第14話 金縛り

 これは私が能登半島地震を経験し、無事に自宅に戻ってこれた翌日の話(実話)です。


 珠洲で被災し、2日間の避難所生活の後金沢へ向けて家族と出発。地割れで通れない道ばかりの中、夫が懸命に通れる道を探して運転してくれました。

 コンタクトを外して何も見えない状態で車に揺られていたので、大きく地割れた道や潰れた家屋といった恐ろしい光景というのは鮮明に見ずに済みました。

 12時間以上かけて珠洲から金沢へ帰宅。帰ってこれた時は今までのことが夢だったんじゃないかと思いました。

 自宅に入ると地震の痕跡があり、置物が倒れていたり塗り壁が一部剥がれていたりしていました。


 帰ってきた当日は興奮状態だったこともあり眠ることができませんでしたが、次の日は今までの疲れもあって眠ることができました。


 眠りについてしばらくのことです。

 眠りが浅くなり一度目を開けようとしたのですが、遠くから複数の子供がワイワイはしゃいでいるような声が聞こえてきました。

 あ、ヤバい。そう思った瞬間、ぐあっと体に重力を感じました。

 いつもは静かに待っていれば自然と解けるのですが、この時は何者かが耳元で甲高い声で話しかけてきました。


「#ィダ$P+&LHㇱ…」


 何を言っているのかわかりませんが、確実に誰かの意思で金縛りになっているのだと思いました。

 こういう時は「自分には何もできない」と伝えるのが良いと聞いていたのでそう心のなかで話しかけたのですが、返答は変わらず。


「#ィダ$P+&LHㇱ…」


 もうこうなったらお経を唱えようと思い、心のなかで「南無阿弥陀仏」と繰り返し唱えました。

 すると反抗するように一瞬重力が強くなり、それでも唱え続けると少しずつ声と重みが遠のいていきました。


 あぁ、良かった。そう思って眠りに付いたのですが、またしばらくして耳元で声が。しかもさっきより大きめの声で話しかけてきました。


「#ィダ$P+&LHㇱオ」


 もう一度同じように「南無阿弥陀仏」を唱えると今度は割りと早く引いていきました。


 印象深い金縛りだったので朝になっても覚えていたのですが、今考えるとなんだかあの声が逆再生に聞こえたのです。

 以前「逆再生」というお話を書かせていただきましたが、本当にあんな感じで聞こえたんですよね。

それで記憶を頼りに言葉を逆にしてみると、「おかしちょうだい」と言っているのではないかと。


 実は、私は毎夜キッチンに水とお菓子を供える習慣がありました。

 何故かというと、娘がダイニングに男の子がいる、と居もしない人物のことを話すことがあったからです。

 成仏できなくて寂しい男の子が娘と友だちになりたくてうちにやってきたのかな?と思うと放っておくことができず、毎日簡単なお供えものをしていたんです。

 しかし地震でそれどころじゃなかった私は帰ってきてから2日間お供えを怠っていました。

 被災していたときのことも考えると5日間くらいお供えしてなかったことになります。

 もしかしたら、ずっとお供えものが無くて悲しかったのかもしれません。

 度々忘れることはあるのですが、できるだけお供えは続けていきたいと思っています。


 その後金縛りには遭っていません。お菓子の効き目があるのか、はたまた疲れとストレスで幻聴が聞こえただけなのかわかりません。

地震による精神的な影響は少なからずあると思います。

実話なのでまとまりがないですが、ちょっと怖いことが起こったよって話です。

今日も生きていることに感謝したいです。

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本当かどうかわからない怖い話 とりすけ @torisuke

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