文節変体実験
変態じゃないですよ。
さあ今夜もいきますか。 ※夜、読んで頂いている想定
『吾輩は猫である。名前はまだ無い。』 ※吾輩は猫である ─夏目漱石
有名な一節ですが、これを使って今夜は実験を。
検証するには文章が短いのでその先の、
『どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。』
まで含めます。
これを使って全く別の文章を作ります──具体的な言葉でどう言ったらいいのかな。文法も語法もしっくりこないし。そうそう、文節か。文章の最小単位。
【本日のテーマ】
『吾輩は猫であるを題材に、文節を崩さずまったく別の文章を作る』
をを。しっくりきた。
《原文》
吾輩は/猫で/ある。/名前は/まだ/無い。
どこで/生れたか/とんと/見当が/つかぬ。/何でも/薄暗い/じめじめした/所で/ニャーニャー泣いて/いた/事だけは/記憶して/いる。
文節で区切りました。
『ネ』で区切るって中学で習いましたよね。「吾輩はネ」「猫でネ」「あるネ」みたいに……これであってるのか? あってることにしよう。
《変換後》
私は/白河マナ/です。/趣味は/特に/ありません。
そこで/ふざけてる/酷く/失礼な/キミ。/なんだか/暗い/じめじめした/所で/ニャーニャー泣いて/いる/猫を/踏んだ/顔しているわね。
ふう。
難しい。
極力文節を維持して別の文章に作り替えてみました。イメージは転校生の自己紹介。美人だけれど強気な感じの女の子。自己紹介をしている最中に騒いでいる男子にキツイことを言い放つ。そんな適当単純な設定。
何がしたかったのかと言うと。
ある文章の規則性を借りて、別の作品に作り替えることができるのか、という実験です。それが可能なら、細かな設定を入力さえしてしまえば勝手に文章を生成してくれるAIができるのも時間の問題かと思いまして。もうあったりして。
『吾輩は猫である。名前はまだない。』
〇〇は△△である。□□は××。
これをテンプレにして、少し変化をつけてあげれば、
・僕は人間ではない。アンドロイドである。
・月は綺麗だ。僕は月が好きだ。
・雷鳴が轟いた。続いて豪雨。
・地球は丸い。そして青い。
・土の匂いがする。雨上がりの夕方。
・水筒の麦茶を注ぐ。屋上には誰もいない。
・魔法を使う──だが、MPが足りない。
・今なら言える。君のことが好きだと。
・猫は好き。犬は苦手。
・大地が割け、繋いでいた手が離れる。
・Bダッシュ。からのジャンプ。
・宝玉が砕け散る。僕は体の自由を取り戻した。
・猫が寝転んだ。犬はワンダフル。
・ヒマワリの種はおいしい。彼女は言った。
・これは天命だ。貴様はここで死ぬ。
次々と、新しい文章が生まれます。
果たしてこれはパクリなのか、オマージュなのか、リスペクトなのか、全く別のナニカなのか。はてさて。学のない私にはさっぱり。
先ほどの変換後の文章に戻ります。
区切り文字(/)を取ってみたものの、強引に文節にあてはめたせいか、読んでいて気持ちが悪いですね。私風にアレンジします。
《変換後》
私は白河マナです。趣味は特にありません。
そこでふざけてる酷く失礼なキミ。なんだか暗いじめじめした所でニャーニャー泣いている猫を踏んだ顔しているわね。
↓
《アレンジ後》
「私の名前は白河マナ。趣味は特に無いわ。ねえ、人の自己紹介中にふざけてる、そこのキミ──なんだか暗いジメジメした所でニャーニャー泣いてる猫を踏んづけた時のような顔をしてるわね。今すぐ転出届を学校に提出して消えてくれるかしら」
なんということでしょう。
この文章を読んで元ネタが『吾輩は猫である』ことを想像できる人は誰もいないと思います。いや、「じめじめした所でニャーニャー泣いて」が原文ママなので、気づかれますね。再修正。
↓
《アレンジ後2》
「私の名前は白河マナ。趣味は特に無いわ。ねえ、人の自己紹介中にふざけてる、そこのキミ──なんだか暗くて小汚い路地裏でキャンキャン泣いてる子犬を蹴り飛ばした時のような顔をしてるわね。今すぐ転出届を学校に提出して消えてくれるかしら」
どうでしょ。これで吾猫(わがねこ)の残滓が消失しました。
文中で白河マナさんが酷いこと言ってますけど、私は犬も猫も好きですので。あくまで創作ということで宜しくお願いします。通報しないでください。
さて。今宵はここまで。
自分の好きな作家さんの文章を模写するという文書力上達の方法がありますが、今回のような試みもまた、面白いのかもしれません。
※再アレンジ※
久々に読み返した所、この子の性格を考えると回りくどい表現をもう少し削って、もっと断定的に話をさせた方がいいと思いましたので以下に修正。
《アレンジ後3》
「私の名前は白河マナ。趣味は特に無いわ。ねえ、人の自己紹介中にふざけてる、そこのキミ──小汚い路地裏でキャンキャン泣いてる子犬を蹴り飛ばした時の顔をしてるアナタのことよ。今すぐ転出届を学校に提出して消えてくれるかしら」
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