第91話 お墓!

「ダルメシアン端末改10体、高速接近中ーッ!」……ゆうきちゃんの叫ぶような音声が響き、中央パネルにその姿が映し出された。


 ダルメシアン柄の……


『熊』だ!


 ……熊と言っても、当然『プーちゃん』とか『リラックスクマ』とはワケが違う! 


 俺が破壊した仲間の怨念を身に纏い『殺意の塊』となった奴等が、真っ直ぐ俺をほふりに来たのだ……戦闘力は従来型の32.5倍! それが……10体!


『鉄の一念、岩をも通す』という言葉がある。 ……いくら俺の『ロケート・スティッカー能力』が『100%』を誇ろうとも……悔しいが……この『怨念』には……勝てない……。


 ……俺の思考と身体からだが『絶望』で満たされた……。


 ……


 ……


 ……ん?


 ……子供の頃の、俺の姿が頭に浮かんだ……。


 そして……死んじゃったお父さん……お母さんの笑顔……。


 あ、もとむ伯父さんもいる! 俺、伯父さんの事、大好きだったんだよな……。 元気にしてるかな……。


 ! うわあ〜……これ……パノラマ現象ってやつだぁ……。 俺の命は……風前の灯火ともしび……なんだな(泣)


 浅利さんだ! ……もう一度呑みたかったなあ……。


 イタチ……いや、猪狩さん! ……本当は良い人だったんだね……。 ごめんね……。


 鵜目さ〜ん! 色々協力してくれて……有り難う! 幸せになってね!


 嗚呼!……愛する……祐希さん……俺……ここでお別れだ……でも、後悔していないよ。 『命を賭けても良い』と思えたのは、祐希さんだけだから。


 心から……会えて良かった!



 ……あ、祐希さんのお姉さん……祐香さんだ! ……『AS』と『NG』……返せなくて……すみません……。


 ……


 ……… 


 ………………


 あ〜〜〜〜〜〜〜〜!


 ヤバい! すっかり忘れてた!


 鵺頭ぬえがしらさん(祐香さんのご主人)に! 


『鵺頭家』の家宝を借りたままだったぁ〜!


************


 別れ際に祐香さんが『御守』を渡してくれた。 そこには『猿面・虎身・蛇尾』の妖獣『ぬえ』がえがかれている。


「これは鵺頭家に伝わる家宝です。 ……必ず、法外さんの手から、私達に返して下さいね」……と言ってくれた。


 ……ご主人も「くしたら弁償だからな〜」……と言って、微笑んだ。


(第61話 診察! より抜粋)


************


 ……やべぇ〜〜〜〜! 祐香さんのご主人に殺される〜〜! ←混乱


 俺は、宇宙服の腕に収納しておいた『御守』を取り出した。 ……せめて、これだけでも返す方法無い〜!?


 御守に描かれている妖獣が怖い顔をして、こちらを睨んでいる……襲い来るダルメシアンも怖いが、この『鵺頭』の眼力めぢからも相当なものだよぉ!


 ……? 何か……刺繍で書いてある……。


 ……象形文字? のような、古い日本語のような? 不思議な文字だ。


「ゆうきちゃん……これ、なんて書いてあるの?」……と言って、御守を車内カメラに向けた。


「これは、日本の古代文字です……『こんじじょう……うぬめが……ぼのしなきこと……なり』」


「……? 何それ? 現代語訳して!」


 ……ゆうきちゃんが言った言葉……


 その言葉を聴いて……俺の全身に……再び『ちから』と『生きる希望』が湧き上がった!


 その言葉とは……


「ここは……お前の……墓地はかでは無い!」

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