end poem 成人式とアウトくん

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“ ゲイのアウトくんの

病みがち連続ポエムシリーズ。

大震災が訪れる前の日本で過ごした学生時代は、いじめと自殺問題がいつもテレビのニュースになっていた。価値観が変わる少し前の話。オトナたちからは可哀想な視線を向けられた当時の子どもたち。学校は、刹那的でおしゃべりで露悪的で残酷な世界だった。闇になった気持ちは、闇の気持ちでないと救えないときもある。LGBTが日本語になる少し前の世界でセクシャリティに悩むためのポエムをキミに。lover、lover、lover ”


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 僕はゲイだった。だから、成人式が怖かった。

 19歳の僕は、成人式の一年とか半年とか前からずっと怖がっていたと思う。怖くて怖くて、仕方がなかった。大学生にとって、成人式の話題は、耳に付きやすいもので、一年前にテレビのニュースで見たところから始まって当日に至るまで、同学年での、現役生と浪人生の間の情報交換が、日々、行われていた。


 純粋に行きたくなかった。微塵も足を踏み込みたくなかった。でも、家族はどう思うんだろうと、思った。親孝行のできない僕は、いやでも成人式ぐらいは行った方がいいんでしょうか?と 、誰かに相談しようかとも思ったけれど、相談先も相談方法も、わからなかった。LGBT成人式が、テレビのニュースにも映ることがあった。LGBTという言葉が流行り始めたのは、僕が大学に入学したころで、今の中学生や高校生は、多少、生きやすくなるだろうなと思った。青春時代に無駄な時間を使わない方がいい。でも、LGBT成人式があるなら、いじめられっ子成人式も、学級崩壊成人式も作ってくれたらいいのにと思った。もちろん、そんな不謹慎な成人式などあるはずはない。憂鬱で、恐怖な、祝日が、日々、近づいてくるだけだった。


 1ヶ月くらい前になって、母に言われたことに驚いた。「当日は、好きなものを買ってきて、家で過ごそう」そう、強めに提案された。母は、中学校で何があって、どんなところだったかを具体的には、知らない。そもそも、僕も、全ての記憶があいまいな時期だ。ただ、学校が荒れていたことと、受験前に僕が完全に崩れていたことを、知ってるぐらいだと思っていたから、その提案が意外だった。僕が思い出せない頃に一体何があったのだろうと、母にはどう見えていたのだろうと、考えて、やっぱり、知らないほうがいいと思った。その後の成人式に行かないことが決まった僕は、わかりやすく幸せだった気もするので、案外、今の様子を見ていたのかもしれなかった。


 数年して、妹の成人式がやってきた。僕と同じ中学校に通っていたのに、一年前から母と楽しそうに準備をする妹を見て、嬉しい反面、やっぱり、申し訳ない気持ちになった。当日がやってきて、両親に妹の晴れ姿を一眼カメラで撮ってほしいと言われた。両親とクルマに乗って、成人式会場に、妹を迎えいく。こうしたドライブ自体が、久しぶりだと感じた。妹が同級生と話したり、写真を撮っているのが見える。妹がいて、よかったと思った。写真を撮るために家族4人で近所の公園に行った。子どものとき以来だと思った。写真を撮っているうちに、これは、やっぱり、僕を成人式ってイベントに参加させるため口実なのかな、とも考えた。ひと通り撮影ができた後、父、母、妹の3人の写真を撮った。その後、僕も父に代わってもらって撮ってもらったけど、ファインダー越しに、本来のとても正しいものを見た気がして、やっぱり、ちょっと申し訳なくなった。


 妹は、父と母の看護師という仕事を見て、自分も看護師になった。そのため、僕以外の3人は、職業上、共有していることが多い。看護学校時代のサポートから、働き出してからの愚痴や相談まで、家庭でストレートに話せるのは、羨ましいなと思う。家族の中で、僕だけが、違う人のような自覚がずっとある。だから、大学に入ってから、僕を除いた3人の共有事項が増えるたび、僕は自己嫌悪した。でも、元々の原因は、僕が家族と話すことが、怖いからだ。


 家族には、カミングアウトをしていない。僕は、ずっと、家族と会話になるのを避けている。いつからだろうか、保育園は記憶がないから、たぶんなんか辛かったんだろうけど、でも、避けることはなかったと思う。小学生も同じだ。給食は食べられなかったけれど、家族を避けたりはしなくて、むしろ、学校で発散できないエネルギーを家で発散していた不思議な子だったと思う。やっぱり、明確に避けるようになったのは、中学校になって、同性愛を自覚してからだった。ずっと避けるうちに、会話を避けることがクセになった。でも、下手くそかもしれないけれど、隠すこと自体は間違った選択ではないと思う。


 美大を選んだことだって、それ以外に僕が幸せになる方法はなかったはずだ。普通の人は、怖いけど、美術を好きな人の中なら、打ち明けても良いアウトくんのルール。そこで、4年かかって、ふつうの人の6年を追いかけて、僕は救われた。もし、普通の大学や、看護学校にいたら、僕は未だに闇の中にいたかもしれないし、もっと酷いことになってたかもしれない。


 昔、中学生や高校生の自殺がたくさんニュースになっていたときに、学校や周りの生徒が「いじめなんてなかった」と証言する事件が、何度かあった。そんなニュースを聞くたび、僕は、ほんとうに、いじめなんてなかったのかもしれないと思った。だって、僕だって、いじめられてはいない。いじめられてはいないけれど、家庭環境もよかったけれど、それでも、心が真っ黒になった。


 美大にしても、隠すことにしても、きっと、最善の選択で、その出会いの中で、ふつうの人と違う生き方をしたいと思うようになった。してもよいと、思えるようになった。でも、たまに、不意の偶然で、こんなにも悲しくなってしまうのはどうしてなのだろうか。


もし、ふつうの人だったら、僕に男の子の友達はできていましたか?

もし、ふつうの人だったら、僕は、まっすぐ生きていましたか?

もし、ふつうの人だったら、僕は、家族にもう少しだけ気をつかわせずにいられましたか?

もし、ふつうの人だったら、僕は、結婚できていましたか?

もし、ふつうの人だったら、僕は、子育てもできていましたか?

もし、ふつうの人だったら、もう少しだけ、人を悲しませる想像をせずにいられましたか?

もし、ふつうの人だったら、成人式にでて、写真を撮ってもらえましたか?



ねー、アウトくん。

アウトくんは、どう生きたかったの? どう生きていきたいの? アウトくんが、本当にほしいものはなんですか?




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〈まるで、今の人生が、周りの人を突き離して、逃げた結果みたいにまとめたね。そうかもしれないけれど、それじゃ、僕が必要なかったみたいだ。〉


〈僕は、君の人生の辛い時期を肩代わりしただろう? 僕の存在が、本当にそれだけかで、君は迷うんだ。僕の利用価値を探してる。〉


また、いじわるなことを言う。これじゃ、感動ポルノが台無しだね。


〈感動ポルノって、言うほうが台無しだろ。〉


アウトくんの名前の由来知らないでしょう?


〈急だね。ドロップアウトとカミングアウトのアウトだろう? あと、お前の性癖がアウト〉


また、余計な一言を。

アウトはねー。漢字で「逢人あうと」って、書くんだよー。カッコいいでしょー。


〈やっぱ、急だった。〉


アウトくんは、外に出て、いろんな人に逢うためにいるんだよ。


〈雑だけど、気に入ってるなら、それでいいよ。〉


気に入ってんじゃん!


〈いやー、あれだよ? まとまりがいいかと思って。〉


そういうチョロいとこ僕に似てるよね。君が流されやすくなかったら、最初から最後まで、こんな話にはなってなかった。男の子に簡単に恋して、自己嫌悪して、また恋して、の繰り返ししか話が書かれてないんだよ。


〈お前の話だろww〉


end

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友達がほしかったアウトくんのポエム shoma520 @shoma520

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