第26話 -クラスマッチ2-

 1日中体育館内にいると、サウナのように暑くなる。俺は競技のサッカーに出るため、グランドへ出たが、グランドも暑いのだが気分転換になるほどだ。


 クラスのサッカーの試合も、俺は何も貢献してないが、無事に勝つことが出来、無事にベスト4へ進むことが出来た。

 だがサッカーも全学年男子対象なので、次の試合は翌日になる。


 自分の出番を終え、体育館内のバレーボール本部席へ戻ると、静間先輩のクラス、3年7組がバレーボールの1回戦に出場していた。

 となると、前田先輩も?と探したら、一緒にコートの中で元気よくプレーしている姿を発見出来た。


「お疲れ様です〜。サッカーの出番、終わりました」


「あ、上井君、外は暑かったでしょ?何か飲む?」


 角田先輩が、本部席の特権、麦茶やアクエリアスを用意してくれていた。


「うわっ、助かります!アクエリ、いいですか?」


「うん、飲んで飲んで。冷たいよ〜」


 紙コップに注いでもらい、グッと飲み干す。


「プハー!美味いですね!」


「もう少し年が増せば、麦のジュースも飲めるんじゃけどね、ハハッ」


 角田先輩はどうもアルコールが強そうだ。


 コートを見ると、どうしても顔見知りの静間先輩と前田先輩を目で追ってしまい、つい7組頑張れ、と思ってしまう。


 前田先輩は体操服姿は去年から何回か見ているが、躍動している場面を見たことがなかった。

 実際にバレーの試合に出てボールを追い掛けたりしているのを見ると、個人的ミス西高だけあって、一つ一つの動きが綺麗で惚れ惚れする。

 胸も着痩せするから普段は目立たないが、激しく動くと結構揺れて、つい生徒会役員の立場を忘れてしまう…。


 試合はワンセットマッチなので、両チーム必死だが、最後は15−13で、3年7組が勝った。ちなみに相手は3年3組で、俺の知る顔はいなかった。


「あっ、上井君!アタシの出番、見てた?」


 前田先輩が声を掛けてくれた。


「はい、途中からですけど、見ましたよ」


「恥ずかしいーっ。後輩の男の子に、バレーの試合見られるのって、恥ずかしいね」


 前田先輩はそう言ったが、周りの前田先輩のお友達は、後輩の男の子が応援してくれるなんて、嬉しいじゃん!とか、ミッキー照れてる〜とか、からかわれていた。

 しかし一つ年上のお姉様方が、バレーボールで汗を流した後って、独特な雰囲気になる。

 冬のジャージと違い、夏でブルマだからというのもあるんだろうな…。


 角田先輩はトーナメント表を、7組が勝ったことで、書き換えに行った。

 そこへ静間先輩が戻ってきた。


「静間先輩、カッコ良かったですよ!」


「そう?ありがとね、上井君」


「あ、何か飲まれますか?」


「うん。アクエリアス飲もうかな…。あ、いいよ、上井君は座ってて。アタシがやるから」


 なんて出来た先輩だ…と思い、アクエリアスを取ろうと前屈みになった静間先輩を後ろ側から見ていたら、なかなか刺戟的な光景が目の前に広がっていた。


 これまで静間先輩をそういう目で見たことが無かったのもあるが、汗でピッタリ張り付いた体操服のシャツに浮き出るブラジャーは、清楚な静間先輩に相応しく真っ白でノーマルなブラジャーだった。

 だがブルマは、これも汗をかいたからか先輩のお尻に張り付き、ブルマの下のパンツのラインが浮き出ている。

 結構ブルマの裾の際どいカーブに沿っているなと思ったら、お尻の下の方で、ほんの少しパンツがはみ出ていた。

 これも清楚な静間先輩らしく、真っ白なパンツだったが、はみ出ているのはほんの僅かで、アクエリアスを注ぐ前屈みの体勢から普通の姿勢に戻ったら、白いパンツはブルマの中へと戻っていった。


 小学校や中学校の時は、女子がブルマからパンツをはみ出すなんて、日常生活の一風景のようなもので大して気にもしなかったが、高校生になるとこんなにドキドキするものなのか。


 初めて静間先輩のセクシーなシーンを見てしまった俺は、脈拍が加速していくのが分かるほど、ドキドキしていた。


「上井君、顔が赤いけど、大丈夫?暑いから、水分取ってね」


 静間先輩にそう言われたが、今セクシーな場面を見てしまったためだとは言えず、は、はい、テキトーに飲みます…と答えてしまった。


(理性が崩壊しそうだ〜!)


 そんな初日を終え、部活に出てみると、やはりクラスマッチの後というのは出席率が悪い。

 ほぼ1日を通していつ試合があるんだ?いつ呼ばれても大丈夫なようにしておかねばならないという緊張感の中、冬も寒くてキツイが、夏は暑くてもっとキツイ訳で、体力、精神力がすり減るのは当たり前だろう。


 これがあと2日続くのかと思うと…


 やっぱり静間先輩のようなラッキーセクシーがないと、やっとられん、俺は強くそう思った。


「上井先輩!」


 と声が掛かる。1年生のクラリネットの瀬戸だった。


「おう、瀬戸君。クラスマッチ疲れたじゃろ」


「はい、サッカーだったんですけど、疲れました〜」


「俺もサッカーだったよ。何もしてないけど」


「ハハッ、サボりですか?」


「いや、試合はサボってないよ!グランドにはおったけど、ボールが来そうになったら逃げとった」


「なんですか、それ。そうそう、クラスマッチって、生徒会主催なんですか?」


「うーん、主催というか、学校行事の共催じゃないかな?文化祭は主催だけど」


「サッカーとか、横のソフトボールとか、生徒会役員の方が準備とかしてて、ソフトには山中先輩もいたので、お疲れ様ですと声は掛けたんですけど」


「山中はソフトだったんじゃね。って、俺が内部情報を知らないという…。逆に俺は自分のサッカー以外、体育館の中にずっとおったんよ」


「体育館…って、何やってましたっけ?」


「上井先輩、バレーする女の子見て、ニヤニヤしてたもんね!」


 ここで男の会話に割り込んできたのが、若本だった。宮田&神田のクラスに負けて、イライラをぶつけに来たのだろうか。


「ニヤニヤはしてないよー。ムフフッとはしとった」


「何ですかそれは」


「だってあんな暑い所に閉じ込められて、もし1日中男の試合ばっかりチェックしてろって言われたら、謀反起こすよ。爽やかな女子の試合もあるから、本部席の仕事が出来る訳で…。逆の立場になって考えてみなって」


「アタシが本部役員として、ですか?べ、別に、女の子の試合が続いても…大丈夫だもん」


「また若本、無理しちゃって。イイ男も目の保養で見たいじゃろ?」


「そりゃあもちろん…。って、何を引き出そうとしてるんですか!」


「面白ーい!上井先輩と若本さんの掛け合いって、漫才みたいですね。物凄い流れがスムーズ!」


 思わぬ所で瀬戸が俺と若本の会話を漫才のようだと合いの手を入れてきた。


「まあ若本とは去年の体育祭で盃を交わした仲じゃけぇ、のぉ!若本」


「ええ、先輩とは固く契を結ばせて頂き…って、ノセないで下さいよ!」


 若本は本当に俺の無茶苦茶な暴投にもちゃんと対応して突っ込み返してくる、貴重な存在だ。

 それだけ若本を意識し始めているんだろう?と問われたら、否定しにくくなっている自分がいる。


 だが、改めて俺は慎重に慎重に…と心掛けるよう、気を付けた。

 多くの同期に、もう自分から好きな女の子は作らないと宣言しているからだ。

 若本がこの先、そんな俺の決意を揺るがすほどの存在になるのか?

 まだまだ分からない…。


 結局この日はクラスマッチの影響か、部員の出席率も悪く、先生がいないのもあったので、俺は練習を中止にして、部活にやって来たメンバーと、トランプを持ち出してババ抜き大会を開催した。

 十人少々でやるババ抜きはいつになっても終わらず、メチャクチャ盛り上がり、楽しかった。


 最後も、


「今日来なかった人は損してますね」


 という声が出たほどだった。たまにはこんな日もいいだろう…。俺は練習漬けばかりが結束を固める手段ではない、と思っているからだ。

 疲れたからサボっちゃえという部員の気持ちも分からないことはないが、だからこそ疲れてもちゃんと出席する部員には、プレミア感を持たせたかった。


 そして部活を締め括り、音楽室の鍵を閉め、帰ろうとしたら、久々にカッターシャツを引っ張られた。


「…野口さん?」


「うん…」


 俺は、俺を呼び止めた野口さんの表情が寂しげだったことが気になった…。どうした、何があったんだ?


<次回へ続く>

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