HISTORY OF 桂(前編)

 マリア様がみてるの登場キャラクター『桂』。

 かなりのマリみて通でないとこの名をご存じないであろう。

 苗字すらわからないがなぜだかインターネットではカルト的な人気を誇り『並薔薇さま(ロサ・カツーラ)』などとあだ名され信奉されているこの人は一体なにものなのか。

 日本有数のカツラマニアであると言われている自分がマリア様がみてる全39巻から全登場シーン(そんなに多くない)を紹介しつつその謎を紐といていきたいと思う。


※抜けがありましたら申し訳ございません。その場合はお手数ですがご教示いただきたく存じます。


(1)マリア様がみてる


P11~18


 記念すべき初登場シーン。なんと祐巳、祥子に続き三番目に登場したキャラクターである。志摩子や由乃、蔦子なんかよりも早いぞ!

 祐巳の祥子さまの前で失態を演じたという愚痴を聞きつつ、祥子以外の薔薇様のことには疎い祐巳に、志摩子が祥子の誘いを断って白薔薇になった――などの情報を伝える役割を担う。少女漫画でも少年漫画でも主人公の友人ポジションとしてよく登場するちょっとミーハーな事情通というような役割であり本来であれば長きにわたって祐巳の一番の友人として活躍する予定だったのかもしれないしそうでもないのかもしれない。スターは素人のことなんていちいち覚えてないってなどと言って祐巳を慰めるが、皮肉にもこのセリフは近々彼女の頭にブーメランとしてつきささることとなる。

 この時点ですでにテニス部に入ったその日のウチに姉妹の儀式をしたなどというけっこうとんでもない過去も明らかにされており、彼女を理解する上で必要な二大キーワードである『ミーハー』『けっこう惚れっぽい』という情報はすでに出そろっているといえる。

 ただし容姿については言及なく、挿絵もないため彼女のおなじみの(?)スポーティーなショートヘアー姿はアニメ版で初めて明らかになった。


P89


 祐巳が山百合会の演劇に出るらしいという噂が流れ始めた際に『変な噂が流れているけど気にしてはだめよ』という内容の手紙を授業中に回した。気遣いは美しいが残念ながらピントは合っていない。


P125~130


 いよいよ祐巳が演劇に出るという噂が本格的になったころ、結構強引な感じにその噂の真相を尋ねる。本人に悪気はなかったと思われるのだが、結果的にクラスみんなが祐巳を囲んでぎゃあぎゃあと噂の真相を尋ね結果的に泣かすことになってしまう。


P235~237


 文化祭当日。祐巳といっしょに留守番をしているところに祥子がやってくる。祥子と仲良さげにしている祐巳にロザリオをもらえなかったのになんで仲良くしてるの? などと疑問を呈するという役回り。カツラマニアとして注目するべきは『どうせなら花寺の生徒会長(柏木)と仲良くなればよかったのに』などというセリフ。男性に興味がないわけではないということがわかる。ちなみにずいぶんあとにも柏木にキャーキャーいっている場面があったりする。


(2)黄薔薇革命


P72~78


 掃除の時間に祐巳に黄薔薇姉妹の破局したというニュース、令が亡霊のようにふらふら歩いてたということ、それに由乃は心臓悪いという重要情報を伝える。情報通キャラの面目躍如であった。

 そんなナイスな情報を伝えたにも関わらず動揺した祐巳に雑巾を握ったままで制服を掴まれてしまう。この件はよくインターネットというか主に某掲示板の桂さんスレ(そんなものがあることに驚け)でもネタにされる。別にいいけどねほっとけば渇くからなどと許してあげる桂はなんて心が広いんだ! その後もボケたことを言う祐巳を桂が小突いたり、令のピンチを聞いた祐巳がそれを早くいってよ! などと言いながら桂さんに雑巾をほおり投げて令を追いかけるなど、ちょっとお互いに荒っぽいけど仲良しであるところを見てとることができ、祐巳×桂派の自分としては結構お気に入りのシーンである。ちなみこのあとこの二人の仲の良さがみて取れるシーンはずっと後にならないと出てこないのであった。

 なおこのとき桂さんの口から『リリアンではクラス替えは二年に一回』という重要情報が提示されている。ぶっちゃけ今回読み直してて初めて気づいた! 一年生から二年生になる際にはクラス替えをしているので二年生から三年生にあがる際にはクラス替えはおそらくないのだろう。つまり三年生でも祐巳、由乃、蔦子、真美らは同じクラスで桂、志摩子は別のクラスということになるようだ。祐巳×桂派としては少し残念。祐巳たちが三年時のことを描いた『リトルホラーズ』にも祐巳と由乃が二年時と同様に松組であることということが書かれていた。


P146


 黄薔薇革命の模倣をして妹から姉にロザリオを返却することが流行していたころ、桂もお姉さまがロザリオを返していたことがリリアンかわら版に掲載され祐巳を驚かせる。まさにミーハーここに極まれりという所業である。カツラマニアたちにはさんざんぱらネタにされている。

 後に明らかになるのだがこんな事件を起こした桂を彼女のお姉さまは広い心で許し不器用ながら人一倍気遣っておりその愛情は大変美しい。


(3)いばらの森


P13~14


 白薔薇さまが……などという気になる噂話をしているところをしているところを祐巳が聞いていた。なぜだか祐巳が「それなんの話?」などと桂に聞くことはなかったため、祐巳と桂が会話を交わすことはなしに出番終了してしまった。


(4)ロサ・カニーナ


P11


 三学期の始業式が行われる講堂に向かう途中、やたらと寒がってカイロをすりすりする祐巳を見て苦笑する姿が描かれる。珍しく情報屋としての登場ではなく単なる祐巳の友達としての登場であるが出番はたったの三行。だんだん出番が短くかつ少なくなっていく今日このごろである。

 ただしこのとき桂が冬産まれであることが判明! ほとんどのキャラクターが誕生日不明のこの作品に置いて非常に貴重な情報である。カツラマニアであれば12/1~2/28の期間は毎日桂の誕生日を祝おう。


P15


始業式の最中、ウトウトしている祐巳を隣に座っている桂が小声で起こすというなんでもないシーン。しかしこのシーンには最大の謎である桂の苗字を推理する唯一最大のヒントが隠されているのだ! 始業式などの式典は大抵の場合出席番号順に並ぶ、つまり彼女の苗字は五十音順で『福沢』に極めて近いということになる。それ以上のヒントはいまのところ見当たらないが彼女のキャラクター性を考えれば差し当たり『普通 桂』『平凡 桂』といった推理が無難であろう。

 始業式が出席番号順かどうかのはっきりした証拠はないが、いとしき歳月には卒業式にて聖たちが出席番号順(名前順)に廊下に整列してから講堂に入っていき座席につくシーンがあり、始業式も同じと見て間違いないと思う。寒がる祐巳を見て桂が苦笑するシーンとも矛盾しない。


(5)ウァレンティーヌスの贈り物(前編)


P81~88


 もうすぐバレンタインというころ。祐巳といっしょランチを食べていたが、図書館にチョコレート作りについての本を見に行くためにさっさと席を立っていってしまた。祐巳にごはんはよく噛んで食べたほうが健康にいいしダイエットにいいんだよなどとおばあちゃんのような豆知識を披露していたらしい。かわいい。


P140


 バレンタイン当日、朝一番でお姉さまをテニスコートに呼び出してチョコレートを

渡したということを祐巳と話す。チョコレート作りで寝不足で目が赤い桂についてこんな表現がされていた。『ウサギの一人である桂さんがピョンコピョンコと跳ねて祐巳の側にやってきた』。かわいい。


P172


 今巻はなかなか出番多い! バレンタインゲームの最中に追手から逃れるために窓からトイレに飛び込んできた祐巳と遭遇。窓から飛び込んでくる音に反応して個室から飛び出してきたらしい。なかなかワイルドである。トイレの窓のカギを閉めて欲しい追手が来たら自分と会ったことはヒミツにして欲しいなどとお言伝をあずかり祐巳の逃亡に協力する。

 ちなみに個室から飛び出して祐巳と遭遇したのち一旦個室に戻って水を流していたらしい。今回改めて読み直すまで特に意識していなかったが、よくよく想像してみるとなかなか大変な状況ではないだろうか。

 実はこのときもうひとつの個室に蓉子がおり、次巻で蓉子視点から見たこの事件(?)が語られる。


(6)ウァレンティーヌスの贈り物(後編)


P229~P231


 巻末の中編『紅薔薇さま、人生最良の日』にて、蓉子が体調を崩しトイレの個室にこもっているところに桂が「るんるんるん」とご機嫌で鼻歌を歌いながらトイレの個室に入っていくところが描かれる。言うまでもなく超絶激萌えシーンでありカツラマニアにとってはまさに伝説的名場面である。この日は紅薔薇さまだけでなくカツラマニアにとっても人生最良の日であったということが言える。


(7)いとしき歳月(前編)


P75


 体育の授業が終わったあと祐巳さんどちらへ? と声をかけるが江利子のことが気になっていたこともあり振り返りもせずにそっけなく答えられてしまう。出番これだけ!


(8)いとしき歳月(後編)


P44~48


 突然ぶっこまれる超重要事件。卒業の直前、祐巳は桂がお姉さまとは別の憧れの人であるテニス部の三年生に餞別として使っていたラケットをもらうシーンを目撃する。大泣きする桂を見ることができる貴重なシーン。前述のロザリオを返す事件といい、桂の高校生活は平凡なようでなかなかドラマチックであるということが言える。

 この時点ではお姉さま以外の憧れの三年生を送りだす桂に祐巳は自分と聖を重ね合わせて聖に会いにいく……というちょっと言い方悪いけどつなぎ的役割のシーンとなるがずっと後になってこのシーンの真相とさらなる展開が語られることになる。


(9)チェリーブロッサム


P127


 二年生に進学し祐巳は二年松組、桂は二年藤組とクラスが別れてしまった。志摩子とは前年に引き続き同じクラスとなった。このため志摩子の様子が変であることを報告するという役割を与えられ、この巻でも『BGN』にて志摩子さんがちょっと時間があると桜を見に行っていることを祐巳に報告したらしい。なお桂自身のセリフなどはなく祐巳の「志摩子さんの様子が変だと藤組の桂さんが教えてくれた」というセリフによりカツラマニアは「あっ桂さんとはクラス別れたんだ……」と知らされることになった。クラス替えで今年はこんな編成になりましたよ、というようなこと紹介するけっこう長いシーンがあるのだがそこでは桂の話はまったく出てこなかった。


P167


 マリア祭のアシスタントを依頼する候補として名前があがる。真美の立候補により実現はしなかったが、一応祐巳の中で山百合会メンバーを除けば一番仲の良い存在であるということが伺える。


(10)レイニーブルー


 出番なし。なにげにまったく出番がなかったのはこれが初である。


(11)パラソルをさして


P153~155


 柏木が車に乗ってリリアンに来ていること祐巳に伝える。久しぶりに結構長い会話シーンで、柏木ファンである彼女は興奮していろいろまくし立てて柏木のモノマネまで披露してなかなかの活躍を見せた。……だが。


(12)子羊たちの休暇

(13)真夏の一ページ

(14)涼風さつさつ


 まさかの三連続出番なし。夏休みのエピソードが多かったこともあるのだろうが、ここから長い長い桂暗黒時代が始まる。




後編に続きます

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る