第70話 点火!

 旧次郎博士が力強く頷いた。 そして……


「では、ずテストしてみよう。 何せロケーター・ムーバーは、一度も浮上した事が無いからな……」と言った。


 何とも頼り無い(泣)


 博士が外部操作パネル前に座り、何か操作を始めた。 すると『ズドン!』という大音響と盛大なホコリと共に、ロボボン……いや、ロケーター・ムーバーの側面……かどうか良く判らないが、ドアらしき部分が開いた。 埃にむせながら覗き込むと、乗用車とほぼ同じ操縦席が見えた。


 博士も咳込みつつ、インカムを手渡しながら「法外君、エントリーポジションに着席してくれ給え」と言った。


 俺が座席につくと、博士が俺の肩に手を乗せて……


「恐らく、この世でロケーター・ムーバーを操縦出来るのは君だけだ。 頼むぞ!」と涙目で言った。


 俺は博士の期待に答えるべく大きく頷づき、ドアを閉めて、シートベルトを締めた。


『よし、操作方法は簡単だ。 ……ハンドルを引けば『抗重量波動』が放射され、浮上する筈だ』


「了解しました」


 俺は、恐る恐る、スタータープラグに点火した。


『ブゥ〜〜ン』と低い音が鳴り出した。 この時点では計器は全て正常のようだ。


「よし、法外君……ゆっくりハンドルを引いてくれ!」


「はい!」


 ……ハンドルを両手で握り、ゆっくり引く。すると……


 な、何と! 何か爆発音がした!


 外部モニターを見ると、博士たちが焦って部屋から逃げ出す姿を捉えているじゃないか!


 えええ〜〜! ま、マジかよ~(汗) だ触っただけなのに……


 地震のような揺れと金属の軋む激しい音……次いで、何かが崩れる音がした。 俺は耳を塞いで身体を丸めた。


 振動は更に激しくなり、唐突にエアバッグが作動し、座席に押し付けられた。


 何が起きているのか、全く把握出来ない!


 やがてモニターが切れ、室内灯も消え……暗闇が訪れた……。

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