第3話 夢

 後半にややグロテスクな表現があります。苦手な方はご注意ください。







 繰り返し見る夢がある。

 電源の入っていないテレビを、1人で座って見つめている夢だ。


 夢に続きなどはない。ただ真っ黒なモニターを見つめて、朝目覚める。そんなヘンテコな夢を何日かに1回のペースで見る。


 特に怖くもなんともないので、「あぁ、またこの夢か」と思うだけで後は目覚めるまで時間をやり過ごす。

 夢の中ではモニター以外に見ることは出来ず、不思議な力で体と眼球を固定されていた。だからほかの景色を見て気晴らしをすることも叶わず、ただただモニターを見るしかなかった。


(そもそも何故電源が入っていないのだろう。)


 そんな素朴な疑問が頭に浮かぶ。せめて何か番組なりアニメなり流れていれば楽しいのに。

 そう思っていると、僕の思考を読み取ってか僕の思考がそうさせるのか分からないが、突然テレビの電源がついた。


ヴンッ


 電源が入る音がして、幾何学模様なものが映し出される。

 芸術に疎い僕は、その映し出される映像を楽しいとは思えなかった。


「はぁ。」


 確かに変化はあったが、つまらないことには変わりなかった。

(また目覚めまでやり過ごさないといけないのか。)


 幾何学模様はずっと同じものが映し出され、動くこともなかった。

 長時間見ていると目がチカチカしてきて気分が悪いのだが、眼球が動かせないので見つめるしかない。


(早く終わってくれ…吐きそうだ。)


 そう思っていると、突然目が覚めた。目の前は真っ暗で、何故か自分がギリギリ入れるだけの木箱に入れられているようだった。


「…?」


 首を動かすと、菊の花など白い花が沢山敷き詰められていた。

 状況が読めないまま、寝転んだままキョロキョロしているうちに段々焦げ臭いにおいがしてきた。そして耐えられない暑さに包まれる。


(まさか!!)


 ここでようやく理解した。

 僕は、以前交通事故に遭ったことがある。自分では回復し、社会復帰していたと思い込んでいたが、それすらも夢だったのだろう。

 僕は夢の中で目を覚まし、そしてまた夢の中で夢を見続けていたのだ。

 長い間植物状態になっていた僕を、家族は不憫に思って生命維持装置を外し、現在では火葬しようと火をつけたとこなのだろう。


「嫌だ!死んでない!!開けてくれ!!!!

嫌だァ!!!!!」



 必死に足で棺桶を蹴るが、炎で脆くなった木の板がボロボロと崩れてしまった。それだけに収まらず、そこから勢いよく熱風と炎が這い上がってくる。


「嫌だ!折角目覚めたのに!!死にたくない!!!嫌だァァ!!!」


  断末魔は分厚い鉄扉によって遮断され、僕は意識が戻ったことを誰にも知られることなく生きたまま焼かれ、灰になった。

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