第30話 不明!

法外ほうがいさん、聴こえますか?」


 ……頭の中で『遠矩とうがね』さんの例の声が響いた。 


 俺は、遠矩さんから借りた腕時計型のメーラーで『ハイ』と書いて送信した。


 この装置は、使い方によっては手首の動きだけでも言葉の送信が出来るらしいが、俺にはだ使えない為、指でディスプレイ部分に字を書いて送っている。


 今回の『出動』は、また特殊だ。


 ……俺達が選ばれた時、一緒に見付かった『能力者』が連絡を断って、行方が判らなくなってしまったらしい。


「そんな探偵や警察みたいな事、俺には出来ません!」……と言ったが、遠矩さんが


「可能性があるなら、どんな方法でも使いたい」……と言われ、協力する事にした。


 ……先入観を持たないように、情報は一切与えられてない。


 直感通りに進めるよう、乗用車では無く電車で移動するように指示された。


 ……あまりにも見当違いな方向に移動してしまった時には、その都度、連絡が来る事になっている。


 今、直感で何処どこかの駅に降りた所だ。 次は5番線に向かうつもりだった。



『ホウコウ、ズレテマスカ?』……と送信すると……


「いえ、血糖値が下がっているようなので、そろそろお食事した方が良いか……と思って連絡しました」


 ……この腕時計は、そんな事まで解るのか!


『アリガトウ ゴザイマス』……と送って、ちょうど近くにあった『駅そば』に入り、食事した。


 現時点で近くに居る感じはしないが『近付いている』……という実感がある。


 俺は、5番線に向かった。

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