第5話 -ラストチャンス-
神「上井くん、朝一緒に登校しない?」
もう神戸千賀子からの最終通告を受ける覚悟を決めていた俺には、一瞬「え?」と思ってしまう話だったが、勿論断るわけはない。
一瞬、帰りはだめだけど、行きはいいのか?と思ってしまったが。
そして次の日から、朝7:30に、夏に肩を叩かれて
『アタシは2番』
と神戸千賀子が言ってくれた信号で待ち合わせして、5分ほどだけになるが、一緒に登校することになり、登校後はクラスで他のみんなが来るまで話をすることになった。
10月の終わり頃から、期末テスト中を除いて2学期最後の日まで、一度些細なことから言い合いになり、険悪なムードになったものの、朝の2人での登校は続いたのだが、この時が一番色んな話が出来、女の子と付き合えてるな~と実感できた。日常の話、受験の話、吹奏楽の話・・・。
文化祭の後には班替えも行われ、偶然にも神戸千賀子と同じ班のクジを引き当て、再度クラスでも会話しやすい環境が出来た。
一緒に歩く時は、手を繋いだり、腕を組んだりはしなかったが、たまに体がぶつかったりすると、それだけで猛烈に照れたものだ。
そして2学期末、夏休みに少し話していた志望校を、三者面談の効果もあり俺の親も納得したので、2人で一緒に西廿日高校に行こう!と、改めて約束した。
もしこの時に、一緒の高校に行こうと約束しなかったら、その後の俺の人生は大きく変わっていただろう…。
2学期終了の日まで、朝待ち合わせて一緒に登校するというミニデートは続いたのだが、2学期終了の日の朝、
「3学期は受験も近いし、朝一緒に登校するのは、やめない?」
と提案された。
多分そうなるだろうと思っていたので、これは仕方なくだが、受け入れた。
でも教室に俺達が一番乗りで入ったら、彼女は
「はい、クリスマスプレゼント」
と、ちょっと大き目な袋をくれた。
「中には、手編みのマフラーが入ってるの。大事に使ってね」
手編み!
クリスマスに彼女がいるって、こういうことか、こんなに嬉しいのか♬
今度の2月のバレンタインデーには、生まれて初めて本命チョコが貰えるんだ♪
この時は天にも昇る気持ちで舞い上がっていた、この時は…。
対して俺が上げたクリスマスプレゼントは、小さな砂時計。
申し訳ないぐらいだったが、それでも彼女は
「ありがと。大事にするね」
と言ってくれた。
またこの日、修了式後冬休みに突入したのだが、彼女は保健委員をやっていたので、クラス全員が帰った後、教室のワックス掛けをしなくてはいけなかったのであった。
俺はそのことを知らなくて、普通に帰ろうとしていたら他の女子に捕まり、
「上井くん、神戸さんは1人教室に残ってワックス掛けしとるんよ。手伝ってあげたら?」
「えーっ、そうなん?知らなかった。じゃあちょっと、行ってくる」
という流れで、再び教室に戻ったが、確かに中では一生懸命にワックス掛けしている彼女がいた。
ちょっと迷ってしまったが、教室に入って
「神戸さん!」
と声を掛けたら、凄い驚いていた。
「大変だと思うけど、頑張ってね」
「ありがとー!上井くんも気を付けて帰ってね」
「うん、お互いにね」
「じゃあ、バイバイ」
「うん、バイバイ」
と手を振って、別れた。
これが彼女との、最後の会話らしき会話になるとは、思いもせず…
<次回へ続く>
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