第3話 お茶会

「遅れてしまい、申し訳ありません」


 会場へ入るなり、そう挨拶をしたけれど、やっぱり少し遅れちゃったのかしら? 2つの席以外全てに令嬢が座っていたわ。

 でも、エドガー王子はまだ来ていなかったのでちょっと安心。


 テーブルは円形で、既に護衛騎士が待機している席はエドガー王子だから、とりあえず空いている席へ……って、あらやだ、この席ってエドガー王子から一番離れているけれど真正面じゃない……何でこんな席が空いてるのよ。

 他の令嬢達もやる気がないのかしら? 正面って嫌でも視界に入るじゃない。

 適当に周りと合わせて、空気になろうと思っていたのに……。


「少し待たせてしまったようで申し訳ない。皆、今日は来てくれてありがとう」


 座ったと同時に、エドガー王子が登場。

 タイミング良すぎだわ、全員がそろうのを待っていたのかしら? まぁいいわ。


 それにしても噂通りの誠実そうな王子様だわ。

 令嬢とはいえ私達は臣下なのだから、もう少し偉そぶるかと思ったけれど。


 そして、初めてお顔を拝見したけれど、(因みにここにはテレビとかは無いの。新聞みたいなものもあるけれど、写真がショボいのよ)めっっっちゃ好みだわ! カイル様の身体にエドガー王子の顔だったらパーフェクトだったのに。


 世の中そううまくはいかないものねって、バカなことを考えていたら、いつの間にか自己紹介が始まっていたわ。


「ソフィア・ジョーンズです。北の領地です。よろしくお願いいたします」


 他の令嬢が趣味やら特技やらを混ぜた自己紹介をしていく中、私は何も思い付かなかったので簡単な自己紹介をした。


 令嬢達とエドガー王子、更には護衛騎士までもがちょっと驚いてる。

 何故かしら? 別に趣味やら特技やらが無いわけではないけれど、別に話さなくてもいいんじゃないの? もう騎士達の筋肉も見たし、エドガー王子も顔以外どーでもいいから早く帰りたいし。

 それに、どうせ向こうもナイスバディで美人な私なんて見向きもしないでしょうし……。(転生前の世界で言ったら殴られそうな発言だわ)


 そして、結局理想は理想で現実を見ろってことよね。

 筋肉か顔かどちらかを選べって言うなら勿論筋肉だわ!! カイル様の情報を集めて、どうにか王城へ来れるよう根回ししてアタックあるのみ!! あの筋肉以上の持ち主なんてきっと存在しないわ!


 なんて事を考えつつ、周りの驚きを放置したまま着席して、美味しそうなお茶とお菓子をいただいた 。

 あらやだホントに美味しい♪


 ――――はっ! 美味しさのあまり、つい夢中で飲んで食べてしまったわ。


 カイル様と結婚して王都へ引っ越してきたら、こんな美味しいお茶とお菓子がすぐ買えるのかしら。

 ほんとに頑張らないと……気に入られるにはどうしたらいいかしら?


「ソフィア嬢はどう思う?」


 カイル様へのアプローチな脳内会議をしていたら、突然エドガー王子に話しかけられてビックリしたわ。

 何の話だったかしら? 確か平民の識字率が低いから、どうすべきかとかだったかしら。


 前世の日本では普通に学校があるからこういう問題は無いのよね。

 学校作れば良いじゃんって事だけど、そんなの簡単にはできないもの。

 予算やら周りの理解やら……それに平民は小さな頃から家の手伝い等で働いているから難しい問題だわ。

 何故そんな問題を私たちに聞くのかしら?


「ん-、難しい質問ですね。とりあえず文字の一覧表を作って覚えていくしかないのではないでしょうか?」


「文字の一覧表? 一覧表を作るのはいいが、それを誰が教えるのだろうか?」


 あ、しまった……現代のあいうえお表をふと思い出して発言してしまったけれど、あれって読める人が居ないと無用の長物だわ。

 えーと、この世界では人が集まる所ってどこかあったかしら?


「集会所や教会で、毎日ではなくとも文字を読める人を派遣して教える……等でしょうか。すみません、発言したものの活用方法が思い浮かびません」


「いや、検討するに値する発言をありがとう」


 エドガー王子は笑顔でそう言った。


 ぐはぁっ! そのご尊顔でその笑顔、心臓に負担がかかりますっっ!!!

 興味はなくとも、さすがに好みドストライクの顔の笑顔が私に向けられると恥ずかしいわっっ! やめてー!!

 胸中で叫びながら赤面して目をそらしてしまったわ。


 いかんいかん、ちょっとカイル様の身体きんにくを鑑賞して落ち着こう……あぁ、ほんとに良い筋肉……。


 ふう、落ち着いてきたわ。

 私は王子の後ろに立つカイル様(の筋肉)を見つめながら、また美味しいお茶とおやつをいただく。


 そして、他の令嬢と同じく何度かの質問を無難に返し、返すたびに出る王子の笑顔に赤面し、落ち着くためにカイル様を鑑賞の繰り返しをしているうちにお茶会は終了した。


「有意義な時間だった。皆今日は来てくれてありがとう。また話したいと思った令嬢には後ほど連絡する。それまでは城でゆっくりと過ごしてほしい」


 ん? 城で過ごす? すぐ帰れないの? 家まで3時間もかかるから遅くなったら面倒なのよね、どうせ呼ばれないんだし……。

 あっでもカイル様には帰る前にもう一度会えたらいいなぁ……連絡先知りたいし。

 と思いながらミアと先ほどの控え室へ戻る。


「お嬢様、先ほど城の使いの物が来まして、連絡までにはそれなりに時間がかかるので、別塔の周辺であれば散策をしてもよいとのことでしたが、いかがなされますか?」


 手持無沙汰に備え付けの本などを読んでいた私にミアが言った。


 別塔ですって!! 訓練場もそちらにあるじゃない!! 帰る前にもう一度筋肉の補充をっ! でもさっき行ったばかりだし、さすがにあれかしら。

 あっ、でも外へ行ったら鍛錬終わりの騎士達に会えたりするかしら? とりあえず部屋にいるのは暇だし外に出よっと。


「そうね、ちょっと暇だったし王城にも滅多に来ることが出来ないし、お言葉に甘えさせて頂こうかしら」


 騎士達に逢えたらいいな~ルンルン♪

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