第36話 連敗!

 入所者の皆さんに座って頂き、準備が完了した。

 

 施設のかたが……


「今日は特別に、皆さんに『じゃんけん』をして頂きます! 連続して、何人勝てるか……を、このお兄さん達と競って頂きますよ!」


 ……と言った。 


 続けて『K.K』さんが


張子はりこ市役所福祉課の『頓田とんだ』と申します。 本日は、急なお願いで、大変申し訳御座いません」


 ……と頭を下げた。 ……偽名だ……。


 俺と鵜目うのめさんも、同じく頭を下げる。


「では、順番に『じゃんけん』をお願いしますね」


 笑顔でじゃんけんを始める。


 ……当然、俺は負け続け、驚異の35連敗を叩き出した。皆さん、大喜びしている! 俺もその顔を見て嬉しくなり、終始笑顔だった。


 鵜目さんは本気で驚いていた。 ……いやいや、こちらにしてみれば、貴女あなたの能力のほうが凄いっすよ。


「こちらの工作は終了しました。 適当に切り上げて撤収します」……『K.K』さんの骨導音声が頭に響いた。


 ……どんな工作か判らないが、皆の目がこちらに向いているうちに何かを済ませたのだろう。 鵜目さんとも目が合って、軽く頷き合った。


『K.K』さんが「ご協力有難う御座いました。 恐らくギネス記録は間違い無いでしょう。 皆様、有難う御座いました」……と言って頭を下げたので、俺達もそれに合せた。


 受付の方に言って、自動ドアを開けて頂き、外に出た。



『K.K』さんが「法外ほうがいさんのお陰で、想像以上に時間稼ぎが出来て、後から忍び込む必要が無くなりました。 有難う御座いました」……とお礼を言ってくれた。


「とんでもありません。 もうこちらでの用は全て終わったんですか?」


「はい。 詳しい事は申せませんが、今回のお礼に、これをお見せしましょう」


 ……と言ってポケットから紙を出して見せてくれた。


 そこには


彼方あち此方こちに すずめ鈴成すずなり 花吹雪』


 ……と、筆文字で記されていた。 


 ……何? これ……。 俳句? ……にしては全く意味が解らない。


俺は「……で、この意味は!?」と尋ねると……


「さあ……」


 『ズコッ!』……と、久し振りにコケそうになった。


 俺は苦笑しながら「謎……なんですね…」


『K.K』さんは、その俳句? を見ながら……


「はい……今は謎です。 ただ、これを詠んだ方は、我々が知っている限り、最強の能力者……です」


 ……最……強!

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