第64話 許したまふことなかれ!

 おっさんは、これで打ち止めにして欲しい。


 ……ってな訳で、ここまでを整理してみた。


 最初に出て来た『無骨な科学者』っぽいおっさんは『超人』を創り出す研究をしている『勝目かつめ旧三郎きゅうざぶろう』博士。 『勝目かつめ旧次郎きゅうじろう』博士の弟だ。 ……俺の事は知らないし、今回の『東矩とうがね』さん救助計画とは、全く関係が無い人だった。


 次に出て来た白髪はくはつ白髯はくぜんの神々しい御尊老は『勝目かつめ旧太郎きゅうたろう』博士。 勝目ブラザーズの長男だ。 ……この人は『特務機関ひとまるまる』の前身である『特務機関九十九つくも』創設者の1人で、俺の叔父『法外ほうがいもとむ』と共に、人間や、それ以外の生物の『能力』の研究をしていた人だ。 直接かかわった事は無かったが、俺の事は噂で知っていたらしい。


「法外の甥っ子のお前が、何故なぜここに来たのか? この研究所に人が来る理由は、弟の『LM』か、かつてワシが研究していた『九十九』での資料目当てじゃろう。 そんな事より、何よりワシは、お前の『能力』をこの眼でてみたかったのじゃ。 ……ず『LM』を貸す……と鎌をかけ、旧三郎と『じゃんけん』をしろ…と言った。 何も言わずにじゃんけんをするようであれば、旧次郎に『LM』を借りに来た事が判る。 でもって、お前がワシに会いに来たのなら、当然『九十九』に関する用事であろう。 いずれにせよ、ワシは、この眼でお前の『能力』を視ることが出来るように策をろうしたのじゃ! 我等『特務機関九十九』の念願であった『99%以上の確率で、必ず発動する能力』をこの眼でしかと視られた! ……ワシは、もう思い残す事は無いぞよ……」


 まー、よく喋る! ……このおっさん……はなし、長すぎ! やる事まどろっこし過ぎ! 言う事オーバー過ぎ!

『3過ぎ』だあ。 ……長生きするよ。


 ……最後に登場した、物語としては面白みの無い、中肉中背のおっさん……この人こそ、俺が会いに来た『勝目かつめ旧次郎きゅうじろう』その人だ。


「……お、教えてくれ! 祐希ゆうきは……東矩とうがね祐希ゆうきは……健全に発育しておるか!?」


 ……やはり、変人だ。


「は、はい。 祐希さんは、健全です」


「……今は? 以前はどうだったのだ?」


「……はあ……以前は、ご両親の『育児放棄ネグレクト』にあったらしく……かなりおつらい人生をあゆまれた……とうかがってます……」


 旧次郎博士は、その場に崩れ落ち、膝を着いて天を仰いだ……そして……


「おお、神よ! 仏よ! 罪深き我を許したもうことなかれ……」……と唱えた。


 ……?


 どこかで聴いた言葉だな……


 ……! 


『許したもうことなかれ』って……! おーい、博士〜!……それ『我を許すな』って、神様と仏様に頼んじゃってるぞ〜!

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