子供の頃からずっと視界の端にいる、犬のような黒い何かにまつわるお話。
シンプルながらも雰囲気のある掌編ホラーです。
単純に「常に視界の端にいる黒っぽい何か」というモチーフが面白い。視線をそちらに動かすとそれに合わせて移動するため、それそのものを直視することができずずっとぼやけている、という現象のもどかしさは、何かで似たような経験があり「わかるー」となりました。もちろん犬ではないのですけれど(何か光源を直視した際の残像とか)。
お話そのものは掌編ホラーらしく、あくまでシンプルなワンエピソードなのですけれど、でも登場するキャラクターの謎めいた個性が特徴的です。
主人公の祖母といい、また実質的なヒーロー役であるところの卯月さんといい、明らかに只者ではないとわかるところが魅力的でした。
怪異そのものは決して大掛かりなものではなく、作中ではあくまで「ただ彼にのみ見えるだけ」であるにも関わらず(実ははっきりした証言すらない)、どうやらあまり良くない超常の何かであるとわかるところが好きです。