第92話 逆襲!

『こんじじょう、うぬめが、ぼのしなきことなり』……『此処ここは、お前の墓地はかでは無い』


 ……この言葉は『ヤエガシラ・システム・サイエンス社』の社是で『立ち止まるな、常に進歩を続けよ』と言う意味で使われている言葉……だそうだ。


 ……しかし今の俺には、文字通り『お前はこんな場所で死ぬ事は無い』とのメッセージに思えた。 ……確かに死んでる場合では無い! 全宇宙で『ダルメシアン』の魔の手から祐希さんを救えるのは、俺だけだ!


 何としても! どんな手段を使ってでも! 奴らを全て破壊してやるぜ!


 ……さて……


 どうしよう……。


 ……現時点で俺に残された『手段』は、数発分の『短針ニードル』と、『ロケート・スティッカー能力』……それと……帰還に必要な燃料だけ……だ。


 考えてみれば、俺は元々『100%じゃんけんに負ける能力者』……だった。 今回のような危機を乗り越えるには、全く役に立たない能力だ……。


 ……ん?


 俺……そもそも、何でわざわざ『負け』を選択してたんだっけ?


 ……そうだ!


『相手が悲しむ顔を見たく無かったから』だ。 ……それを抑えて勝とうとすると……最悪、全身から血を吹き出して、それこそ、あの世逝きだ! 現に、何度も死にかけたもんな……。


 畜生! てめぇらダルメシアンに、この辛さが判るか〜! 俺の爪の垢を煎じて飲ましてやりたいぜ!


 


 ……ん!? 待てよ……!


 そう言えば、『特務機関1〇〇ひと まる まるは、現在稼働しているあらゆるコンピュータの『中央演算処理装置』に『諜報プログラム』を組み込んだ……と言ってたっけ!


 この『プログラム』から、クラッキングをする事って出来るのかな?


「ゆうきちゃん!」


「はい!」


「奴らの『中央演算装置』にクラッキングする事は可能?」


「……はい……具体的な『サンプルデータ』があれば、それを送り込む事が可能です!」


 これは都合が良い! 俺の『爪の垢』じゃなく、俺の『考え方』を飲ませてやる!


「よーし! ゆうきちゃん! ……俺の思考パターンをデータ化して、奴らに送り込んでくれ! 何分くらいかかる?」


「ダルメシアン端末の移動速度が、今の半分以下になれば『192秒』で完了します」


 ……3分弱か! 良いだろう!


「よし! 俺が奴らを『固定』するから、俺の思考を抜き出して、奴らに送り込んでくれ!」


「了解!」


 ……人間、希望が見えてくると『あどれなりん』? ……とかいうホルモンが分泌されて、いつも以上のパワーが出せると言う。 

 

 今回は完全に諦めていたので、その反動で『ロケート・スティッカー』能力が最大限に発揮されたのだろう! モニター上の『バカックマ』共が、一瞬で急停止した!


「……駆さん! ありがとうございます。 ダルメシアン端末が完全に停止したので、作業時間が短縮出来ました。 あと ……5秒 4……3……2……1……サンプルデータ送信完了!」


 ……


 …………


 ……………………。


 あれ……?


 何も……起きない……!?

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