第7話:女を愛する女達

 翌日。桜は癒子に、和希と付き合うことになったことを報告した。癒子は「おめでとう。良かったがね」と自分のことのように喜んだ。


「けど良いなぁ。うちも彼女ほしい。バ先に気になる人おるんだけどさぁ……彼氏持ちなんだよね……辛いわー……てか、絶対男より女の方がいいと思うんだけど。ノンケの気持ちはわからんわ……」


 癒子はレズビアンだ。中学生の頃に、桜は彼女から恋心を告白され『冗談やろ』と笑い飛ばしてしまった。癒子はそのことを許し、水に流したが、桜はそのことを忘れないようにと胸に刻んでいる。


「そういや、先輩の友達もビアンらしい」


「マジで?どういう感じ?」


「そこまでは聞いてへん。癒子のタイプってどういう系なん?」


「一言で言うならフェムタチ」


「……ごめん。専門用語わからへん」


「フェミニンな攻め」


「あー……お姉様って感じの人が好みなんやね」


「そう。バスケ部のマネージャーリーダーの高柳先輩をもうちょっとお淑やかにした感じ」


「な、なるほど」


「悪かったなお淑やかじゃなくて」


 たまたま後ろを通りかかった梓が癒子の肩を叩く。癒子は思わず悲鳴をあげて飛び退き、桜の後ろに回り込んで隠れた。


「んな怯えんな。別に何もしねぇよ。それよりえっと……冬島……だっけ」


「えっ?は、はい。冬島はうちです」


「あ、違う。お前じゃなくてこっち」


「霧島です」


「紛らわしいな。まぁいいや。霧島」


「は、はい」


「お前、ビアンなの?」


「……えっ。まさか先輩も?」


「おう。これ、私の彼女」


「うっわっ!!おっぱいデカっ!」


「どこ見てんだ。目潰すぞ」


「すいません」


「……言いふらすなよ。このことは安藤くらいにしか言ってないから」


「黙っとるんで、一日一個惚気話聞かせてください」


「……冬島、お前の友達クソだな」


「すみません。多分、同士ができてテンション上がっとるんやと思います」


「……あぁそう」


 舌打ちをしてため息を吐き、梓は癒子にスマホを差し出す。そこにはLINKのQRコードが表示されていた。


「ほらよ。私の連絡先」


「マジで一日一件送ってくれるんですか?」


「毎日は送らん。……気が向いたら」


「……先輩、意外とツンデレですね。もっと怖い人だと思ってました。可愛い」


「うるせぇ。さっさと登録しろ」


「へへ……あざーっす」


 しれっと桜もQRコードを読み込み、梓を友達登録する。


「何お前まで登録してんだよ」


「まぁまぁ、ええやないですか。うちも先輩の惚気話聞きたいですし」


「グループ作っとくわー」


 癒子がグループを作成し、桜と梓を招待する。


「なんやねん『先輩の惚気話が聞き隊』って」


「ダサッ」


「じゃあ他にいい名前考えてくださいよ」


「……めんどくせぇからこれで良いよ」


 ため息を吐きながら、梓はグループに参加する。なんだかんだで梓もまた、惚気話を出来る相手ができて嬉しく思っていたが、口には出さなかった。

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