第10話 初めての……
そういえば、お茶会から帰った日、両親からは特に何も言われなかったから、何も報告はしなかったのだけれど、エドガー王子と今後会うことが決まったし、報告しておいたほうがいいかしら?
私の両親は、お茶会の時にもちょっと話題にでたけれど、基本的に私の事は私の自由にさせてくれる人達だ。
放任で愛情がないということではなく、放任だけれどしっかりと愛情は貰っている。
小さい頃から躾はしっかりされていたので、私は両親を困らせることなくここまで成長してきた……はずだ。両親も過大な期待を押し付けてきたりはせず接してくれるのですごく楽で……ある意味空気なのだ。
なので、よくこういう風に報告を忘れたりするのだけれど、大抵は報告しなくても良いささいな事だったので今までは大丈夫だった。
でも、流石に王子関連のことは話しておかないのは駄目よね……。
「ミア、お父様とお母様にエドガー王子のことを話しておいたほうがいいかしら?」
「あっ、それは大丈夫ですよ。昨日のお茶会の後に報告しましたから」
「えっ? 報告したの? お父様とお母様から何も言われなかったのだけれど」
「あまり本人に直接エールを送ると、プレッシャーになるだろうから、もし尋ねられたら頑張ってねと伝えといて〜とのことでした」
軽っ! そして私が報告するのを忘れることを分かってた……流石親ね。
まぁいいわ、はじめから止められるとは思ってなかったけれど、応援されたならどんな結果になろうとも大丈夫そうね。
「そうなのね、ありがとう。今日も色々あって疲れたし、早く寝ることにするわ」
3日後にまたカイル様と会えるのと、オリバー様の素敵な筋肉を鑑賞できることが待ち遠しいわ! あっ、レオ様の筋肉もそれなりに良いから、3人とお話できる幸せな時間……早く3日後になぁれ♪
――――――3日後――――――
……何ということでしょう。朝から雨、しかも大雨だわ。こんな大雨の中馬車を出すのは危険よね。
「ミア、流石にこの大雨の中行くのは駄目よね……」
「そうですね。残念ですが今日は無理ですね」
あーあ、せっかくの機会が……天候とか全く考えてなかったわ。
あっ、そうそう、この世界ではこんな嵐のような大雨がすごく珍しいのよ。
魔法によって水が作られているから、そんなに雨が降らなくても水不足になったりはしないの。だから大きな災害を未然に防ぐ為に、空に大きな雨雲(前世では積乱雲という名前の雲だったかしら?)を発生させない魔法を展開して、大雨を振らせないようにしているんだけれど……不具合かしら?
因みにこの世界での魔法とは魔道具を使うことで、人間自体は魔法を使えない。
前世の科学と似ているのだけれど、ちょっと違う不思議なエネルギーがあって、それを使って魔道具が作られる。
不思議なエネルギーってふわっとしてるわね……でもそれ以外に説明ができないのよ。
そしてそのエネルギーは無限なので、こういうふうに、水を作ったり大きな雨雲を消したり等の、大きな力をもつ魔道具が作れるみたい。
でも、この2つの魔道具は大昔に作られていていて、作り方は分からないらしい。そしてそれ以外では大きな力を持つ魔道具は作られていない。
というか、どうやっても作れないみたい。生活面で使う、小さめの魔道具は色々あるのだけれど。
で、まぁ、道具なのでたまに不具合も起きる。何十年に1回とかだけれど。まさかその何十年に1回が今日だなんて!
ほんとついてないわ……明日になったら次の集まりがいつなのか、通信魔道具で尋ねるしかないわね。
通信魔道具とは現代で言う伝書鳩みたいなもので、空を飛んで手紙や声を届けてくれる飛行型の小型魔道具。
なので小雨程度なら大丈夫なのだけれど、こんな大雨が降っていたら近距離ぐらいしか使えないのよ。
先程述べたように、普段大雨なんて振らないからこの魔道具が主な通信の方法なんだけれど。
こんなに降ると困るわね……。きっと今日は色んなところでいろんな支障が出ていそうだわ。
「今日は、予定が無くなってしまったから読書でもしようかしら」
「そうですね……これだけの大雨なので外出もできませんし」
という事で、読書をすることにしたわ。あっそうだ! 恋愛小説を読みましょう! そして勉強……になるのかはわからないけれど、胸のドキドキを体験しましょう!
そして、1人部屋でおとなしく読書をしていたら……。
『コン、コン』
ん? 今何か音がしたかしら? ……気のせい?
『コン、コン』
んん? やっぱり音がするわ。窓からかしら……。
音がする窓へ移動して外を見ると……。
「やっほ~きちゃった♪」
「ええええぇっ!?」
なんとそこにはレオ様が居た……。
ええっ! この大雨の中3時間かけてきたの?! そしてここは2階……。レオ様は木に登って窓の前に居た。
うっすらと濡れたTシャツから見える筋肉がセクシー……ってなんで居るのよ? びっくりして思わず窓を全開にしてしまったわ。
「ええと、いろいろ突っ込みどころ満載ですが……濡れていますしタオルを用意させますので少々お待ちください」
「あっ人呼ぶのは待って~。忍び込んだから怒られちゃう」
騎士団長が不法侵入って何しとんねん!! と思ったら、ふわりと軽やかに木からこちらの部屋へ飛びこんできた。
「わわっ!」
びっくりしたわ! こんなにガタイのいい人がこんな身軽にって、ここ私の部屋なのだけれど忍び込んできたって……。
「ソフィアちゃん無防備だね~。まさか窓を全開にしてくれるとは思わなかったよ~」
と、超至近距離でレオ様がおっしゃった。
うわぁ! 良い筋肉が眼前に! じゅるりって見惚れてる場合じゃないわよっ! 危険が危ないわ!(混乱)おもわず後ずさりしようとしたら、ぱっと手を掴まれた。
「あっ本当に待って。びっくりさせてごめんね~。大丈夫、前も言ったけど取って食ったりしないから」
と、とても爽やかな笑顔で言ってきたので、強張っていた体が少し緩んだ。
いや、本当に忍び込んできたのが嘘のような爽やかさ。
「ええと……何故このようなことを?」
「ん~、今日会えると思ってたのに、こんな大雨だったからソフィアちゃんが来れないと思ってさ~。気づいたら馬駆って来ちゃってた」
てへぺろ、みたいな顔で言われても困ります……。
「いや、来ちゃってたって……。でもよく部屋がわかりましたね」
「こないだの集まりで、窓の前に大きな木があってそこにいる小鳥が毎朝~って話をしてたから、ここかな? ってこっそり覗いてみたら1人で居たから、思わず窓ノックしちゃった」
「えぇ、そんな話だけでわかったんですか……。あっそうだ、タオルは無いですがハンカチを……きゃっ」
さすがに濡れてるTシャツ姿そのままだと筋肉を見すぎて……げふんげふん、寒そうなので、部屋にあるもので、拭くものを用意しようと思ったら突然抱き寄せられた。
「どうせ帰りにまた濡れるから大丈夫。……取って食ったりはしないけど、これぐらいならいいよね」
うわぁぁぁ!!! レオ様にぎゅーってされてる!! てかレオ様から良い香りが……くんくん…って何考えてるのよ私っ! しかし力が強くてびくともしないし……レオ様の事はまだあまりよくわからないけれど、こんなに素晴らしい筋肉に抱きしめられてるって思うとちょっとドキドキするわね。
あぁ、今素敵な筋肉に包まれてるわ……あぁ幸せ…………っじゃないってば! しっかりしなさい私!
「いきなりごめんね~。でも、それだけソフィアちゃんの事、真剣に想ってるって事は分かって貰えたかな?」
まさか、こんなに真剣に想って貰えてたとは思ってもみなかったわ……。
押しが強いのはとっても好きだけれど……エドガー王子の筋肉を半年待たないといけないし……。
どうしましょう、特に嫌いなところがあるわけではないから、きっぱりと断る言葉が出てこないわ。カイル様とオリバー様の次にレオ様の筋肉も素晴ら……いけない、また思考が筋肉へ逸れそうになったわ。
「えぇと、分かりました。けれど……やはり突然このようなことは……」
「ほんと可愛いな…………。ちゅっ」
「っっ!?!?!?!」
えっ! ちょっっ、今何した!?!? 何をしたの!?!?
「名残惜しいけどここまでかな……じゃあまたね~♪」
レオ様は、何事もなかったかのように窓から身をひるがえし去っていった。残された私は……茹でダコの様になって佇むしかなかった。
キスされたわ…………。
おでこだけど、でもおでこでも異性からの初めてのキスよ! びっくりするじゃないの!! あんな優しそうなお顔&軽い感じだったのに、まさかこんなに真剣にぐいぐい来られるとは思わなかったわ……ドキドキ。
んっ? またドキドキ?? エドガー王子の次はレオ様にもドキドキしてしまうなんて……私カイル様の事が好き……なのよね??
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます