講演1:加〇鷹アニキの教え
*鷹アニキ:某カリスマAV男優。
私は仕事柄、様々な業種の方の講演を聞く機会があります。
宇宙物理学の世界的権威であったり、NHKで講座を持っている哲学者であったり、もちろん同業の科学者の講演は学会に行けば面白く、知人の口頭発表などは容赦ない質疑応答に持ち込めるというエンターテイメント性も持ち合わせていて(←やめろ)大変楽しめるものであります。
そんな多くの講演からは、様々な知識や新たなものの見方などを学ぶことができます。今回はそのうちの一つ、鷹アニキの講演を聞いて考えた事、感じたことを述べさせていただきたく存じます。
鷹アニキは、ゴッドフィンガーの持ち主ともいわれ、AV界に"潮吹き"なる性表現を確立させた男優です。生きる伝説と呼ばれて惜しまれながら引退したのは2013年、今は長年携わった業界での経験を元に、特に若者に対して性の在り方を伝える講演を行うなど、積極的に自身の知識経験を外部に伝える活動をしておられます。
私が聴いた彼の講演は、やはり若者向けの、特に若い男性向けの講演で、まあそういったことに興味津々の観客のニーズを満たす話もサービスたっぷりに話してくれました。大丈夫、R指定はないです。
場が温まったところで、鷹アニキは大事な話を切り出しました。
曰く、「セックスの時にコンドームをつけない男は、挨拶もできない男と同じだ」
「君たち、さて彼女と良い雰囲気になっていよいよと云う時、女の子がコンドームを準備していたらどう思うか。ヤリマンだと軽蔑するか、それとも生でやらせろと迫るのか。僕だったら、その子に感謝するし、その子が自分自身の体を大切にしているということが分かってとても嬉しい」
鷹アニキの話したことは、とても重要なことだと思います。内容もそうですが、特に鷹アニキのようにカリスマAV男優が話すことだからこそ重みのある言葉です。
また、彼の代名詞でもあるゴッドフィンガーを駆使する撮影のときは、爪を磨いて丸くし、爪ブラシで念入りに洗って、絶対に女優の体を傷つけない決意で臨んでいるということも話しておりました。
このようなセックス時における常識的ともいえる相手を思いやる行為、この表現をAVを始めとしたマンガ、小説などのメディアが無視し続けた結果、今の日本の若年層における性感染症の感染率が急増していることが明らかになっています。
梅毒は過去の病気ではなく、20歳前後の日本の若い女性が今も罹患し、しかも感染者の数が増加している病気です。またそれが様々なメディアで得た偏った知識で性行為を行おうとする若い男性が原因であることも指摘されています。若い女性側にも知識が不足していることも原因であることは明らかです。
厚生労働省は、この事態を重く見て、特に若い世代での性感染症の周知を目的とした資料を発行しています。
厚生労働省HPより性感染症
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/seikansenshou/index.html
男性に向けたリーフレット:モテ期にこそ予防「する」オトコ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/seikansenshou/dl/leaf01.pdf) *PDFが自動で開きます
女性に向けたリーフレット:愛され女子の感染「しない」宣言
(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/seikansenshou/dl/leaf02.pdf) *PDFが自動で開きます
オーラルセックス時にもコンドームを着用すること、などかなり具体的な性行為に踏み込んで厚労省は呼びかけています。コンドームは避妊の機能はもちろん、粘膜同士の直接接触によってリスクが高まる感染症の予防にも大きな役割を果たすものです。
事態が緊急味を帯びてから動き出した若年層の性感染症対策ですが、実はこの動きはBL業界でも見られます。
それは特にBLコミックで顕著なのですが、BLコミックを読まれている方は気付いているかもしれません。ここ数年、コンドームが作中に描写されることが普通になっています。性行為の際にコンドームを装着する、そこまでの表現は無くてもコンドームを用いることを暗に示した表現が、ひと昔前より確実に増えています。そしてそれはポジティブな描写です。
これは非常に重要な事だと思うのです。性行為にはコンドームが必要である、ということを明らかに描写しているのですから。
もちろん、創作はあくまでフィクションであり、現実とは異なるものです。ですが、そのフィクションが、物語が、読み手に与える影響は無視できないものがあります。
性行為には両者の同意と、互いの躰に向けた気遣いが必須です。
この同意と気遣いの描写を無視し、エロだけを重視した作品が氾濫したところ、顕著に若年層の性感染症の罹患率が増えたという事実は、無視してはならないことだと思います。
表現の自由、とよく言われます。そんなことをいちいち気にしていたら小説なんて書けないよ、とも。でも、ほんとうにそうでしょうか?
例えば、虐待や強姦といったことを書くな、といっているのではありません。けれどそれらの行為が社会的に許されない行為であること、被害者の心身を深く、不可逆的に傷つけるものであることとして表現するのは、作者がその技術でもって描写可能なことなのではないでしょうか。
海外の事を引合いに出すことを「
性暴力の被害者が「いやだ」といったのに、加害者はそれを合意だと受け取った。
実際の今の日本の社会で、このような性犯罪が毎日のように起きているのは紛れもない現実です。被害者の存在を前にして、あなたがそこに、自分の作品に書いた表現に、責任がないと言いきれるのでしょうか。
無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)と社会的に広く受け入れられる表現(ポリティカル・コレクトネス)。
創作に関わる皆様には、是非一度、自分の認識と社会に許容される表現にズレがないか、自分の心の内で確かめて頂きたいと思うのです。
鷹アニキが社会に対して啓蒙活動を行っているのは、AVが間違った性知識を若者に与えてはいけない、そういった思いがあるからだとも聞いております。
コンドーム有りでも、強姦表現無しでも、愛あるエロを感じさせる文章表現の研鑚を、ともに目指して参りましょう。私もそれを目指している一人です、と、今回の"講義"はここで〆させていただきます。
・・・・・・おっと、R15は遵守しましょうね!
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