ろしていたのですが……」
何故か私が呼ばれたからね!! ってことは例のエドガー王子の暴走で話が無くなったのね……。
本来は、アメリア様が呼ばれる予定だったのか。
「お父様が、納得いかない! と、王城へ乗り込みそうで心配なのですわ。でも私は私を愛してくれる方と結婚したいのです。エドガー王子は何だかちょっと、造り物のような笑顔というか何というか……とりあえず、私はちゃんと恋愛をしてから婚約者を決めたいのです!」
ほえー可愛いのに、ちゃんと強い意志を持った子なんだ。
「アメリア様のその意志を、アメリア様のお父様にきちんとお話すれば、分かってもらえるのではないでしょうか?」
「お父様にこの気持ちを伝える……」
アメリア様がちょっと考え込んでいるので、その間にお茶を飲む。
あら、このお茶すっきりしていて美味しいわ♪ と、お茶を味わっていたら結論が出たようだ。
「わかりましたわ! 自分の将来の為ですもの! ちょっと怖いけれど、お父様にこの気持ちを伝えますわ!」
怖い? お父様が怖いのかしら? うちとは大違いでちょっとわからないけれど、伝える事は大事よね。
アメリア様頑張ってー! って他人事で聞いていたのだけれど、エドガー王子の婚約者のお話だから、全くの他人事ではないのよね……まぁアメリア様がエドガー王子に恋してるとかではないから良いわよね。
その後は、王城のあの庭園の話やお菓子の話などで盛り上がり、楽しいお茶会もどきは終了した。
そして、夕食の時に初めてアメリア様のご両親と顔を合わせたのだけれど、確かにアメリア様のお父様……怖いわ……お顔が。
身体は普通なんだけれど、お顔が凄く怖い……なんだろ、ほんとに怖いとしか言えないお顔で、そりゃ実の娘でも怖がってしまうわねぇと思うぐらい怖いわ。
アメリア様がこのお顔を受け継いでたら大変なことになるところだったわね。お母様に似て本当によかったわね……。
まぁそれは置いておいて……アメリア様は夕食後、ちゃんと時間を取ってお父様とお話をして分かってもらえたみたい。
次の日の朝、催しへ行く前に嬉しそうに報告してくれたわ。良かった良かった。
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