第2話 -告白失敗-
いざ林間学校当日、俺は何とかして神戸千賀子に告白しようと、ずっとタイミングを狙っていた。
スケジュールでは、調理実習を行う前に、まず最初に三倉岳という山を登ることになっている。
結構キツイ登山コースで、こんな獣道を歩かすの?と思いながら班単位で登っていたら、同じ班の女の子、松下弓子さんが転んでしまい、その拍子に靴が脱げ、小川のせせらぎに流されてしまった。
まだまだ続く登山道、女の子を靴下とか裸足で歩かせるわけにはいかない。
俺は班長として、
「松下さん、俺の靴、使いなよ!汚いけど」
と言い、スニーカーを脱いで松下さんへと渡した。
最初はそんなの申し訳なさすぎると抵抗していた松下さんだったが、最後は俺のスニーカーを受け取ってくれ、逆に俺が裸足で登山することになった。
この靴の貸し借りが、後に影響を及ぼしてくる。
この登山だけでクタクタになってしまったが、そのクタクタになったところから、調理実習がスタートする。
俺の班は、男子3人、女子4人という班だったが、さすが女子4人は、料理が上手だった。神戸、松下の2名の他、一学期の始業式の日に千葉から転校してきた女子バレー部の笹木さん、同じ吹奏楽部だがおとなしい芝田さんという2名を、俺は選抜していた。
手際よく野菜を切ったり、細かな作業を黙々とこなしていて、こういう様子を見ると男ってイチコロだよな~と思った。
対する男子連中はその分肉体労働を頑張り、飯ごう炊さんのために火を起こしたり、薪とか重たいものを運んだりしていた。
そして1時間と少々をかけてカレーライスが出来上がったが、滅茶苦茶美味かったのを今でも覚えている。
みんなで協力して作ったというのが、何にも増して美味しさを引き立てていたと思うのだ。
カレーを食べながら、班のみんなで色々な話をしつつ、俺は徐々に、神戸千賀子への告白のタイミングを考え始めていた・・・。
心臓はバクバク、足はガクガクという状況で、告白を考えれば考えるほど、緊張の度合いが高まっていく。
あまりの緊張に、告白は止めようかと思うほどであった。
それでもチャンスが回ってきた。
カレーライスを食べ終わり、その後片付けの最中、神戸千賀子と俺の2人きりという時間が出来たのだ。
俺は緊張して顔が真っ赤、でも神戸千賀子は普通通りに皿を洗っている状況だ。
もう喉より上、舌の先端まで
『実はずっと神戸千賀子さんのことが好きです。付き合ってください!』
という告白の言葉が出掛かっていたのに、俺がその時発した言葉は
「洗った皿、持って行ってあげる」
だった。
終わった・・・、最大のチャンスを逃した・・・
と、俺は一気に奈落の底に落ちたかのような諦めモードになったのだが、不思議なことにその林間学校後、神戸千賀子の俺に対する態度が変わってきた。
一番驚いたのは、クラスの中での机の位置を、それまでは神戸千賀子と俺は同じ班でも、ちょっと離れた位置に座っていたのだが、俺の隣に座っていた松下さんに頼み込んで、場所を交換したことだった。
(え?なんでワザワザ俺の隣に?)
でもその理由を聞くことなんて、オクテな、もう神戸千賀子への片思いは失敗に終わったと思い込んでいた俺には出来なかった…。
その状態が続いた2日後の理科の授業中、事件が起きるのだった。
<次回へ続く>
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます