第5話 勘違い
そして、カイル様とお話しながら(この機会を逃すべからず頑張って話しかけたわ!!)エドガー王子の待っている謁見室へ案内してもらった。
「待たせて悪かったな、ソフィア嬢」
「とんでもございません。散策しても良いとのことでしたので、有意義な(筋肉鑑賞の)時間を過ごせました」
「そうか、なら良かった」
挨拶後に周りを見渡したけれど、私しか居ない。他の令嬢は居ないのかしら?
「ところで……呼ばれたのは私だけなのでしょうか?」
「そうだが、何か問題が?」
問題というか謎だらけよ!! 何よこれ……? えっ! まさか私が婚約者の最有力候補てこと??
と、混乱していたら、エドガー王子がお茶会の時の笑顔でこちらをじっと見つめてきた。
いや、だからそのご尊顔……反則なのでやめていただきたい。
あー、絶対赤面してるわ私。恥ずかしいからやめてほしいわ。
「ソフィア嬢。私は君が気に入ったのだ。婚約者になってもらえないだろうか? ソフィア嬢も私のことは好き……だよな?」
「……え?」
突然の言葉に私は固まってしまったわ。
エドガー王子が私を気に入った?? そして、ワタシガオウジノコトヲスキ?? ナニソレオイシイノ?
うーん、顔は好みだけど
あと中身もよく知らないし……。
好きとは違うような? 顔は好みとは違ったけれど、何回か話したカイル様の方が好きだわ! って言ったら怖いことになりそうよね……どうしましょ。
「ええと……顔は好きです」
混乱しすぎて、すごく失礼なことを言ってしまったわ。
「えっ? 顔だけ??」
「え、ええと……殿下に嘘はつきたくないので正直に申しますと……とても言いにくいのですが……私は騎士団長達のようなゴツイ
ガタッガタッと後方から音がしたけれど、それよりもエドガー王子の反応が気になるから、振り向かずに正面を見据えた。
エドガー王子が呆然としてるわ……やはり言わなかった方が良かったかしら。
「ごほんっ。ええと、顔だけとはいえ好意はある、ということかな?」
「そう……ですね?」
「なぜ疑問形なのだ……」
「ええと、好みの顔ですが、性格など内面は知りませんし……いちばん重要な
「お、お嬢様っっ!!」
いついかなる時も、黙って控えている侍女の鏡のミアが、思わずといった感じで叫んだ。
しまった! 混乱して思わず本音がだだ漏れたわ。
「た、たた大変失礼致しました! おお嬢様は、ききっと、こ混乱して、いらっしゃるのです!」
ミアも混乱してるわね。言動がおかしいわ。
「……そのようだな………」
やってもたー。
とりあえず、ミアが止めてくれたので落ち着こう……すーはーすーはー。
「とりあえず落ち着いてから、時間をおいて、再度話をすれば良いのではないでしょうか?」
カイル様ナイス
「「「そうしましょう。そうしましょう」」」
ミアと、王子付きの護衛と、側近の方々が声を揃えてそう言ったので、逃げるように控室へ戻った。
――――――控室――――――
「混乱している所申し訳ないのですが、お嬢様はエドガー王子との婚約は、考えられないということなのでしょうか?」
部屋に入るなり、ミアにそう言われた。
そして何故か、カイル様も一緒に控室に来ている。一応護衛として&何度か話した間柄ということで、私の意見を聞くために来たようだ。
「ええと、王命なら従うしかないと思うけれど………」
カイル様が居るから、カイル様と結婚したいの! とは言えないわ……と思いながらカイル様を見る。
「あれは王命ではないです。が、エドガー王子はとてもソフィア嬢を気に入ったようなので、ちゃんとした理由がなければ、断るのは難しいかと思います」
うぅ、カイル様にそう言われると傷つくなぁ。“断らず受け入れろ”と言われてるみたいだわ。ショボーンだわ。
カイル様を諦めるしかないのかしら……。
「ソフィア嬢は、エドガー王子との婚約が嫌なのですか??」
「えっ?」
「いえ、表情が悲しそうなので」
カイル様のせいよ! とは言えずうつむく。
「……心に決めたお相手がいるのですか?」
「ええっ!?」
まさか、ここに来ているのに(現代で言うとお見合いとかの場よね)、そんなことを聞かれるとは思わなかったので、思わず過剰反応してしまったわ。
「えええっ! おっおお嬢様にそそそのような方が?!?!?!?!」
ミア、今日は混乱しすぎ。
「そうではない……では何故でしょうか?」
ちょっとだけカイル様が意地悪に思えてきたわ……そりゃーこんな短時間で、カイル様に好意を持ってしまったとか、本人からしたら知らんがなって話だけれど。
「先ほどもお話ししましたが、私は騎士団長達のようなゴツイ
ゴツイ体躯と騎士団長のワードでカイル様に伝わったかしら??
「……レオか」
ボソっとカイル様がつぶやいた。
「とりあえず、エドガー王子には即答はやめておいて、『気持ちを落ち着かせたいので時間をください』と伝えればいいと思います。ええと、ソフィア嬢が気になる好みの奴のことは、頑張ってみてもいいとは思いますが……色々気を付けた方がいいと思います」
あれ? なんか勘違いしてる? レオ様じゃないわよ! 好みの奴ってあなたよ! あ・な・た!!
まぁいいわ、レオ様のことを気に入ってると思われたという事は、それを理由にここへ来ても問題ないってことよね!(変な前向き)こうなったら毎日でも来てやるわ!!!
って、でも『エドガー王子への気持ちがわからないから落ち着きたいので時間が欲しい』とか言いながら王城へ来たらおかしいのではないかしら? どうしましょう困ったわ。
「頑張ってもいいのなら、逢いに来てもいいのでしょうか?でも王城に来るのは……」
「あぁ、そうか、うーん。騎士の宿舎………は危なっかしいなぁ。あっ騎士団長だけで定期的に情報交換している場所があるんですが、そこへ来ますか?」
なっなんですって! そりゃ好都合!! 『レオ様と二人きりで会える場所がある』とか言われたら困るところだったけれど、カイル様もいるなら行くしかないわよね!! でも私がそんなとこへ行ってもいいのかしら?
「そんな重要そうな集まりに、私が行ってもいいのでしょうか?」
「終わる頃合いの時間を教えるから、大丈夫ですよ」
「では、よろしくお願いします! そしてエドガー王子のことは、放……時間をもらうという方向で」
ちょっと王子のことを放置しかけて危なかったわ。
でも仕方ないわ! 私の幸せの為だもの! この世は自分の為にあるんだから! ということで、騎士団長の集まりの場所と時間を聞いてからエドガー王子の元へれっつらごーよ!
――――――謁見室――――――
「殿下、ソフィア様がいらっしゃいました」
「通してくれ」
側近に促され謁見室に再入場。
「先ほどは、申し訳ございませんでした」
と、エドガー王子に謝罪。
先ほど聞いた騎士団長の集合の日は明日なので、早く明日になって騎士団長達の集まりに、行きたい行きたい行きt……いかん、今は違う、落ち着け私。
「いや、こちらも突然で悪かった。本当は、もっとちゃんと準備をしてから言う事だと、側近たちにも怒られた」
あらら怒られたのね。
周りの人も、いきなり言うとは思ってなかったんだろうなぁ。
そりゃー婚約者決めるのに、突然本人に言うなんて、親しい仲でもない限り無いわよね。
本当だったら、さっきの謁見室での会話で、それとなーく匂わせつつ、帰ってから親に打診するのよね。
あんまりよくわからないけれど、多分そんな感じのはずよ。
「なので、先ほどの事は、一旦忘れてほしい、のだが……」
歯切れの悪いエドガー王子の言葉に、周りの側近と護衛達が苦笑い。
さっきの『婚約者になって欲しい』の発言を忘れてほしいと言われて、こちらから言わなくてよかったことに安心したものの、何が言いたいのかしら。
「できれば……その、今後も会ってほしいのだが……」
「へっ?」
ちょっと意味がわからなかったので、間の抜けた返事をしてしまったら、側近の方が補足してくれた。
「殿下は言葉が足りませんな。ソフィア様、先ほどの、婚約者になって欲しいという言葉は、とりあえず忘れてもらってもいいのですが、お二人共がお互い知らないことばかりですし、お互いを知る為にも、今後も王城へ来てもらっても良いでしょうか?」
無効ではなく保留か……失礼なことを言ったのにも関わらず、エドガー王子は私に好意を持ってくれているのね。
あ"ーっ、でもカイル様の
「ええと……筋肉も育て…………いえ、何でもないです。わかりました」
側近の目がちょっと怖かった……また失言しそうになって危なかったわ。
騎士団長達と会う日に会ったら丁度良いかしら。なんせ片道3時間だしね、等と考えている間に次の日程が決められ(勿論明日)話は終わった。
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