第81話 再発!

「飛翔端末、電力消費量に変化! ローターが停止した模様!」


 ……素人が考えても、空中でヘリコプターのローターが止まれば落下するに決まっている。 揚力限界を迎えた飛行体が辿る運命は2つ……何かに掴まって落下を免れるか、真っ逆さまに墜ちて行くか……だ。


 しかし今回は、そのどちらでも無かった。 


 目標の端末は、何かとドッキングした様子は無いが、そのまま飛び続けているそうだ。 しかも、順調に高度を上げているという。


かけるさん! 目標を画像で捕捉! 前方スクリーンに投影します!」


 ……フロントガラスの中央に別の画面が表示された。 ……何かが映し出されているが良く視えない。


「画像をエンハンスし、拡大します!」


 ……ボヤけた映像がはっきりとした。


 中央に視えるのは……文字通り『ロボット犬』だ。 『ダルメシアン柄』……白地に黒ぶち模様が塗装されている。 誰が見ても、玩具おもちゃとしか思えない。 ……ちょっと……どころではない……かなり可愛い……。


 背中に、大きな『風船』が取り付けられている。 この装備のおかげでローターが機能しなくなっても高度を上げているのだ。


「……この高度にも余裕で耐える、あの『風船バルーン』は脅威です。 もしかしたら『短針』が通らないかも……」……ゆうきちゃんが悲しそうに言った。


 風船にカメラを結び付けて手を離すと、宇宙の手前ギリギリまで撮影出来る……と聴いたことがある。 何故なぜ『ギリギリ』までしか撮影出来ないのか? ……それは『風船』の強度が、気圧の低下による膨張や、成層圏などの気温低下に耐えきれず破裂してしまうからだ。


 『ダルメシアン』端末が使っている『風船』は、この過酷な気圧や気温に耐える強度を有している、強靭な『新素材』で出来ているのだろう。


 ……しかし、どんな脅威でも、俺達はこれを撃破しなくてはならない。 ……祐希さんを無事に連れ戻す為に!


「……あ……駆さん……鼻腔から、出血しています! ただちに止血して下さい!」


 ……ゆうきちゃんに言われてバックミラーを覗き込んで自分の鼻を見ると……


 ……! 


 ま、まずい! こんな時に……また鼻血!?(泣)

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