第四話

ようやく、最後の授業。


 今日の最後の授業は、英語だった。内容は自習。一般入試を控えてる人は過去問を必死に解いていた。よく分からないけど、なんだかちょっと罪悪感を抱いた。自分だけ楽しているような気がした。申し訳ない気がした。私以外にも推薦の人はいるのだけど。


 自習中、先生がアメリカの映画を流していた。「することがない人は見ろ」ってことだったのだと思う。読書していても良かったのだけど、なんとなく見た方が良い気がした。


変わった映画だった。

 


 『一瞬を逃すな』



 映画で出てきた言葉。頭に残っていた。英語は全然聞き取れなくて、字幕の日本語の言葉なのだけど。


 この字幕をつけた人は、この映画を作った人は、この映画を私たちに見せた先生は、何を思っていたのだろう?



 そんなこと考えてちょっと黄昏ていたら、一時間目に音楽室で声をかけてきた人が、同じように黄昏ていることに気づいた。私の視線に気づいたのか、その子が振り返ってこっちを見た


ヤバい.....目があった


 いや別に目が合うことは、特別なことではないのだけど、人との関わりが少ない私には焦る出来事なのだ。人と目を合わせるのは久しぶりな気がした。いや、多分そんなことはないはず。そうであってほしい。


 


ようやく1日が終わった。


いつもと同じようにベッドに入る。この瞬間が一番好き。

いつもと同じ。でも今日はちょっと違う。何かが変わった気がする。


 今日はいつも以上に寝付きが悪い。明日も行きたくない学校があるのに。


 私は夜寝る時、1日の出来事を振り返る。振り返るというか、大体は一人で反省会を開催してるのだけど。私は、その日に誰とどんな会話をしたのかを正確に覚えている自信がある。だって、ほとんど話さないから。まあ、1週間経てば忘れるけど。


 色々あった日は、振り返りの時間が長くなる。今日は長くなりそうだ。


 1日の終わりに、「今日誰とどんな会話をしたか」を振り返る人は私だけではないと信じているよ...



 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る