傍えの民

いちのせ

序章

「なんでだよ・・・なんで見つからないんだ・・・」


(それが俺の全てなのに。他の誰もが見つけているのに・・・。)

「どこにいるんだよ・・・お願いだから出てきてくれよ・・・」

(貴方と出逢う事が俺の存在意義なのに)


かたえの民』

 それは、精霊などと同じく人間ではない。人の形をしているが、傍えの民という名の生物である。

 人間と比べ極めて高い能力を持つその種族は、しかし単独で生涯生きる事は出来ず、必ず『かたえ』と呼ぶパートナーのような人間を持つ。

『傍えの民の魂は傍えの人間と己の二つが揃ってはじめて完全になる』という生態のため、『傍え』という名を持つのだった。

 彼らは、生涯において必ず一人だけ『傍え』というパートナーを持ち、傍えのために生き、そして死ぬ。傍えに選ばれた者は神知の力を得るとも伝えられている。

 かつて全ての運に見放され、路上の隅で朽ち果てようとしていた乞食を、とある傍えの民が傍えに選んだ。のちに大国セニアの建国者となった乞食、セモ・ガランの傍らには、建国に尽力した美貌の傍えの民が控えていたという。

 

 その伝説と共に、傍えの民の名は今も一部の人間の間で語り継がれている。


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