第68話「魔王」!

 ……俺の『真の能力』を知った上で、勝目かつめ 旧次郎きゅうじろう博士は、改めて俺に尋ねた。


『君は……東矩とうがね 祐希ゆうきの……何なのだ?』


「俺は……祐希さんの『騎士ナイト』です!」……と、俺は例によって、格好つけて言った。


「……ぷっ」


 あ〜! 笑ったあ〜!(泣)


「……ぷっ」

「……ぷぷっ」


 ええ〜! うしろから、勝目ブラザーズの長男『旧太郎博士』と三男『旧三郎博士』にも笑われた(泣! 泣!)


 なんだよう……この前の鵺頭ぬえがしらさん(東矩さんのお姉さん)と言い、勝目ブラザーズと言い〜! まるで俺が『100%笑わせる能力』を身に付けたみたいじゃんか!


 ……ま、まあ良い。


 旧次郎博士が……「いや、すまぬ。 ……きみが、祐希の『騎士ナイト』なら、わしは差し詰め……『魔王』だな……」……とポツンと言った。 そして……


「『祐希の為』と言えば、わしは必ず協力する……と君に吹き込んだのは、鵺頭……だな?」


 バレてる!


 俺は黙って頷いた。


「そうか……やはりな。 ……そう……あれは、儂が、ある教育機関で特別講師をしていた頃の話だ……」


 ……語りが始まった……。


 それは……長い……長い、話しだった……。 いつ、終わるとも知れない、長〜い話。 この場をお借りして書くには、余りにも長かった!


 ……よって、要約しよう!


 旧次郎博士は、その当時『抗重量波動理論』を発表したばかりで、マスコミにも大大的に取り上げられ、時代の寵児になっていた。 教育機関は、こぞって博士を講師に招き、生徒に博士の理論を説明させた。


 そんな中『抗重量波動は、装置そのものを分解してしまう』事に気が付いた、天才小学生姉妹がいた。 それが『東矩とうがね祐香ゆうか』と『東矩とうがね祐希ゆうき』だった。 姉の祐香は世渡り上手で、旧次郎博士にうまく取り入り、気に入られ、両親も、そんな姉を可愛がった。 しかし、妹の祐希ゆうきは正義感から、あくまでも博士を糾弾しようとした。


 博士は保身の為、両親に、妹に関する、ある事無い事を吹聴し、博士の口車にまんまと乗せられた両親は、祐希を無視するようになってしまったそうだ……。


 ……以前の俺なら、旧次郎博士に怒りをぶつけていたかも知れないが、今は、そんな博士を頼ってロケーター・ムーバーを借りなくては、東矩さんを救助出来ない。


「おい! 法外君! 鼻血が出てるぞ!」と旧次郎博士が、慌ててティッシュペーパーをくれた。


 旧太郎博士が「なに!? 鼻血だとお!? それはまずいぞ、青年!」


 やばっ、また長くなる!


 ……俺は、旧太郎博士に念を込め、脳と聴器以外を『固定』した。 そして「『能力』を自制すると、生命に危険が及ぶと言う『特務機関九十九つくも』の極秘資料は教えて貰っている事を伝えた上で、旧太郎博士の固定を解いた。


 旧太郎博士は、全身で夢だった『100%』を体感出来たからか、満足げに微笑んでいる。


『ほ! 法外さん! 聴こえますか!?』

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