第38話 友情!

 浅利さんと待ち合わせて、例の店に飲みに行った。


法外ほうがいさん、聴きましたよ! 大活躍だったそうですね」


「とんでも無いです。 ……ただ『じゃんけん』をしただけですから」


「いやいや、行方が判らなかった人も発見したそうじゃ無いですか! 大手柄ですよ!」


 ……それも、ちょっと可怪おかしいんだよな……。


「俺の直感は『選ぶな』と言っていた所に、行方不明の人が居たみたいなんです……」


 浅利さんは「それなら、間違い無いんじゃありませんか? 『じゃんけん』でも『勝とう』として負けてるんですよね?」


「それが……」


 ……俺は、実は『じゃんけん』に勝ちたい……と思った事は無い。 相手が負けて悲しそうな顔をするのを見たく無いから……だ。


 ……!


 も、もしや!


「浅利さん……」

「……は、はい?」


「浅利さんの『本当の能力』……は……何ですか?」


 ……浅利さんの表情が変った! いつものとぼけた表情では無い。


 浅利さんがポケットから紙を出して、ペンを走らせ……


『あなたとは、これからも友達でいたいので、正直に打ち明けます』


 ……! 俺は、無言で頷いた。


『私は、特務機関『1〇〇』の工作員です』


 こ、工作員!?


『私は『能力者』ではありません……只のペテン師です』


 ……じゃあ、この前のカップマジックは……俺は、手でカップを動かすジェスチャーをした……。


『はい。 あれは、法外さんを安心させる為のマジックです』


「あっ! の、呑み過ぎたのかなあ!? ちょっと寝ちゃったみたいでしゅ・・


 浅利さんが再び、とぼけた声を出した。 ……恐らく『機関』の『骨導音声』対策だろう。


 ……詳しい事までは教えて貰えなかったが、たった一つ……浅利さんが、俺との友情を選んでくれた事は……とても嬉しかった。

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