第11話 ●レオ・コリンズ

 ※レオ視点のお話です。


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 俺はレオ・コリンズ、26歳。第三騎士団長だ。

 俺は幼少期から身体の発育がよくて色々器用だったため、そんなに頑張らなくても騎士学校では常に首位でそれがあたりまえだった。


 筋肉も付きすぎると重たくて動きにくいし、女の子達も近付いてこないから、それなりに鍛えた後は放置して、毎日女の子達と遊び呆けていた。それでも同年代には負けることはなかったし、それでいいと思っていた。

 でも、その驕りは騎士団に入ると打ち砕かれた。16歳で騎士学校を卒業し、初めに配属された第二騎士団に化け物がいたのだ。


 まだ、当時は騎士団長ではなかったオリバー・グラント21歳。

 どう考えても、あれは化け物という呼び方以外に例えようがなかった。


 訓練では、同期達と1対5でも負けることはなく、当時の騎士団長達でも1対1で互角。

 まだ、騎士団に入って5年のオリバーに、10年以上の猛者である騎士団長達が、負けはしないが勝てないという現実に俺は驚いた。


 流石に俺もこのままでは駄目だと思い、真剣に訓練をし勉強もした。

 本気で頑張った俺は、メキメキと頭角を表し、オリバーが騎士団長になった翌年、俺は最年少で騎士団長になった。


 まぁ、たまたま第三騎士団長が高齢で辞職し、騎士団長のポストが空いたのもあるけど、オリバーと当時の第一騎士団長の次ぐらいには強くなったという自信はあった。


 しかし、強くなったのはいいが、この国では筋肉ゴリゴリマッチョよりも、程よく筋肉が付いた優しい男が好まれる。

 あんまり筋肉がつきすぎると、女の子達に怖がられてしまうことが分かっていたから、俺は頑張りすぎてついた筋肉があってもなお、女の子が逃げないように、なるべく優しく接するように心掛けていた。


 何故そんなに必死なのか? そりゃ野郎と遊ぶより可愛い女の子と遊ぶ方が楽しいし、気持ちいいこともできるからね。

 まぁ、それが功を奏して、この身体のわりには結構モテた。多分顔立ちも優しそうな部類だからだろう。


 でも、何故か本気で好きになれる子が出来なかった。だから相手も本気にならないよう、軽い遊び人キャラを演じてたら、いつの間にかそれが定着してしまった。

 まぁ好きな時に可愛い女の子と遊べるから良いんだけど。


 ……そして、いきなり話は変わるが、騎士団の後輩にカイルという奴がいる。

 そいつは、オリバーに次ぐ化け物で、言葉遣いは丁寧なものの、目つきは鋭く性格も男らしく、顔が整っているからか冷たい表情が余計に怖い。

 女の子からは当たり前に怖がられ、他の騎士団の連中からもちょっと恐れられていた。


 まぁ……オリバーと同じく化け物じみた強さだったから、俺の最年少記録を破って騎士団長になったのは、ちょっと悔しいけど仕方のないことだと思った。


 で、話は少し前に遡る――――。

 そのカイルが、なんと! お茶会に参加しに来た一人の令嬢と仲良く会話をしていて、挙げ句には令嬢の方からカイルに控室までの案内をお願いした。という情報が回ってきた。


 えっ? まじで? あの、女の子がみんな怖がって近づかないカイルと令嬢が会話?? そして、その後控室まで案内させた? カイルに?? 令嬢が??? まじで???

 不可思議なことばかりで頭が追いつかない。誰が見たのかわからないけど、見間違いじゃないのか???


 そんな情報を聞いた後、やや混乱しながら訓練をしていたら、訓練場に場違いな令嬢が現れた。


 あっ、もしかしてあれが例の令嬢かな? と思って近づいてみた。

 あまり周りにいないタイプの女の子だな、見た目はキツそうだけど美人でボリュームのある身体……今回のお茶会に参加できる最高年齢の18歳かな??

 そして、何故か訓練場をキラキラした瞳で見学している――――何だろう胸がざわつく……。


 とりあえず、いつもの調子で声をかけてみたら「午前中にも見学させていただきました、ソフィア・ジョーンズと申します。王城の訓練場は素晴らしいですね」と返された。


 へー、ソフィアちゃんっていうのか、てか訓練場が素晴らしい?? 素晴らしい訓練場ってなんだ??

 キラキラした眼差しで訓練場や騎士達を褒めるソフィアちゃん。

 矢継ぎ早に紡がれる言葉……あ〜ずっと聞いていたい声だな〜って、しまった! まだ自己紹介してなかった。


 仕方なく途中で話しを遮って自己紹介。そして綺麗って褒めたら赤面した。

 なんだこの子! 見た目とのギャップのせいか? めっちゃ可愛い!! 可愛いって言ったらさらに真っ赤に。なんだこれ可愛すぎるだろ……。

 そして、何とこの子はこの容姿で全く自分に自信を持っていないという……。


 まじかー、え、ほんとにまじか? こんなキツめの綺麗な子の心は純粋ピュアだと……。

 そりゃぁ世間では、可愛らしいおしとやかな女性の方がモテるといわれてるけど、ちゃんと美人にも需要はあるし、ソフィアちゃんはかなり、いや、極上の美人だ。


 思わず『好み』だと、いつも言わないようなことを言ってからちょっと我に返る。

 いかん、年甲斐もなく本気で口説きそうになった……こんなゴツいおっさんに言われても嬉しくないよね〜っとごまかすが、予想外にも「いえ、とんでもないです。そう言っていただけると嬉しいです」と返してきた。


 えっ? これ行っちゃってもいいのかな? お誘いしちゃう? とちょっと心が揺れた時にカイルが来た。

 わざわざカイルが来たってことは、エドガー王子が気に入ったってことか? 残念…って、あれ? 残念? 俺、今何を考えてた?


 ソフィアちゃんとカイルが去った後、俺の頭の中がぐるぐる回る。

 そして理解した―――初めて見たときの胸のざわつき……あれが一目惚れか―――この歳で遅い初恋をしてしまったのだと。


 そして、その後カイルから、案の定エドガー王子がソフィアちゃんを気に入ったという話を聞かされ、まさかのまさか、ソフィアちゃんはそれを蹴って騎士団長達のようなゴツい身体の方が好みだと言ったらしい。


 これってもしかして脈あり? いや、でも騎士団長だから、もしかしたら一番若いカイルかもしれない。楽しそうに話してたとか言ってたしなぁ。


 そしてカイルが突然、騎士団長の集まりにソフィアちゃんを呼んで良いかどうか聞いてきた。

 ソフィアちゃんが騎士団長の仕事に興味があって、こないだ話した俺から話を聞きたいという理由らしい。


 オリバーは真面目だから、理由を聞いて速攻でオッケー。

 俺は何となく違う理由のような気がしたけど、とりあえずもう一度会いたいしオッケーを出した。


 そして、ソフィアちゃんが来た。

 来て早々、ソフィアちゃんがカイルを見る表情でわかってしまった……あぁ、ソフィアちゃんこいつに好意をもってるんだなーって。

 オリバーの身体を見て、なんとも言えない恍惚な表情をしてたから、ほんとにゴツい身体も好きみたいだけど。


 そして、オリバーが呼んだら、すぐカイルの方へ行こうとしたからこっちに呼んだ。

 ソフィアちゃんの気持ちはわかったけど、カイルにはまだ伝わってなさそうだしこれぐらいいいよな、俺から話を聞きたいと言ってたことになってるんだし。

 でも、オリバーの発言でみんなで話すことになり、ソフィアちゃんと二人っきりにはなれなかった……まぁ元からカイルもオリバーも二人っきりにするつもりはなさそうだったけど。


 で、ソフィアちゃんの隣で色々話したけど、やっぱり可愛いなぁ……。


 しかし、話が終わり一緒に王城へ行こうと誘ったら、侍女のミアちゃんが凄くガードしてきた……。

 えー、俺何かしたかな? まだ何もしてないのになぁ。王城まで護衛がてら話したかったのに残念。

 まぁオリバーとカイルの言うとおり、3日後にまた会えるから我慢するか。


 と思ったら当日まさかの大雨……。

 ここへ来るのに3時間くらいかかるとか言ってたから今日は来れないだろうなぁ…案の定騎士団長の集まりにソフィアちゃんは来なかった。

 集まりから寮へ帰る途中…………駄目だ! 我慢できない!!


 気づいたら、馬を駆ってソフィアちゃんの領地へ向かい、屋敷の前にたどり着いていた。

 自分事ながら初恋の行動力って凄いなぁ。


 騎士団長の鎧は特別な魔道具で、暑さや寒さ等の気候に対応した魔法がかかっていて、自分を中心に小範囲だけど小雨も弾いてくれる。

 まさかこんなすごい雨も弾いてくれるとは思わなかったけど、おかげで馬も俺も濡れずに到着できた。

 でも、流石に道が悪かったせいか、タフな軍馬だけど若干疲れてるようだ。

 休ませついでに、ここまで来たから姿を見てから帰ろうと決めた。


 確か、大きな木がすぐ近くにある二階の部屋って言ってたし……あの木かな? 結構でかいから登れそうだな。


 鎧を着たままは登れないけど、この鎧は意志を持ってボタンを押すとすぐ脱着できるから大丈夫だ。そして脱ぐと鎧が勝手に指輪になる。

 因みに指輪になる時に自動で綺麗にしてくれるから、洗わなくてもいいとっても便利な鎧だ。


 ……ということで、Tシャツとズボン姿になって木に登る。あっ、しまった……鎧から指輪にしてしまうと魔法が発動せず雨に濡れてしまう。

 でも木の葉っぱが傘代わりになり、こんな大雨でも濡れるのは少しだけだからいいか。


 そして、ソフィアちゃんを発見した。

 見るだけで帰ろうかと思ったけど、1人だったし我慢できずに窓をノックしてしまった。


 そしたらまさかのまさか、ソフィアちゃんが驚いて窓を全開にした。

 誘ってるのかなw

 違うとわかってても身体が勝手に動いてしまった。なんかちょっと警戒してる? 可愛いなぁ……。

 そして、近距離に居るソフィアちゃんが離れそうになったから、思わず手を取りそのまま引き寄せて抱きしめる。


 あー柔らかい……なんか甘い香りがする……。

 そしてやっぱり胸にボリュームあるなぁ………………襲いたい……。


 この細くて白い首筋を舐めたい……。

 この可愛らしい唇にキスして、柔らかい身体を貪り食いたい……。

 服脱がせたい……白い肌、ふくよかな胸、見たいなぁ、触りたいなぁ、舐めたいなぁ、触ったらどんな反応してくれるのかなぁ、どんな声をあげてくれるのかなぁ。


 「取って食ったりしない」といいながら、頭の中ではどうやって襲うのかを考えてしまっていた。


 流石に忍び込んできたから手は出せないし、抱きしめたら真っ赤になったソフィアちゃんを見れただけでも十分かな〜と思ったけど、可愛すぎて我慢できず、思わずおでこにキスしたら更に真っ赤になった。

 これ以上やったら、ほんとに抑えられなくなりそうだし、残念だけど帰るか。


 帰り道で思う……うーん、これはどうやっても諦められる気がしないなぁ。

 あ、でもカイルはソフィアちゃんの気持ちに気付いてないし、エドガー王子はソフィアちゃんを気に入ってるみたいだけど、当のソフィアちゃんは相手にしてないみたいだし……別に諦めなくてもいい気がしてきたな。

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