第66話『がんばれ! ロボボン』!

 ……「法外君……こっちに来たまえ……」と、旧次郎博士が俺をうながし、早足で奥に進んで行った。


 俺は、旧太郎博士にお礼を言い、急いで旧次郎博士を追いかけた。



 旧次郎博士が、カードキーをリーダーに差し込みスライドさせた。 それと同時に、壁が複雑な動きをして開いた。 


 ……室内は真っ暗だ。


 旧次郎博士が「見給みたまえ、法外君。 これこそが『LM』……ロケーター・ムーバーだ!」……と言い、部屋の照明を点けた。


 ……そこには……


 非常に、古〜いタイプの、映画の黎明期にデザインされたような、コミカルな『空飛ぶ円盤』? っぽい? 丸っこい形をした物体が置かれていた。 しかも、想像以上に……ボロい。


 うわあ〜……マジでボロい……。 継ぎ接ぎだらけで、溶接のあとみたいなものが全体を覆い、ボロさを際立たせている。


 百歩譲って綺麗に修繕して塗装し直したとしても……元々の形状がダサ過ぎる……。 昔、死んだ父が懐かしがって観ていた『がんばれロボボン』の『ロボボン』の方が、よっぽどシュッとしているぞ!


 俺……これで東矩さんを救出に行くのかよぉ〜!?(泣)


 ……コホン……。 ここで冷静に解説しよう。


 『ロケーター・ムーバー』……それは、勝目旧次郎博士が特許を取得し、かつては『人類の希望』とまでうたわれていた『抗重量波動放射式推進装置』の登録名である。


 この装置が実用化されれば、航空機事故を過去のものとし、安全な離着陸が可能になる……筈だった……。


 ところが、何百回……いや何千回も実験を繰り返したが、装置は起動と同時に分解してしまい、推進どころか微動だにしなかった。


 発表当初から開発費や研究物資を提供してくれていた政府や大手メーカーも勝目博士を見限り『LM計画』は立ち消えになってしまった……と言う訳だ。


 ……旧次郎博士が……「兄貴が、君には『ロケート・スティッカー能力』がある……と言っていたが……まことか?」


『ロケート・スティッカー』と言うのが良く判らないが……多分、俺の本当の能力の事だろう。


「博士に信じて戴く一番良い方法は『じゃんけん』だと思います。 ……俺は『じゃんけんに100%負ける』能力があります。……俺は『チョキ』を出します。 『パー』を出して、俺に『負けて』みて下さい」


「ふむ」……と言って、博士はパーを出したまま……


 じゃん! けん! ぽん!


 俺……チョキ、博士……グー


「な! 何だこれは! 手が……手が開かぬ!」……と、博士が驚きの声を上げた


「東矩さんの報告書に、俺は『慈悲』の力が強く、相手を悲しませたく無いから『負ける手』を出している……との記載があったのですが、東矩さんが行方不明になって……更に、東矩さんに危機が迫っている事が判った時に、自覚しました」


 ……俺は、判明した俺の本当の能力を、旧次郎博士に説明した……。

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