第8話 この感情は…
※ソフィア視点に戻ります。
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
「ソ〜フィアちゃんっ♪ 護衛がてら王城まで送っていこうか〜?」
話しが終わり、次は3日後に集まるということで、その日も来ます! と伝え、王子の元へ行こうとしたらレオ様が聞いてきた。
「いいえ、レオ様のご好意はありがたいのですが、我が領地よりしっかり護衛はつけているので大丈夫です。それに、王城まではすぐそこですし、送っていただかなくても大丈夫です」
私が返事をする間もなくミアが言い放った。
ミアがいつもと違ってとても冷たいのだけれど、一介の侍女がそんな態度を……と思ったけれど、そう言えばこの世界は、そこまで身分にこだわらないというか、結構ゆるいのよね。
普段ミアが、私との上下関係をキッチリしているから忘れがちだけれど。
「ミアちゃんはソフィアちゃんの親猫みたいだね〜そんなに威嚇しなくても、取って食ったりしないよ〜♪」
レオ様も……なんていうか軽いわね。
それにミアの名前をなぜ知っているのかしら? 会話に出てたかしら?
「レオ、しつこいと嫌われるぞ。なぁカイル」
「そうですね、3日後にまたあえるんだからレオ、諦めて下さい。ソフィア嬢、王城まではすぐそこですが、道中お気をつけて」
うぅ、カイル様はついて来て欲しいよー離れたくないよー。
でも、また3日後に逢えるという約束は取れたから、レオ様じゃないけれどしつこいのは駄目よね……今日はここで諦めるわ。
「ありがとうございます。ではまた3日後にお会いしましょう」
そう挨拶をして王城へ向かった。足並みは重くてトボトボ……だわ。
――――――王城――――――
「ようこそおいでくださいました、エドガー王子がお待ちです、護衛の方も一緒にこちらへどうぞ」
あ、細マッチョ警備騎士さんだ。この人王城の内門が担当なのかなー? まぁ優しそうな爽やかイケメンだから案内に向いてそうね。
なんて、どうでもいいことを考えながら案内された部屋へ入る。
「案内ご苦労でした。ソフィア嬢はこちらへ。侍女と護衛の方はそちらへどうぞ」
細マッチョ警備騎士さんから、側近の方に引き継がれ部屋へ案内された。
「よく来てくれた。とりあえず座ってくれ」
「はい、では失礼致します」
「ソフィア嬢、先日のことなのだが、騎士団長達のようなゴツい身体が好きと言っていたのは本心なのだろうか?」
いきなり核心から来たわね。
「はい」
「そうか。それ以外の好みとか……いや、すまない何でもない……。そういえば、その騎士団長達から聞いたのだが、ソフィア嬢は領地の経営に関心があるんだな。どこで勉強をしたのだろうか? お茶会でも他の令嬢に比べて答えが現実的というか、普通に日々を過ごしていたら出てこない答えだと感心したのだ」
えっ何それ? 経営には興味も関心もないし……筋肉を見るための訓練場の見学の理由と、見学した時にカイル様やレオ様とした会話のせいかしら?
あっ、今日騎士団長達と集まった理由もカイル様から聞いたのかしら? とりあえず、話が大きくなりすぎだわ。
お茶会では話半分で、カイル様へどうやって繋がりを取ろうか等と考え込んでいて、現代のちょっとだけ覚えてた記憶をポロッと披露しちゃったし……。
っていうか、質問が平民の識字率とか衛生面とか、そんなの令嬢にする質問じゃないじゃないの! って思いながらも、適当にそーいえば現代ではこんな感じだったかしら? の返しが良い答えになってしまってたのね。
「いえ、経営に関心があるわけではないのです」
「えっ? では何故そんなに色々知っているのに、さらに色々知ろうとしているのだろうか?」
えーと、訓練場の見学1度目は、良い
やだ! 私、筋肉を見たいだけじゃない!! って、わかりきった答えね。
でもそれを言ったら呆れられちゃうかしら? あ、でもそのほうが好都合かしら? きっと筋肉しか見てない令嬢なんて願い下げよね。
「ええと、とても言いにくいのですが、私王城へは私好みの
「えっ???」
『ガタガタッ』後ろからまた音がしたけれど、今は大事な所なので放置しましょう。
「あ、いえ、私この容姿ですし、きっと殿下に気に入られる事は皆無だと思っておりましたので、お茶会参加は丁度良い機会だと思い、王城の騎士団の方々の筋肉の様子を見に行っただけなのです」
「えっ? 筋肉の様子……? えっ?」
あら、また混乱させてしまったかしら?
「はい。まさかこの様な事になろうとは思ってもみなかったもので、つい領地の為と嘘を……」
「えぇー……」
後ろからミアのつぶやきが聞こえてきた……ごめんなさいミア。
エドガー王子よりも先にミアに愛想を尽かされそうだわ。
そしてエドガー王子がフリーズしてるわね。
「あの、殿下?」
「そこまでなのか……」
エドガー王子が何かつぶやいたけれど、声が小さいわ。
「えっ?」
「そこまで筋肉が好きなのか?!?!」
突然エドガー王子が壁ドンならぬソファドン……語呂が悪いわね。
ソファーに座っていた、私の肩の上あたりに手をついてきた。(元々そんなに離れていないソファー同士の対面で話していた)私の護衛達は、暴力とかではないし止めに入る様子はなく、王子の側近達は何故か可哀想な子を見る目でこちらを見ている。
そして当の私は……綺麗なお顔がめっちゃ近いし、あの穏やかなエドガー王子の突然の『俺様キャラ』っぽい行動に思わず胸がドキドキ……って、えっ? あれれ?? 私ドキドキしちゃってる??
「っ! すまない……」
エドガー王子が我に返ったのか、謝ってから身を引いた。流石に『ちょっと良い感じでした』とは言えず頷く私。
何だこの感情は……びっくりしただけかしら? まさか私が、筋肉以外にときめくなんて事は無いわよね。
「……ソフィア嬢はとても筋肉が好きなんだと理解した。そうか、わかった。うん、わかった。よし、わかった」
エドガー王子がブツブツと何か言い出した。ちょっと大丈夫かしら?
「……殿下?」
「1年……いや半年だ! 半年で私もゴリマッチョになる!! ゴリマッチョになればソフィア嬢の好きな候補に入れてもらえるだろうか?」
「え……?」
突然何を言い出すんだこの人は? 勿の論で大歓迎だけれど。
でも、王子がそんな事をする暇があるのかしら? そして、さっきは一瞬俺様っぽかったけれど、基本穏やかな方だし好みとは……って、いや、待てよ、この顔でゴリマッチョとか凄い事になるのでは?! でも、カイル様への好意が今更消えてなくなるわけではないし、半年でゴリゴリに仕上げられるかどうかも……。
って何だかウダウダしてるわね、嫌だわ。
やってくれるならやってもらえばいいじゃない! 後のことは後で考えればいいわ!
「それは……そうですね。ゴリマッチョは大好きですし」
「とりあえず半年だけでいい、婚約者を作らず待っていてほしいのだが……」
えー、カイル様との接点をせっかく作ったのに、半年待てとか……。
でもまぁ、私のことだからカイル様と突然の急接近……なんてことは無いだろうし、待ってあげてもいいかな? ってとっても上から目線ね。
「はい。半年なら……」
「よし、今日からプロテインと筋トレだ!」
……ん? プロテイン? あっ、前世で筋肉を
それはそうと、エドガー王子がもしゴリマッチョになったら、後は中身だけってことになるわね。
カイル様は、訓練場で見た時と話した時、話し方は丁寧だけれどたまに俺様オーラが出ていたし、先程のレオ様やオリバー様の話からも俺様……というか、男らしい性格だと思うわ。お顔は好みの部類ではないけれどイケメン。
……そして、少しお話ししただけなのだけれど、気になって仕方がないのよね……筋肉は勿論だけれどそれだけではないのよ。
もっとお話したいとか、もっとこの人のことが知りたい! と思ったの。
この感情を恋と言うのかしら?? さっきのエドガー王子に対するドキドキもちょっと気になるけれど……。
しかし私は、前世で恋をしていなかったのかしら? これが恋なのか、ただ単に筋肉への憧れなのかがわからないわ。
せっかく転生したのに中途半端な記憶しかないなんて……。
知識にしてもそうよね、ふと思い出すことはあるけれど、詳細まではわからなかったりするし、残念だわ。
……記憶、記憶ねー、あぁ前世でのゴリマッチョの俳優さんとかの記憶とかが欲しかったわー。
母親が好きだったシュ〇ちゃんと、顔は置いといて筋肉推しのドウェ〇ン・ジョ〇ソン……って、あらやだ思い出してるじゃない! 良い筋肉!! 思い出したら思い出したわ!(言葉がおかしいわね)
っていけないわ、思考が迷子になってしまったわ。
ゴリマッチョ俳優さんはとりあえず置いておいて、恋よ恋。
私はカイル様に恋してるのかしら? もしそうだったら半年待つと言ってしまったのってダメなんじゃない? なんだかエドガー王子をキープしてるみたいな感じ? でも、当の本人がそうしたいって言ってるんだし……。
それに、カイル様とは進展があるわけでもない悲しい現実。
うーん、とりあえず半年は、カイル様にアタックしなければいいのかしら? でもその間にカイル様に良い人が出来てしまったら……。
あーーーーっっ駄目だわ! 私らしくなく後ろ向きになってる。
もういいわ! 半年待ってやるわ! そして約束もしてしまったから3日後の集まりには行くわ!!
とりあえずアタックはしないで……というかどうせできないし、3日後はカイル様だけではなくレオ様やオリバー様の筋肉も堪能してやるわ!!!
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