第58話 俺のせい!

 ……俺の口から、全く思いも寄らない言葉が出たからか、鵺頭ぬえがしらさんの表情が硬くなった。


「……『AS』なら手配可能です。 ……しかし『NG』をお貸しする事は出来ません」


 ……鵺頭さんのこの言い方では『NG』を借りるのは、100%、文字通り『NG』だろう。


 しかし俺は、祐希さんを護るために、何としてでも『NG』を入手しなくてはならない。


「鵺頭さんが、そう仰るのは、至極当然です。 俺も本当なら『NG』なんて使いたくは無い……しかし、祐希さんを救う方法は『NG』しかありません」


 俺は、一呼吸置いてから、鵺頭さんに訊ねた。


「祐希さん……は『ダルメシアン』について、何か言ってましたか?」


「……? いえ……初耳です……」


 ……鵺頭さんの表情から読み取る限り、本当に『ダルメシアン』の事は知らないようだ。 ……なら、こちらもチャンスがある!


「祐希さんが失踪したあと、その消息を追って、新しい『機関』が活動を始めました。 俺が入手した情報では、奴らは『ヒト』では無い上に、銃器を所持しています。 ……普通に考えれば命を奪う……までする事は無いでしょうが、奴らはただの『装置マシーン』……その上、きゅうごしらえなので、どんな事故アクシデントが起きるか判りません……」


 ……鵺頭さんの表情が変化した。 鵺頭さんは、違法一歩手前の危ない橋を渡ってまで、妹である祐希さんを助けたかただ。 俺の言葉に反応しない訳が無い。


「じゃあ、祐希は2つの組織から狙われている……って事ですか?」


「正確には、ある組織が、俺を『プロジェクト』から外そうとして祐希さんを利用し、それに気付いた祐希さんが逃亡した為、情報漏洩を恐れた『機関』が祐希さんを狙っている……のです」


「じゃあ……妹……祐希に危険が迫っているのは……」


「全て、俺のせいです」俺は誠意を込めて謝罪の言葉を口にし、頭を下げた。


 ……重苦しい空気が俺達の居る病室を包んだ……。

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