第2話 令嬢から王子へクラスアップした件
転生して○○日目
両親から美人になったなと言われ、縁談を持ち掛けられた。
世辞ではない。
これはある種の、合言葉に近い。
小さな村の貧乏領主の娘である俺は、正確に言えばこの家の娘ではない。
血はつながっているが、そう。中身が違うのだ。
両親は俺の話を世迷言や、頭の病気なのだろうと誤解をしては、金を集めるためにこうして縁談話を持ち掛けてくる。
俺は養ってもらった感謝を込めて、その縁談相手と会うことにした。
嘘だ。
ただやりたいだけだ。どんな物を持っているか気になった俺は、少しばかり金と領土を持った地位をひけらかし、いけ好かない男に合った。
さて今回は、確か王子だったな。
これはひどい……前世で出会った骸骨のように、頬のこけた覇気のない王子だ。何かの病に侵されているのだろうか。
聞けば、女漁りに夢中になり、毒にかかったらしい。かわいそうに。病に侵されても性欲は落ちていないのか、彼は宝石や干し肉、収穫したばかりの小麦などを餌に、俺と死ぬ時まで付き合ってほしいと言ってきた。
相変わらず俺の美貌はどんな男たちにも通じ、病で体ががりがりの王子、長いからホネオと書こう。ホネオはしょぼい体を纏っていた、厳かなマントを脱いだ。おお、あばら骨が浮き出ていて食べるところがなさそうなのに、下半身のそれは立派じゃないか。病気でグロテスクになったキノコは、毒キノコらしい耽美な見た目で俺を誘っていた。
何?まずはキス? 面倒なやつだ。俺は適当にそいつとキスをし、早く食べたくてしかたがない毒キノコを手に取った。浮腫や腐臭を漂わせるそれは、何日も洗っていないと笑っている。まるで娼婦を捕まえたような表情は、どこか懐かしい。
そうだ、過去に捕まえたゾンビ女がこんな匂いだったな。
俺は優しく彼に微笑み、何一つ嫌な顔をせずにそれを食べた。文字通り、堪能した。浮腫か子種かわからんそれを吸いだした後、俺はまだ山のごとくそり立つそれを前に、生唾を鳴らした。
人間も捨てたもんじゃないな。俺はそれをありがたく頂戴し、7度目のお替りをしたあたりで、ホネオが何もしゃべらなくなったことに気が付いた。
あー、死んじゃったか。
俺は彼の執事である老齢のセバスチャンを呼び、死んだことを告げた。
すると満足そうなホネオの死に顔を見たセバスチャンは王子殺しの俺に礼を告げ、
この城の城主になってほしいと依頼してきた。
城主、つまり王だ。辺鄙な土地だが、面白そうだな。俺は二つ返事で了承せずに、ある条件のもとに城主を引き受けた。
相手としても俺の条件を飲み、晴れて俺は女でありながらこの国の第7王子兼王女?結婚していないから、令嬢?となった。
父や母もとんでもない玉の輿だと両手を上げて喜んでいる。
だが俺の心は晴れない。
俺を満たす男は、此の世にいないのだろうか。
1か月後、俺は城の近くに作らせた木工職人や金属加工職人ギルドの一室にぶらりと足を運び、そこへ様子を見に行った。
何とか形になったと汗を流す職人たちにたんまりとお礼をし、受け取った物品。
そして馬車とともに現れた腰の低い御者たちに連れられ、首都へ向かった。
そう、第7王子の正当な権利をもらうべく、首都にそびえたつとんがり頭の城へ向かったのだ。
眠くなってきた。今日はここまで。
ふわぁ、あのホネオ、金に飽かせて女漁りをしていただけあってまあまあ美味しかった。惜しむらくは、元気なうちに会いたかった。もしくは前世のオークの頃に知り合いたかった。あ、ダメだ。オークの頃に知り合ったらホネオ死んじゃうわ。
人間としての出会いも悪くない。そう感じた今日この頃だ。
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