第2話 王城

 そして私は、お茶会に向けて……特に何もすることはなく、多分、他所様よそさまのご令嬢れいじょうは王子様のハートを射止めるべく、会話のお勉強やら美容やらなんやかんやと頑張っていたのだろうけれど、両親も私の気持ちに任せるという事で何もうるさく言うこともなく、王子様なんぞどうでも良い私はマッチョな騎士達を見る為だけ……げふんげふん。


 まぁ、そんな感じで日々が過ぎついにお茶会当日となったのである。


「ふんふふ~ん♪」


 もしかしたら、理想の旦那様がいるかもしれないと私の心はウキウキルンルンで、鼻歌を歌いながら支度をしていた。


「お嬢様上機嫌ですね。やはり、エドガー王子に会えるのが嬉しいですか?」


 私の専属侍女のミアが、着替え中に話しかけてきた。


 エドガー王子は、巷ではとても×∞人気があるので、ミアは私もそうだと思ったのだろう。

 そう、私の理想は周りには内緒なのである。

 昔それとなく相談してみたら、熱でもあるのかと心配されたのだ。


 何故そんなにゴリマッチョがダメなのかよくわからない。

 まぁ、まだあの頃は5歳だったし、幼女がいきなりゴリマッチョ大好きとか言ったら、熱があると思われても仕方ないか。


 しかし、それ以来なんとなく他の人に相談が出来なくなってしまったのである。


「そ、そうね、エドガー王子に会えるのも楽しみだけれど、王城へ行けるのが嬉しいの」


 半分本当で半分嘘な返事をしつつ、支度が終わり馬車に乗り込む。


 お茶会には、招待されている私と専属の侍女1名だけが参加を許されているので、ミア&城までの護衛を連れて馬車に乗りいざ王城へ、れっつらごーごー!


「お嬢様、緊張なさってませんか?」


「大丈夫よ」


「それは良かったです。ところで聞いたところによると、今回のお茶会ですが3つのグループに分けられて3日間開催するそうですよ」


「まぁ、そうなのね。全員が集まったら殿下も大変だわ。分けた方がいいのかもしれないわね」


 確か14歳~18歳の婚約してないご令嬢は人数的には20人ぐらいだったはずだから、7人ぐらいか……思ったより少ないわね。

 途中で行方をくらませて、こっそり騎士達の訓練場の見学とかはできなさそうね……。

 となると、お茶会が始まる前に見学するしかないわ!

 支度が早かったおかげで早く着きそうだし、ミアを言い含めて見学しちゃおーっと♪


 そんなこんなでミアと雑談をしていたら、お城までは3時間ほどかかるはずなのに、いつの間にか着いてしまったわ。



――――――王城到着――――――



 さて、まずは訓練場を探し――――


「ソフィア・ジョーンズ様そちらではありませんよ」


 王城の警備騎士が声をかけてきた。そうだった王城内を自由に歩けるのは王族と関係者のみって当たり前やーん私のアホー。


 警備な騎士様(細マッチョだわ……残念)に、お茶会の控え室まで案内されそうになったが、そうは問屋がおろさない! なんとか理由をつけて、もしかしたら居るかもしれないゴリマッチョな騎士達を見学するのよー!


「騎士様、お願いがあるのです。実はわたくしの領地は平和なので訓練場が無いのですが、この平和がずっと続くのか、このままでよいのかが心配なのです。なので領地に訓練場をつくりたいのですが、国の最高峰である王城の訓練場を見て、領主であるお父様に報告をしたいのです。お茶会までの時間に見学をさせて貰っても良いでしょうか?」


 素晴らしい理由を思い付いたわ私! うちの領地は本当に訓練場がないのよ!

 ……まぁちっちゃいグラウンド? みたいなのはあるのだけれど、あれは訓練場ではないし、嘘ではないわよね!

 さぁ細マッチョ警備騎士! これは断れないでしょう! ドヤァ!


 いけないいけない、何か変なテンションになってしまったわ。表情には出てないわよね。


「すみませんが、私の一存では決めかねますので、エドガー王子と騎士団長に確認します。それまで控え室でお待ち下さい」


 ちっ、一筋縄ではいかなかったか。

 てか騎士団長はわかるけれど、王子にも聞くのね? まぁ仕方ない、大人しく控え室で待つことにするわ……。


「お嬢様はそんなことを考えていたのですね。素晴らしいです!」


 控え室に着くなりミアがそう言った。さっきの発言がミアの琴線に触れたのかしら……。


「一応ね。うちの領地は平和ボケしてるからちょっと心配だったのよ」


 これは本当である。

 細マッチョな騎士だけでいざという時どうするんだ! まじで!!


「そうだったのですね! お嬢様のような聡明な方があるじで、本当に良かったです」


 聡明だなんてそんな(照)ちょっとミアってば、たまに私の事を凄い人扱いする癖があるからやめてほしいわ。


 そしてお茶会の前だけれど、ミアにお茶を煎れて貰いながら待つこと数分………。

 先程の細マッチョ警備騎士(もはや名称)がやってきた。


「ソフィア・ジョーンズ様。許可が出ましたので訓練場までご案内致します」


 よっしゃキターーー!!


「有り難うございます。案内をよろしくお願いしますね」


 歓喜の叫びと跳び跳ねそうになる身体を堪えて、なるべくおしとやかに返事をした。

 よくやった私。



――――――訓練場到着――――――



「こちらが訓練場です。今は第一部隊が訓練中で騎士団長はあちらです」


 細マッチョ警備騎士がそう言った。

 が、私は、目の前の光景がまぶしすぎて、すぐに反応できなかった……目がー目がー。

 何故ならば………そう、思ったよりも、マッチョが多かったのよ! 嬉しい誤算! でも、まぁ理想のゴリマッチョまでは居ないようで少し残念だわ。

 もう少し肉厚なのがいいのよ、ほんと惜しいわ!! でも、眼福眼福♪


「お嬢様?」


 いけないわ、ついつい騎士達の身体きんにくに見惚れてしまいミアに不思議な顔で見られてしまったわ。なるべく慌てず優雅に……。


「騎士様、ありがとうございました」


「いえ、控え室に戻るときは騎士団長に話していただければ……私ではなく他の者になりますが、ちゃんと案内しますので。では、お茶会の時間までゆっくり見学して下さい」


「ええ、ゆっくり見学させていただきます(筋肉を! キリッ)」


 そう言って、細マッチョ警備騎士(名前聞いとくべきだったかしら)は来た道を戻っていった。

 さて、とりあえず騎士団長に挨拶をっと、


「……!!!」


 そこに理想が居た……。そう念願のゴリマッチョが!! ただし、お顔がちょっと理想とは違うけれど、まぁそれは置いておいて、とりあえず身体きんにくはバッチリ! ゴリゴリだー♪ 立派な体躯に、髪は濃い茶で瞳は淡い緑かしら? 身長もたっかーい! 200cm近くありそうー! わーい♪ わーい♪ ……って落ち着け私、心の中で深呼吸だ……すーはー。すーはー。よし! とりあえず騎士団長にお話を……って、何を話したら良いのかしら? やっぱり訓練の内容かしら? でもそれよりも、趣味とか好きな物が知りたいわ。あっ、でもミアがいるから無理よね。お名前だけでも聞いておいて後程……なんて、簡単に会えるわけないわよね。まぁ、私の中での未来の旦那様候補ということで、とりあえず今は目を癒しておこうかしら。目の保養、目の保養。(脳内3秒)


 優雅に歩きながら脳内会議を済ませた私は騎士団長の元へと向かった。


「初めまして騎士団長様。ソフィア・ジョーンズと申します」


「初めましてソフィア嬢。第一騎士団長のカイル・ブラウンです。以後お見知りおきを」


 うひゃ~良い声だわ! 低音ボイス! 何だか胸がきゅんってしてしまったわ。


 本当にあと顔が好みだったらパーフェクトだったのに残念すぎるわ……。

 あっ不細工ってわけじゃないのよ、カイル様も凄く格好良いのだけれど……少し好みとは違うのよ。


 とりあえず訓練のことを聞いておこうかしら。

 勿論、筋肉をしっかり見ながらね!


 そして、目の保養……もとい訓練についての質問&見学の時間はあっという間に過ぎ、お茶会の時間となった。


 あっ、勿の論でカイル様に控え室まで送って貰ったわ。騎士団長を選ぶなんて! と周りがびっくりしていたけれど何故かしら?


 そしてついつい、カイル様に色々話しかけすぎて時間が押してしまったみたいだわ。

 控室についたとたん、ミアが慌てて用意をしてくれた。


「お嬢様、少し遅れておりますので急ぎましょう」


「ごめんなさいミア。楽しくて話しすぎたわ」


「いえ、分かっていたのにお止めしなかったので、お嬢様が謝ることではないです。私の不手際です、申し訳ありませんでした」


「もう、ミアはいつもそんな感じで謝らせてくれないのね」


「お嬢様に謝らせるなんて畏れ多いですよ。さぁ急ぎましょう」


 それにしても、自らお茶会場へ行くのね? 普通は時間が来たら、誰かが控え室から会場へ案内してくれるものだけれど?

 まぁ、控え室から会場までは一本道なので、道を間違えようはないけれど……って、疑問は置いておいて、とりあえず急ぎましょう。

 でも勿論走ったりはしないわよ淑女だもの。

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