終わらせるチカラ

※今回は調で。


 物語を完結させる。これがなかなか難しい。

 特に連載小説は他の創作物と比べて特殊だと思う。なにせ物語が未完のままでも発表できる。

 例えば、音楽ならこうはいかない。歌詞や楽譜を完成せずに披露しようものなら歌い手と演奏者が困る。当然だ、歌も演奏も中途半端なところで終わってしまう。そんなものを認める観衆はいないだろう。

 音楽を他の創作物にしても同じだ。絵画や彫刻も、創作者が逝去しているならともかく未完だが見てくれと出展すれば審査自体を拒否される。まあその未完が完成品として賞賛されることもあるだろうが、それはまた別の話。他には未完の料理。これはいけない。未完の蜜柑は虫しか食わず、未完の大器は凡庸だ。

 ここまで綴り、ふと気づいた。連載漫画も連載小説の類だろう。漫画は編集者と打ち合わせを繰り返し未完のまま公開していく。絵も台詞もコマ割りもその一話は完成していても物語自体は完結しない。いやまて漫画でも一話完結や四コマ漫画もあるか。ただこちらは省くべきであろう。なぜならそれらは話として完結したものを連載という形で継続しているに過ぎない。短編集の一編と同じ。切り取ってしまっても単体で成立する。

 話を冒頭に戻すが、物語は完結されてはじめて成魚となり、批評のまな板に置かれる。切られ、捌かれ、叩かれ。焼かれ、煮られ、揚げられる。そして旨いだの不味いだの、甘いだの苦いだのしょっぱいだの、見知らぬ輩に好き勝手に言われる。それが本来の批評であると私は考える。もし稚魚のままで評価できるとすれば、文章力だけである。それなら未完も完結も関係ない。一話すら読み切らずに判定でき、最新話と比較すれば著者の研鑽具合がわかるだろう。

 私は文章を書き始めた時分、未完の物語を量産していた。アイデアが浮かび、意気揚々と書く──その途中に新たな物語を思いつき、そちらを書き始める。終わらない物語が設定が山積していく。これは良くない。それに気づいたのは数年後だ。短編でもいい。物語を終わらせる事こそ上達の近道である、と私は考える。自ら開いた物語の扉を自らの手で閉める。扉の隙間から光や闇が漏れ出さないように、しっかりと。二度と開かないように鍵をかけて、その鍵を捨てる。それができるのがプロなのではないか。近頃、そう考えるようになった。 【了】



 つ、疲れる……。いつもの私に戻ります。

 堅苦しい文章は疲れますねー。息苦しくなります。


 ということで、本日二回目の『今宵の終わり』をお送りします。白河マナっす。

 今日、最初に書き上げた10万字くらいの小説を読み返し、こうして筆を執っております。あの頃の後悔を、堅苦しい文章に乗せて公開(迷惑)。


 まだ私の瞳が輝いていた頃、友人と2人で印刷所に発注して本にして──イベントで販売、売り子して、わちゃわちゃして。楽しかったな……そんな思い出。  

 ※本は無事完売。1000部×イベント2回だったかな。


 それはそうと。

 自主企画で作者さんのプロフィールも同時に見ているのですが、中学生の方までいらっしゃるんですね。驚きです。『カクヨム甲子園』でも、さっき見た段階で短編568作品、長編418作品ですから、白球を追う球児のように多くの学生さんが頑張っている姿が見て取れます。

 そんな姿を見て応援したくなったので、一人くらいは「役立ったぜ、マナっち!」と言ってくれそうなネタを投下してみます。



【私が考える文章上達術(初心者向け)】

01. 文書読本を読み漁る

 言葉のママです。図書館や図書室で借りればタダです。


02. 人と話す。嫌でも人前に出る

 小説は文章であり言葉です。私も苦手でしたが極力前に出ました。

 人の言葉に触れる回数を増やすことは、確実に文章力向上の役に立ちます。


03. 好きな小説を何度も繰り返し読む

 目的は好みの「文章」を自分に沁み込ませることにあります。

 文体も話も両方好き!という作品があれば、それが一番ですね。

 あと、最初から読むのではなくて、適当なページを開いて、

 そこから読んでしおりも挟まないでやめるのが飽きない秘訣です。


04. 書いた文章を寝かせる

 書いたら即投稿!ではなく、

 しばらく寝かせて再チェックすると、思わぬ誤字脱字を発見できたり、より良い表現を思いつくことも。


05. その作品の中で読者に一番見せたいものを明確に

 連載小説の場合は、その話中で。

 全部に力を入れてます!というのも素晴らしいですが、

 書き出し、中盤、最後の引き──どこかでインパクトを残したいものです。

 自戒の念も込めて。 


06. 十人十色であることを念頭におく

 赤が好き!という人がいれば、絶対青が好き!という人もいるこの世界。万人は受けません。誰に向けて書くのかしっかり考えておくと、ブレない作品になるはず。

 

07. 批判は無視、批評はありがたく頂戴する

 批判は悪口ですからね。豆腐メンタルの私にも耐えられません。そんなものに腹を立てても悲しんでも仕方がないので気にしないに限ります。ただ、批判なのか批評なのかを分析する目は必要です。ありがたい批評を批判と受け取らないよう気をつけましょう。


08. あなたは神様。神は何でも知っている

 作者は神様です。あらゆる視点から物語を見ることができるはずです。主人公視点、ヒロイン視点、電線に止まるカラス視点──すべてを見ることができて、その心の中の声まで聞けるのが当たり前。だって神様ですから。

 そう考えると、いま皆さんの身近にあるあらゆる事象が、文章を書く糧になるはずです。


09. ネタ帳は必須

 私のネタ帳はiPhoneのメモ機能です。PCを使っているときはOneNoteとメモ帳ですね。昔は本当にメモ帳に手書きしてました。学生さんは紙のほうがいいのかな。有名アプリだとEvernoteとか。自分に合うのを探してみてください。


10. 喜怒哀楽の振り返り

 嬉しかったこと、ムッとしたこと、涙がでたこと、笑ったこと。その源泉はなんなのか。後で冷静に振り返って分析してみると小説に生かせるかも。読み手を喜ばせる文章、怒らせる文章、悲しませる文章、楽しませる文章。それだけではなく、作中のキャラクターたちに喜怒哀楽を与えるための原資となります。


11. 気分転換も必要

 期限が迫っているのであれば仕方ありませんが、人の集中力はそんなに長くは続きません。どこかで煮詰まります。それならメモ帳を片手に散歩でもした方が良かったりします。座り続けていると腰も痛めます。ご自身にあった気分転換の方法を見つけてみましょう。文章が気分転換!という方は無理せず続けてください。


12. 書いて書いて嫌になってからが本番

 これは人によりますかね。

 湯水のごとくアイデアが溢れてくる方は、ずっと楽しく書き続けることができるのかもしれません。でも私には無理でした。本当に長い間、休んでしまいました。嫌になりかけた時にどう対処するのか、それが皆さんの分岐点になるかも。もしいつかその日が来たら「さあここからが本番だ」と思ってください。


13. 身近なファンを大切に

 『自分の作品も読んで欲しい! その気持ちはとても自然なこと。だって読んで欲しくて投稿しているのだから』

 このくだりは、私の自主企画の冒頭です。

 もし近くに感想をくれるリア友や、ネット上でも応援してくれる方がいるのなら、是非大切にしてください。どんなに素晴らしい文章でも、読み手がいなければ日記と同じですから。でも馴れ合いには注意。客観的な批評をもらいましょう。


14. 嫌いも面倒も利用してしまえ

『08.』から繋がる話ですが、小説の中もまたひとつの世界。どんなジャンルでも人間模様を書くのであれば、登場人物が嫌がるシーンや悲しむシーンも書くことになるかもしれません。全部、利用しましょ。たまには嫌なことも率先して引き受けましょ。違う道を通って家に帰りましょ。気になっていたあのお店に入っちゃいましょ。でも犯罪はダメですよ。


15. 全教科が文章の勉強になる

 学生さん向け。

 小学生も中学生も高校生も大学生も。

 全教科、教科書には文章が書かれていますよね。図書室(館)もありますよね。学び舎と称するだけあって学校は活字天国です。

 教科書の文章は、いわば完成品。面白いことや気の利いたことは書いてないかもしれませんが、無駄も削ぎ落とされているプロの文章です。あらやだ素晴らしい。

 委員会や係の仕事だって、学生が主人公の話を書くのなら、昔を回想して書く人とはリアリティがまるで違います。今しかない今を大切に。


16. 異性の心を知る

 避けては通れない道ですね。

 自分とは異なる性別を書くのって難しいですよね。話口調は異性と接すれば分かります。でも心情やその他諸々、わからないことばかり。

 とはいえ、現代小説でなければ、そんなに意識する必要はないかもしれませんね。ラブコメとかは妄想全開の作品が多いですし。

 私の場合は、異性の歌の歌詞とか、エッセイとか。学生さんなら今だからこそラジオが良いのでは。パーソナリティやゲストによる言葉だけの世界。いいかもしれません。


17. ネットを使い倒す。でも注意して

 <小説における私のネットの使い方>

 ①不確かな慣用句や熟語などが正しいか調べる

 ②自分の中でマンネリ化している言葉に対して、類語辞典を引く

  ※手の届くところに類語辞典がありますがネットの方が早くて便利

 ③資料画像の検索

  ※今はファンタジーものを書いてるので、西洋の街並みや城とか、そういう写真を眺めては表現に役立ててます。私は建造物などの情景描写が不得意なので画像を見ながらイメージを膨らませてます。


 私の場合、この3つが主ですね。注意事項としては、熟語でも類語でも一つのサイトの情報を信じ込まない事。複数の信頼できるサイト確認し、たまに手元の辞書でも確認したりしています。


18. わからない、で終わらない

 これは私の習性ですね。

 ちょっとでも疑問に思ったことは何でも調べます。私生活で、ふと、疑問が浮かんだことを。何でもスマホで検索します。人に質問されたことも曖昧なら検索。わからないまま終えてしまうのって気持ち悪くありません? 勿体ないと思いません? 私は思うので調べています。


19. 迷ったら、声に出してみる

 最も役立つのは読点を打つ時ですね。

 私ルールですけど、私は基本的に心の中で朗読して、息を切るのに適した場所に読点を打っています。迷ったときは口を動かして、いい感じのところで打ちます。

 本題からずれますが、あえて変な場所に読点を打つこともあります。読み手を制御したいときに。


 例)

 私は白河マナである。名前はもうある。

 私は、白河マナである。名前は、もうある。

 私は、白河マナである。名前はもう、ある。

 私は白河マナ、である。名前は、もう、ある。


 面白いですね。読点って。これだけで印象が変わってきます。

 どこを読み手に注視させたいのか、印象づけたいのか、感じさせたいのか。勿論、私の独りよがりで、私の思いが必ずしも読者に伝わっている自信はありません。でも私としては、なるべく、理由をもって、文章を書きたい。そう思っています。


20. 役立ったぜ、マナっち!

 ありがとう! 私!



 それぞれのテーマを掘り下げていけば一冊の本になりそうですね。

 私が小説を書きたい!と書き始めた時、すぐに困ったのは想像したイメージを形にできないこと。頭の中にある情景や登場人物の心理をうまく言葉に、文章にできない。会話だけが多くなる。ボキャブラリーの無さを痛感。どうしてあの時もっと──見聞を広めるための行動をとらなかったのかと後悔しまくり。それが文章力アップに繋がったはず。後悔先に立たず。覆水盆に返らず。という訳で、今回は文章を書き始めた人たち向けに色々と書かせて頂きました。


 長くなりましたね。ここまでお付き合い下さり、ありがとうございました。あんど、お疲れさま私。


※上記したことは、あくまで私の考える上達術です。要約すると人生全部を楽しもう、ってことです。それに『01.』が殆どのことを解決してくれますよ。きっと。


※余談の余談

 自主企画、参加は95作品になりました。全作品、目を通してます。無論、全話は無理です。先に私の寿命が来ます。すみませぬ。気になった作品は、ブックマーク? フォロー? して時間のある時に読む予定です。ではでは。再見。


*******

追記:久しぶりに読み返し、20か所くらい修正しました。『04. 書いた文章を寝かせる』ですね。何を書いたか忘れるほど時間を置くと、多くのことに気づきます。なかなかできないことですけど。


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