『深まる謎』
翌日雄哉はもしかしたら何か知っているのではないかと思い父であり社長でもある雄二の下を尋ねた。
「父さんちょっと良い?」
「なんだ雄哉、仕事の事か?」
「ごめんそうじゃないんだ」
「だったらあとじゃダメか? どうしても会社で話さなきゃいけない事なのか?」
「別にそう言う訳じゃないけど、でもなるべく早く聞いておきたいんだ」
「そうか、もうすぐ出なきゃいけないんだ、手短に頼むな」
「分かったよ、実はこの前お爺様の所に女子高生のお客さんが来て僕もその子の相手をしたんだけど、実は先日その子とデートしたんだ。それがお爺様の耳に入って、そしたらお爺様は僕とその子は付き合ってはダメだって言ったんだ。僕とは釣り合わないって、どうしてそんな事言うの? 元々お爺様のお客さんなのに、それにお爺様はそんな事言う人じゃないじゃないですか?」
「親父はそんな事言ったのか、私は良いと思うけどな? 家柄がなんだって言うんだ。今時そんなの関係ないと思うがな」
「そうだろ? 不思議なのは彼女のお母さんまでもが彼女に俺とは会うなって言っているみたいなんだ。俺とは会った事もないはずなのにだよ」
「あった事もないのにそんな事言うのか、なんて名前の人なんだその人は」
「畑中って言う人」
畑中と言う苗字に聞き覚えがあり嫌な予感を感じた雄二は下の名前も聞いてみる事にした。
「下の名前は? 畑中なんて言うんだ?」
「お母さんの名前は知らないけど娘さんの名前は紗弥加ちゃんて言うんだ」
まさかの予感が的中してしまったがそれでも信じたくないという様子の雄二。
「そうか、すまないもう行かないと、この続きはまたあとでな」
そう言うと雄二は足早に逃げる様に社長室を出て行ってしまった。
翌日雄二は出社早々広瀬のケータイに電話をかけた。
「もしもし雄二か、どうしたんだこんなに早く」
『おはようございます会長、申し訳ありませんこんなに早くに。会長今日は出社しているのでしょうか?』
「今会長室だが、どうかしたのか?」
『実は雄哉の事でお聞きしたい事があるのですが、雄哉に気付かれない様にこちらに来ていただく事は可能でしょうか?』
「分かった、幸い今日はまだ雄哉も来てないから今から行くとしよう」
『申し訳ありません、ではお待ちしております』
その後すぐに会長室を後にした広瀬は隣の部屋にある社長室へと向かい、そして部屋へと入る広瀬。
「話ってなんだ雄二」
「申し訳ありませんわざわざ来ていただいて、本来こちらから伺うべきなのでしょうが雄哉がいてはまずいもので……」
「まあ良い、とにかく話を聞こうか」
「はい、雄哉の事なんですがあいつが好意を寄せている子ってどんな子なんでしょうか、元々会長のお客さんだそうじゃないですか?」
「その事か、実は私の車が彼女にぶつかりそうになってな、それで病院に連れて行ったりと遅くなったんで夕飯をご馳走したりしていたんだがその時のお礼って事で先日会社に来たんだ。最初はそれだけで済むはずだった。でも当日どうしても人と会わなければいけない用事が出来てしまってな、その間に雄哉が相手をしてくれたんだがその時にケータイ電話の番号を交換していたらしいんだ」
「それだけの事なら別に二人の付き合いを反対する事もないと思いますが」
雄二の言葉に対し途端に表情が硬くなる広瀬。
「それがそうでもないんだ。出逢った日に彼女を家まで送って分かったんだが彼女の苗字は畑中、母親の名前は麗華、お前の元不倫相手だ。これが何を意味するか分かるよな?」
「雄哉から相手の名前を聞いてまさかとは思っていましたが、まさか本当にそう言う事だったなんて」
「あの二人は母親が違えど兄妹と言う事になる。だから二人が付き合うなんてあってはならない事なんだ」
「そうですね、それだけはなんとしてでも阻止しないと」
その後そろそろ出社しただろうと雄哉のスマートフォンに電話をかけ社長室へと呼び出した。
『もしもし父さん? どうしたのこんなに早く』
「雄哉もう出社したのか? ちょっと社長室に来てくれないか、大事な話があるんだ」
『何ですか話って』
「ちょっとな、とにかく来てくれ」
『分かりました、すぐに向かいます』
そうして雄哉は社長室へと向かうとノックをし社長室へと入る。
「お待たせしました。話とはなんでしょう?」
そこには社長のほかに会長である広瀬もいたため一体何事かと驚く雄哉。
「何ですか一体、お爺様まで呼んで」
「雄哉、昨日言っていた彼女との事だがな、お前彼女との交際はやめておけ」
「どうしてですか、父さん昨日は良いって言っていたじゃないですか。どうしてたった一日で考えが変わってしまうんですか」
「どうしてもだ、彼女と付き合うとお前は不幸になる」
「父さんは会った事もないのにどうしてそんな事分かるんですか、納得できません、僕は彼女の事諦めませんからね」
「とにかく彼女との交際は認めない、お前にはそのうち良い見合い相手を見つけてやる、だから彼女の事は諦めろ!」
「政略結婚ですか、そんなのごめんですからね」
そう吐き捨てると雄哉は足早に社長室を後にしてしまった。
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