第60話 初体験!

 ……鵺頭ぬえがしらさんからは『色香』のようなものは一切感じない。 むしろ、家族に抱かれているような、不思議な気分だった。


『この人を、これ以上悲しませては……いけない』 俺の心が言っている。


「鵺頭……さん」


「……はい?」


「……俺は……東矩とうがねさんを助ける為に……どうしても『AS』と『NG』が必要……です……」


「……」


 ……鵺頭さんは、無言で……そっと俺から離れた。


「……そこで……お願いがあります!」


 俺は、生まれて初めて口にする言葉を、鵺頭さんに告げた……


「俺と……じゃんけんを……して貰えませんか?」



 ……鵺頭さんは、予想外の言葉を聴いたからか、目を真ん丸く見開いて……


「じゃんけん? ですか……?」


 ……と、少し高い声で聴き返して来た。


「……はい! 俺が……勝ったら……無条件で『AS』と『NG』を……貸して下さい!」


「……もし、法外ほうがいさんが、負けたら……どうします?」


「……俺が負けたら……」


 ……俺は、次の言葉で……勝負に出た!


「……もし……俺が負けたら…………

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