第5話 出動!

 数日後の宵の口、俺の頭に『Y.T』さんの声が大音量で響いた。


「『法外ほうがい かける』さん、出動命令です。直ちにその部屋を出て、私の指示に従って下さい。」


 耳を抑えても声が直接頭に響いてはっきりと聴こえる。


「先日採取した、あなたの細胞から、『固有頭骸周波数』を割り出しました。先程は『聴力』が未計測だった為に、多少、高音量デシベルの音声信号を発信しましたが『聴力』がフィードバックされたので、現在は適正な『骨導音声』が到達している筈です。如何いかがですか?」


 ……早口なので良く解らないが、物凄い技術らしいし、お金も貰っているので素直に従う事にして……


「よ、良く聴こえます。丁度良いお声…です。」……とこたえた


 面接会場で突然されたキスの記憶がフラッシュバックして、また鼻血が滴る。


 ティッシュを詰めながら言われた通りに部屋を後にする。


 移動しながら…


「こ、この前の、あの……突然の……」


 ……と切りだそうとすると『Y.T』さんが


「先日、私がおこなった行動は、血液サンプルを採取する為の『標準作業法』で、あなたに最適であると判断した方法です。予定よりも過剰に血液サンプルが出されましたが、あなたの年代では良く起きる事らしく、始末書は免除されました。」


 ……ここで一句


『はやくちも ここまでくると げいじゅつだ』……by 法外ほうがい かける


「私にとっても初めての行動でしたので、多少の興奮があったからか、私の…鼻腔からの出血もあり、0.8%の血液混合コンタミネーションが発生してしまいました…。但し、私の分の血液サンプルは全て除外出来た…との報告を受けておりますのでご安心下さい。」


『Y.T』さんの声が、少し和らいだ…。



 …『私にとっても初めての行動』の部分だけは俺にも理解出来て、増々顔が赤くなった。

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