17章 にくきかたきを打ち倒せ
アルベルトを探して
「主(あるじ)! わらわを同行者に選んでいただき、感謝いたす!」
出発の日。
私は、12隊の中でもごく少数の仲間を連れて出発することになった。
身を隠しながら敵の懐に潜り込み、速やかに目的を達成する。今回の戦いは、そんな争いになる。人数よりも連携の取れる少数精鋭で作戦に当たる方が、成功率も高いだろう。
「ライラ、無謀な作戦に突き合わせてごめんね」
「主のためなら、この命も惜しくないのじゃ!」
「まったく。冗談でもそんなことは言わないでね……」
私は小さくため息をつく。
「でも気持ちは分かります。私もアリシア様が捕らえられたと聞いたときは、何がなんでも助けたいと思いましたから」
「リリアナまで――」
その言葉は、なんの誇張もない真実であった。
なんせ公開処刑の当日、王国最大の警戒態勢の中、特務隊の面々は私の救出作戦を決行しようとしてしまったのだから。
本当に、誰も彼も、自分の命を何だと思っているのだろう。
「まったく、ライラもリリアナも、アルベルトも。戻ったらまとめてお説教ですよ」
そんなやり取りを経て。
私は、リリアナ、フローラ、ユーリ、ライラの12隊の代表格を連れてニルヴァーナの砦に出発するのだった。
***
ニルヴァーナ砦は、イルミナらと戦ったブリリアント要塞都市の先になるヴァイス王国の防衛拠点となっている砦であった。
ブリリアントを落とした今、次の攻略目標になっている砦でもある。王都を守るように位置する山岳地帯を攻略する足がかりとして、非常に重要な役割を持っている砦であった。
今や、王国兵の士気は限りなく低い。
シュテイン王子きっての"聖戦"は一向に終わりが見えず、それどころか最近は負け戦続きであることもジャーナリスト集団により暴かれているからだ。
「リリアナ。いっそ、ニルヴァーナを攻め落とせますかね?」
「冗談はよして下さい。戦力差がありすぎます」
「まあ、そうですよね……」
いくらなんでも兵力に差がありすぎる。
ただでさえ追い込まれた王国軍は、残った戦力をニルヴァーナにかき集めている。最新型の戦略級魔道具も、山ほど配備されているだろう。
真正面から進めば、確保撃破されてそれで終わりだ。
あくまで今回の目的は、アルベルトの奪還。
せめて、内部の様子だけでも分かれば良いのだけど。
「偵察専門の部隊に力を借りましょうか……」
「いや、さすがに撃ち落とされて終わりかと――」
「なら……、隠匿魔法を重ねがけして、どこまで近づけるか試してみますか?」
「だから発見された時点でおしまいですって」
良い策は浮かばず。
いっそアルベルトが、まだ王国兵と合流していなければ良いな……、などと思いつつ。それはきっと都合の良い期待に過ぎず……。
「ひとまずブリリアントに向かいましょうか」
そう結論を出し、私たちはブリリアントの要塞都市に向かうのだった。
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