第65話 顕在性!

 ……旧次郎きゅうじろう博士は、東矩とうがねさん……祐希ゆうきさんに、何かやましい事があるようだ。



 ……まあ、理由なんかどうでも良い。『LM』を貸して貰えるのであれば!


勝目かつめ博士、実は祐希さんに危険が迫っています! 『LM』を……『ロケーター・ムーバー』を貸して下さい!」


 旧次郎博士は真剣な眼で俺を見詰め……「お前は、わしが心血を注いだ『LロケーターMムーバー』の何たるかを知った上で『貸してくれ』などと申しておるのか?」……と言った。


 当たり前だ。『LロケーターMムーバー』の何たるかも知らずに、わざわざこんな山奥まで訪ねて来る訳が無いだろう。


「存じております!」


 旧次郎博士は「……なら、尚更だ。 ……『LロケーターMムーバー』は、机上の空論。 実現不可能な代物しろものだよ」……と、蚊の鳴くような声で言った


「それも知ってます」……俺は、はっきりした口調で言った。


「正気の沙汰では無いな。 話にならん」……と、去ろうとする旧次郎博士の前に、何と! カツメ・ブラザーズの長男、旧太郎博士が立ちはだかった。


 旧次郎博士が迷惑そうに……「兄貴、退け! わしは、あんたみたいに暇じゃないんだ」


「まあ、待て旧次郎……この青年は、法外ほうがい さぐる中佐』の曾孫ひまご……『法外 かける』じゃぞ!」


 ……旧次郎博士が振り返り「えっ! 『震災』を発生させた『恐怖のトリガー』……『Cセンター oオブ Rレゾナンス SサイドHホーガイ』の直系血族か!」……と驚嘆の声をあげた。


 ……更に、旧太郎博士が続けて、何故なぜかドヤ顔で、こう言った!


「しかも此奴こやつは『顕在性能力保有者』じゃ。 発動率は……儂等わしら『特務機関九十九つくも』が、喉から手が出る程に求めていた、究極の……『100%』!」


 ……旧次郎博士は、てのひらがえしで俺に近付き……


「法外君……き、君は全てを知っている……と言ってくれたね。 ……もしかして『LロケーターMムーバー計画』頓挫とんざの理由も……知っているのかね?」


「はい!」……俺は、胸を張って答えた。


 旧太郎博士が「儂の見立てでは、此奴こやつの真の『能力』は……『ロケート・スティッカー』! ……お主の『LロケーターMムーバー』を成功に導く……救世主」になるやも知れんて」と言って、またドヤ顔をした。


 このおっさんズ……何を言ってるんだろ?

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