第6話 完成形
そして、予想外だらけのお茶会は(色々ありすぎて忘れてたけれどお茶会だったのよね)終了し、私は王城を後にした。
「あー、疲れたわ」
屋敷に戻り、自分の部屋につくなり思わず独り言……にミアが反応。
「疲れましたね……お嬢様の予想外の言動で、私の寿命がかなり縮みました」
「ミア、ほんとにごめんなさい」
「いいえ、私がお嬢様の心の内に気付けなかったせいです。なのでもっと精進しなければなりません! 頑張ります!」
そう言ってミアは、他の侍女とともに夕食の準備へ向かった。
すごく前向きね……。
エドガー王子に混乱させられたのは、私のせいではないけれど、カイル様の筋肉が格好良すぎて、他の人なんてどーでもよくなっちゃって、あんな事になってしまったのは反省しているわ……。
あぁ……思い出してもうっとり。あの逞しい胸板に頬擦りして、あの丸太のような腕に抱きしめられたい―――。
「はぁ……(感嘆のため息)」
あっそうだわ! 明日はレオ様ではなく、カイル様に好意を持ってるということに、気づいてもらえるよう頑張らないと!
えっ? 普通に伝えろって? 素直にそれができていたら、すでに今日やってるわ。
てゆうか、あれでもすごく頑張ったのよ! そう、私は前世の時もそうだった気がするのだけれど、恋愛ごとはまるでダメ、準備段階までは突っ走れるのに、いざ相手を前にするとうまいこといかないのよ。
今日もカイル様とお話はできたけれど、ここぞという時には空回ってばっかりで……あー、明日どうなるのかしら。
カイル様ともっとお話して、もっと近づきたい……うまく行きますように。
あ、その後、エドガー王子ともお話しないといけないんだった……しかし、エドガー王子と何を話したらいいのかしら? 『お互いを知り合う為』とか何とか言ってたけれど、筋肉が足り無いので結構です! とは言えないし……。
あっ! それとなく筋肉の良さを教えれば、ゆくゆくは筋肉育ててくれたり……するわけないわよねーやっぱり、エドガー王子と話すのが億劫だわ。
結局、夕食中も入浴中も、何の対処法も思い浮かばずに時間だけが過ぎ、ベッドに入れば速攻で睡魔に負け、朝までぐっすり寝てしまいましたとさ。
そして翌朝、教えてもらった時間とその場所へ行く為に、ミアと護衛数人と共に王都へ向かうのだった。
――――――馬車内――――――
「お嬢様、本当のことを仰ってくださいね」
馬車で二人きりになった途端、ミアが聞いてきた。
「ミア、突然どうしたの?」
「昨日のことがありますので、混乱しないように、先に知っておきたいのです。どうか、このミアの質問にお答え下さいませ」
「わかったわ。改まって一体何を聞かれるのかしら?」
「お嬢様は、レオ様を好いておられるのですか?」
「いいえ」
「……そうなのですか。では、何故エドガー王子の婚約者に、なりたくなさそうな素振りをしたのでしょう? そして、何故今から騎士団長の集まりに行くのですか?」
「ミア……。まさか、ミアからそんな質問をされるなんて………」
「お嬢様、やはり言いたく――――」
「誰かに言いたかったのよ!! 聞いてくれてありがとう!!!」
「えぇ……んんっ、ではお嬢様、教えて下さい」
どうかしたのかしら? まぁいいわ、聞いてくれるなら話しましょう!
「王子の婚約者になりたくなかったのは、本当に筋肉のせいなのよ」
「は?」
ミアがポカーンと口を開け、あまり見たことがない間抜けな顔をした。
「私、実は……昨日も言ったけれど、身体は筋肉ムキムキでマッチョ、顔はイケメン、内面は俺様な肉食系な男の人が好きなの。王子って顔以外は当てはまらないでしょう?」
「は?」
ミアがポカーンとしたまま、思考がこちらに戻ってこないようだ。
まぁいい、とりあえず続きを言おう。
「でね、第一騎士団長のカイル様は、すごーく当てはまっていて……あ、顔は少し好みとは違うのだけれど、イケメンに変わりはないから、そこだけは妥協してもいいかなって、私カイル様の事がとっても気になってるみたいなの……」
「そうだったのですね!!」
何故か突然ミアが復活した。
「わかりました! そうと決まればそう動きましょう!」
何かテンションが高いわね。そして、どう動くのかしら?
そうこう話しているうちに、王城手前の城下町の、教えてもらった場所についた。3時間かかるのに今回もあっという間だったわ。
――――――城下町――――――
『カランカラン』
扉を開けると、現代の喫茶店の入口みたいな音がした。
あまり覚えてないはずの現代のことを、脳内でふと思い出したということは、現代の喫茶店って、みんなこんな音だったのかしら?? 毎回カランカラン鳴ってたらうるさくないのかしら? まぁ、今はそんな事はどうでもいいわ。カイル様はどこかしら?
「あっ、ソフィアちゃんだ〜。ほんとに来た!」
レオ様の声がしたのでそちらを向くと、レオ様と、その前に青い髪の人が居た。
第二騎士団長さんかな? あっ、良かった、まだカイル様も居るわ。
すぐあちらへ行ってもいいのかしら? まだ話し合いの途中だったら駄目よね? と思っていたら、青い髪の人が立ち上がってこちらを向いた。
「初めましてソフィア嬢。私は第二騎士団長のオリバー・グラントだ。話は聞いているので気にせずこちらへ来るといい」
うわぁ! うわぁぁ!! 凄い!!! 凄いよー!!! マッチョの完成形キタァァァ!!
カイル様も素敵だけど、この人は、何ていうか出来上がった
神か? この方は神なのか? カイル様より少し高めの身長で瞳は黒。
何か、この世界で黒い瞳って神秘的に見えるわ……やばい……興奮しすぎて鼻血出そう! 令嬢が鼻血は駄目よ駄目駄目、こらえなさい私! ふんぬー。
「お嬢様……呼ばれておりますが」
鼻血と戦っていたら、ミアが小さな声で話しかけてくれたおかげでハッと我に返れた。
「あ、そっそうね、あちらへ行きましょう」
危なかったわ、カイル様とは違う素晴らしさで、思わず鼻血を出すところだった……。
しかし、やはり良い身体ね。
カイル様のは触りたいけれど、オリバー様のは鑑賞しながら拝みたい。
毎日眺めていたいわ、いいなぁ、あの上腕二頭筋から三角筋のライン。
腹筋もきっとバッキバキなんだろうなぁ……脚も太そうね。
めったに見れない
ついつい、オリバー様の
あ、初めはレオ様の方へ行かないといけなかったのかしら?
まぁいいわ、だってカイル様に会いに来たわけだしね!
「ソフィアちゃん♪ こっちこっち〜」
と思ったら、レオ様に呼ばれたわ……残念。そして、ちょっと後ろでミアの舌打ちが聞こえた気がしたけれど気のせいよね。
「カイルから聞いたけど、ソフィアちゃん相当自分の領地が好きなんだね〜」
えーとカイル様、私がここへ来られる理由をどう説明したのかしら……。
「騎士団長の仕事に興味があるなんて、前に言ってた領地の為でしょ? やっぱりちょっと変わってて俺好きだな〜♪」
そういう理由でしたか。
しかしそんな理由でこんな場所へ来てもいいとか、騎士団って結構ゆるいのかしら?? それとも、こんな令嬢1人が来たところで、危険もないからいいやってこと?
……あっ、そうだったわ、この国は基本的に人間同士の争いがほぼ無いから来れたのね。
記憶が少ないとはいえ、前世の基準にひきずられているわ。
そして、軽々しく好きとか言うのは、照れるから止めてほしいわ、赤面してしまうしカイル様の前だから、また勘違いさせてしまうじゃないの。
「ありがとうございます。ぜひ色々お聞きしたいです」
「……それならレオだけでなく、私達も話をした方がいいかな?」
グッジョブオリバー様!! それならカイル様も残ってくれるし、オリバー様の筋肉も見放題だわ!
「はいっ!! ぜひっ!!」
とってもいい笑顔が出てしまったわ。
それから色々4人でお話。仕事からプライベートなことまで色々聞きだして、オリバー様が妻子持ちという事がわかったわ。
王城の騎士団長たちは、皆フリーだと噂で聞いていたのだけれど……。
王城の騎士団に入ると、貴族であろうが平民であろうが関係なく、皆が宿舎で生活をする。
結婚をしなければずっとそのまま宿舎生活。
そして、騎士が貴族の場合でも催事には出ない……出ないというか、警備をしないといけないので出られない。
結婚している場合のみ例外で、妻が催事に出席する場合のみエスコートをしてもよい――――で、騎士団長たちが出席したことがないのと、それらしき噂もないのでそう言われていた。
だからカイル様をロックオンしたのだけれど、噂なんてあてにならないわね。
妻子持ちがカイル様ではなくて本当によかった……もしそうだったらショックで寝込んでしまうところだったわ。
ちなみにオリバー様が出席していなかったのは、奥様が催事に出るのが苦手な方だったので出なかったという事だった。
そして、なんやかんやとレオ様の突っ込みにより、カイル様は婚約予定の方とかもいないと判明。ほんとよかったわー!
そして楽しい時間は終了し、次は王子とお話の時間ね……。
順番を逆にすればよかったわ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます