〜魂を投げている〜広島の守護神

友愛数

第1話 プロ入りまで

—野球は9回まで何が起こるかわからない—

俺はその言葉を、この夏初めて体験することになった。


9回裏ツーアウト満塁1点リード

俺は満を持してマウンドに上がる

—大丈夫だ。きっといける。地区大会でも抑えた じゃ無いか—

ストレートで追い込んだ。後一球。

俺は思い切り腕を振った…

—しまった—

自慢のストレートも真ん中に行ったら打たれる。

結果は散々だ。サヨナラ満塁ホームラン

気にするなとはチームメイトに言われたが、やっぱりあの時の俺の絶望感は計り知れない。

時が一瞬止まった。音も風も感じなかった。 

そんなこんなでもう卒業式。あの時の後悔が蘇る。

「クソッ…クソッ…あの時僕の球がスッポ抜けなければ、ロジンをもう一度付けてれば、皆と深紅の旗を持てたのにっ…」

後悔してももう遅い。どうするか。

地元の会社に通ってそこのチームでもう一回野球を

したい。そうしよう。

親に相談しなければ…でもまぁ、一発OKな気もするが…

案の定、親もOKだった。

面接も合格。

頑張ろう。そして、夢だったプロになるんだ。

淡い期待を背負って新品のスーツに着替えた。


「…………これで説明を終わります。」

ヤバい。何も聞いていなかった。

何の話だったんだ…仕方ない。隣の人に聞くか。

「あの…青柳さん…でしたっけ?」

「そうですよ。どうしました?吉田さん。」

凄いな。もう人の名前を把握しているのか。

「さっきの人、何の話してたんですか?全く聞いてなくて。」

「あー…俺も聞いてなかったから、ごめんなさい」

「いえ、こちらこそすみません。」

「そういえば吉田さんは野球部に入るんですか?」

「そうですね。一応そのつもりです。」

「よかったですね。この会社の野球部監督は

 かつての阪神の守護神、藤山さんですよ。」

藤山さん?!俺と同じでストレートが武器だったじゃないか!

「藤山さんって、あの!」

「そうそう。ストレート凄かったなぁ…ってその名前、もしかして去年の決勝の…」

「……その通りです。だからこそ藤山さんに指導してもらいたいのです。」

「なるほどねぇ…俺から言っといてあげましょうか?、藤山さんとRhein交換してるんで。」

「あ、あ、ありがとうございます。お願いします」

「分かりましたー」

まさか青柳さんが藤山さんと友達だったなんて…

まぁとりあえず今日は仕事頑張るか。


翌日

「今日は部員の自己紹介だな、じゃあキャプテンから。」

あれが藤山さんかぁ…生で見たのは初めてだなぁ。

かっこいい…

「おーい、次お前の番やぞー」

あっやべ

「はぃっ。吉田 米見といいます!宜しくお願いします!」

「米見って聞いたことある名前やなぁ…

 思い出した!あの甲子園のか!」

「はい。」

「よっしゃ!お前は俺が直に指導する!期待しとるぞー」

「ありがとうございます!」

マジかぁ。今日で一生分の幸運使い果たした気がする。

「それじゃあ練習に入れ!吉田はここに残っとってな」

「はい!」

うわぁ…どんな練習なんだろ。

「お待たせ。まぁまずはキャッチボールから始めるか。いつものストレートの握りで。」

「分かりました。」

ビュッ パンッ

「なかなかええ球やんか。球も重いし伸びとる。

 ただまだ足りんなぁ。当ててみ。」

「…球速とコントロール、ですか?」

「いや、お前に足りんのはハートや。守護神としての心。あの試合見とって思った。

お前には十分な球速、球威、コントロールはある。

ただ、まだ心が足りんのや。強いて言うなら心と

ノビや。」

「ノビですか?でも握りは悪くないと思うんですが…」

「そう。握りは悪くないんや。フォームと腕の振りが悪い。」

「フォーム…」

「そう。フォーム。お前は斜めから腕を出す、いわゆるスリークォーターや。だけどそれは変化球は良くなるけどストレートが活かされん。お前はストレートが武器やからかなり上からのオーバースローが一番ええ。まぁ、俺の体験からやけど。そこからスタートや。」

「分かりました!」

「じゃあ今日はずっとフォームの矯正しよか。」

「はい!」

〜3時間後〜

「よし!最後に一球、全力で投げてこい!」

「はい!」

ビュッ パンッ

「めっちゃ良くなっとる!最初よりもキレが増しとるぞ!」

「ありがとうございます!」

帰るかぁ〜



バタン

あ〜疲れたぁぁぁ。でも藤山さんの指導上手かったなぁ。はよ風呂入って寝るか。


7/18 練習試合

「スタメン発表するぞ〜……………

………吉田!ブルペンで待機!」

「はい!」

うわぁ緊張するなぁ。大丈夫かなぁ

9回裏

「よし!吉田!出番や」

「はい!」

緊張する〜

相手1番からかぁーいややなぁ

バッターアウト!

バッターアウト!

よし、後1人。全球ストレートでやってやろう

おりゃ!    ファウル

あぶなぁ〜

おりゃ!    ブン! ストライク

あとワンストライク…

おりゃ!    カーン

うそっ?!


最悪やぁ…

勝ったからいいもののデビュー戦でホームランはヤバい…

「あまり落ち込むなよ〜吉田」

「藤山さん…」

「春に言った「心」っていうのはそういうことや。

 ツーアウトになって打たれてる。

 いいか。吉田。持ってるボールを自分の魂と

 思って投げろ。打たれたら自分は死んでしまう。

 そういう気持ちで投げてみろ。」

「…はい」

また甲子園の時みたいになったなぁー。最悪や。

魂かぁ。


8/31 リーグ戦

「吉田、今日からお前をこのチームの守護神にする。」

「え?!は、はぃ。」

「頑張れよ。あとブルペンで待機だ。」

まさか守護神になるとは…

まぁ前の雪辱を果たすチャンスやから、頑張ろう。

「吉田!出番や!」

「はい!」

相手は…げっ、前ホームラン打たれた奴やんけ…

ボールは魂、ボールは魂……

おりゃ!     ストライク!

おりゃ!     ストライク!

おりゃ!     ストライク! バッターアウト!

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

よっしゃ〜!今日はバットにも当てさせんかった!

「前よりキレ良くなっとるやんか。」

「はい!藤山さんが前言った「ボールは魂」というのを意識しました!」

「よかったよかった。あ、あとお前スカウトから注目されとるぞ〜」

ん?今なんて?

「すみません、も、もう一回言ってください。」

「ん?だから、プロのスカウトに注目されとるぞって…」

マジかぁ、気づかんかった…

「ま、いいアピールにはなったじゃん。頑張って〜」

え、えぇ

「は、はい。」



9/30 決勝戦

「よし!今日は決勝や!吉田!いつめのように!」

「はい!」

今日は一層重圧やなぁ…


「吉田!出番!」

「はーい!」

ボールは魂、ボールは魂!



かっ、勝ったぁぁぁ!

俺が、俺が締めたんや!やったぁぁぁ!

「吉田ぁ!よくやったなぁ!」

「藤山さんのおかげでここまで来れたんです。

 ありがとうございました!!」

「あとは、12月を待つだけや」

12月…?何があったっけ…?


12月15日

めっちゃカメラ来てる…

ヤバい冷や汗かいてきた…

「落ち着け吉田」

「はぃ…」

緊張するぅぅ


第一巡指名  広島

  吉田  米見

山原酒造  投手


……は?

「吉田!お前やったなぁ!ドラ1やぞ!!ほら!もっと喜べ!!」

待ったこれは現実か?夢か?…ほおつねりゃぁ分かるか。   

「イタッ」

現実やんかぁぁぁぁ!うわぁあ!

「藤山さぁん!俺、俺!やりました!!」

「ツー訳で今から会見やで」

「マジか」



「指名されてどんな気持ちですか?」

「やっぱ嬉しいですし、抑えとしてかな?頑張っていきたいです。」

「元阪神の藤山さんが監督とのことでしたが、一緒にテレビ見てましたか?」

「そうですね。僕も監督も食堂でめちゃくちゃ叫びました。」


来年から俺もプロかぁ、広島は今コーチは誰だっけか?粟林さんは現役やし…

頑張るしかないかぁ

……………………………………………………………

説明下手による用語解説


ロジン…ボールが滑らないようにする白い粉

守護神…9回を投げる投手。抑えの進化版

オーバースロー…上から投げる。

スリークォーター…オーバースローよりちょっと腕を倒す。



最後に

文章を書くのが苦手でこれが初めての小説です。

見てくださりありがとうございました。

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〜魂を投げている〜広島の守護神 友愛数 @yuuaisuu1105

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