第50話 精神!

 走りながら考えた。


 ……俺は間違えていた。


 東矩とうがねさんを探そうとしていた。 ……だが、それじゃダメなんだ。 今探すべきは東矩さんの『軌跡』だ。


 俺は、東矩さんの印象が一番強い、あの『イタチ』と闘った場所に向かった。


 ここに来ると、あの時の東矩さんの、辛そうな顔を思い出し、今でもイヤな気分がする。 が、その分、印象は強い。


 ……だが、やはり、東矩さんの所在は、一切いっさい感じない。 


 ただ、これだけは何故かわかる。


『彼女は……生きている』


 ……さて、初めての試みだ。 目を閉じて、精神を集中する……。


 ……


 ……


 …………かれこれ一時間位集中したが、何も浮かばない。


 ……そう言えば、以前聴いた事がある。


 人間は、精神を護るために、嫌な記憶を忘れるような仕組みになっている……と……。


「法外さん……こんな所で、何をしていらっしゃるのですか?」


 ……! こ、この声は!


「キシシシ!」


 イ! イタチやん!

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