第3話
バスの座席に腰を下ろし、スマートフォンで執筆する。バスが揺れるたびに胃の中で納豆がシェイクされている感じがして、気持ち悪い。いつものことだ。
小説を書くようになって、15年が経つ。人生の半分を小説に費やしているようなものだ。
きっかけは、高校の授業が退屈だったこと。授業中に妄想に耽り、休み時間に携帯電話に文章を打ち込む。画面を覗かれそうになったら、慌てて携帯電話を閉じる。二つ折りのを、パカッと。そのせいか、携帯電話の劣化が早かった。
頭の中に物語が生まれれば、すぐに書き出して物語を排出する。するとすぐに別の物語が頭の中に生まれ、アウトプットする。頭の中に物語が存在することが気持ち悪かった。
物語を全て頭の中から排出したら、小説を書くことをやめよう。そう思い続けて、15年が経ってしまった。物語はどんどん頭の中に生まれ、小説という形で排出する作業が間に合わない。
せっかくだから作品を公募に出してみよう、と思ったのが、昨年。昨日、見事に落ちたのだけど。
小説を書いていることは、誰にも話していない。高校の文芸部員が、文芸部というだけでいじめに遭い、自殺未遂から退学したことがあったから。そんなリスクを冒してまで話すことはないと思った。
SNSで物書きさんと交流するようになり、彼らが本当に小説を書くことが好きなのだと知った。
私は、どうなのだろう。小説を書くことが本当に好きなのだろうか。
好きでないから、心から選考通過「おめでとう」が言えないのだろうか。
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