第55話 静寂!

 ……何度も何度も、様々な番号を試すが、エラーばかり……。


『ビビーーッ、ビビーーッ!』


 ! や、ヤバい! 警報だ!


 時間をかけ過ぎ、何度もやり直し過ぎた……。


 さすがに鵜目さんの100%のパワーも効力が切れ、目を醒ました守衛や警備員が刺股さすまたや警棒を振り上げて俺に襲いかかった。


 その時……


 俺の身に……とんでも無い事が起きた!




 鼻や眼……更に耳……口からも、大量の血液が、『シューーッ』っと、文字通り音を立てて吹き出したのだ!


 俺の身体は、もう限界だったみたいだ。


 ……薄れゆく意識の中で、俺は東矩とうがねさんの『報告書』の一部を思い出していた……。


『……例え憎しみの感情を抱く相手でも『その相手が悲しむ姿を見たくない』という情緒が強く働くようだ』


 ……そ、そうか……もし俺が侵入に成功してしまったら、この人たちが罰せられて可哀想だから、俺は、敢えて開けない選択をしてたのか……。


『死んでも良いから東矩とうがねさんを助けたい』……と思う自分と『誰も悲しませたく無い』……と自制する自分が、それぞれホンキでぶつかり合い、過去最大級の葛藤が起きて……このザマか……。


 ごめん……俺が愛する……東矩……祐希……。



 ……警備員達が驚き、俺を遠巻きに囲んで騒ぐ声が聴こえたが……やがてそれも……聴こえなくなった……。

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