8 不審者
「ねぇ、鈴。変な人がこっち見てるよ」
鈴が砂場で小さい子達と遊んで居たら、遥と彼方が何やら門の方を見て騒いでいた。
二匹とも常に鈴のそばにいて鈴の事を守っているのだ。
特に最近は何やら不穏な雰囲気があるから。今回は内部ではなく外部からの不穏な空気が漂っているのだ。
時々、殺気を感じるぐらいだから相当なものだ。
ちなみに、鈴の右側に居る右目に傷のある黒い狐が彼方で額に半月の白い模様があるのが遥だ。二匹とも尻尾が黒く煙のようにふわふわとしていてそれが体の周りを覆っている。
「どこ?」
「ほら、あそこ。門のところにいるぞ」
今度は彼方が門の方を見てそう言った。
「ほんとに?私には見えないけど」
「たぶん、僕たちと同じように分からないようにしているんだと思う」
黒狐である遥と彼方と同じ力が使えるってことは人間ではないのかもしれない。二匹はその黒い煙のようなもので周りを覆うことでその気配を分からないように隠している。だから、大人にはその気配を掴むことが出来ない為、彼らがどこにいるのか見えない。でも、稀に子供には分かってしまうことがある。
「ふぅーん。そうなんだ」
鈴は特に興味なさそうに、普通に小さい子達と遊び続けていた。前にも何度か鈴の命を狙いにここに来たことがあったがその時も鈴は興味なさそうにしていた。
「最近、不穏な雰囲気だろ。大丈夫なのか?あいつら。どう考えても怪しさしかないが」
彼方はこう見えても鈴のことをとても心配しているのだ。なんだかんだ言って遥も彼方も鈴の事が大好きだから。
「でも、ここに入ってくることは出来ないでしょう。大丈夫じゃない?」
鈴は自分の身の危険に興味がないのだ。究極、どうでもいいと思っているところがあるのだ。
「でも、あれはどこから見ても不審者にしか見えないよ?」
「どんな人?」
「白い髪に上下黒のぼっろい服。あんなの不審者以外になんだって話だよ。百人いたら百人が不審者だって言う格好だな」
「それと、黒猫が居るよ。あれはたぶん神様か何かじゃないかな」
「ふぅーん。じゃあ、あなた達と似た存在って事?」
「僕達は神様なんかじゃないよ。どちらかと言うと神様の使いってところかな」
「まあ、そうだな」
「あーだから、二匹なの?よく神社の門の左右に居るよね?」
「うん。そうだね。それもあると思う」
「へぇーそうだったんだ」
鈴は少し嬉しそうにしていた。ふたりの事を知れた事が嬉しかったのかもしれない。
「それより、どうするんだ?」
「もしかしたら、味方だって可能性もあるんじゃない?だったら、このまま放っておくのは良くないと思うよ?」
遥は早くここから鈴を出してあげたいのだ。だから、もしそのチャンスが今なのだとしたらそれを絶対に逃したくないのだろう。たとえ、その可能性が低くともゼロよりはましだから。
「別に構わないわ」
遥が自分の事をここから出したいと思っているのは知っているが鈴自身はここを出たいとは特に考えていない様子だ。
「一応、話は聞いておくべきだ。そうすれば、敵か味方か一発で分かる」
彼方も気になっているようだ。
「分かった。じゃあ、一応聞いてみましょうか。黒猫ちゃんを見てみたいし。あっでも、私には見えないのよね。今度、改めて会えたらいいけど」
そして少し楽しそうにしていた。鈴は動物が大好きなのだ。特に黒猫が好きで持ち物は黒猫のものがほとんどだ。
「まあ、味方ならまた会えるだろ。だが、どっちにしろ本格的に味方だと分かって準備を整えてからじゃないと無理だからしばらくは会えないかもな」
「でも、味方だったらいつかは絶対会えるわけだからね」
「そうね。だったら、話しかけてみて損はないかもしれないわね。敵なら敵でここの人達がなんとかしてくれるでしょうし。ここの人達は私に死なれたら困るものね」
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